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[UX3-2]数字の目標から逆算して記事をつくる ゴールを意識して記事を書こう

つくる体制のメドが立ったら、いよいよコンテンツづくり。具体的にどうしていけばいいのか? より継続的で、特定の人に頼らず、誰でも、一定以上の品質でつくるための仕組みやノウハウについて考えていきましょう!

書き方を「仕組み化」する誰でも書けることが理想!

ここまでの作業で、コンテンツを通じて訴求したいターゲット(ペルソナ)、ターゲットが求める中身やキーワード、ターゲットが気にする他社の媒体や記事などが洗い出されています。加えて、コンテンツ制作のスタッフ、体制が見えてきたら、いよいよ具体的な記事づくりになります。この時点でも材料が揃い、先々のスコープ(視野、範囲)が見えていますが、さらに確度を高める工程を踏まえる必要があります。

それは、数字(目標)を念頭に置いたゴールを描き、そのゴールを意識して書くということ。つまり、やみくもに書くのではなく、ゴールから逆算しながら書くわけです。

「逆算しながら書く」ために、それぞれの工程は次の順番を意識しましょう。

(1)数字の目標を設定する(例:セッション数の5%増)
(2)競合サイトを調査する
(3)(各段落の)構成を決める
(4)執筆して、公開する
(5)一定経過後にリライトも

ここでいうゴールとは、メディアやブログ全体ではなく、記事単位でのゴールです。大きな方向性は共通していても、それぞれの記事によって役割や伝える内容は異なります。記事単位で調整することで、きめの細かい対応がしやすくなります。

記事を書く、コンテンツをつくり運営できることが、どうユーザーが求めるコンテンツづくりとつながるのか、考えてみてください。その先には成果(ゴール)が待っています(01)。

(1)~(5)の工程、そこに底流するゴールから逆算してスタートすることを、チーム全体で習慣化してください。次からは、各工程の詳細を解説していきます。

書き手のモチベーションを大切にした書き方

取り組むにあたって、書き手のモチベーションを保つことも忘れないでください。順番通りに進める前に、チームで立ち返る一つにモチベーションの維持も加えましょう。

ゴールを据えて、目的を持って進めるのが記事であって、そこは制限なく書きたいことを自由に書く場所ではありません。ある程度、狙いに沿ったキーワードを出したり、戦略的にエントリーしたい記事も出てきます。ですが、あまりに目的や戦略ありきに偏った書き方では、書き手とユーザー双方のモチベーションを著しく下げかねません。例えば、 SEOの観点を考えて、効果を高めるためにキーワードを散りばめても、SEOに特化したフォーマットを読まされているような記事ができあがりかねません。そうした記事を、みなさんが想定するペルソナが面白がって読むでしょうか?

同時に、書き手側も「やらされている」記事づくりになりかねません。これでは成果は期待できず、本末転倒です。

では、モチベーションを意識しながら、維持するにはどうすべきでしょうか? チームでブレストを行い、明確になったターゲット(ペルソナ)が調べそうなワードを、洗い出してみてください。もしくはターゲットが興味を持ちそうなテーマを出していく形でもいいでしょう。ブレストを通じて出てきたワードやテーマを一度俎上に載せてみてください。

次に書き手側が、どのワードやテーマなら書けそうかを吟味して、書けそうなワードについて優先的に執筆するようにしましょう。特に最初のうちは、書き手が出てこない、イメージの湧かないワード(テーマ)で進めるのは禁止、としてもいいでしょう。

書き手の取り組みやすさは、仕組みの運用においては最低限守りたいルールです。そのルールが共有されれば、書き手のノリが加わった記事が生まれやすくなり、どこにでもあるような記事が生まれづらくもなります。

記事の目標の立て方は? 必ず数値を設けること!

最初は手がかりがないかもしれませんが、必ず数字を絡めて目標を掲げてください。数字を掲げておくと、雰囲気や感覚で評価することにブレーキをかけられます。

例えば、意識したいキーワードで検索上位3位以内といった内容でもOKです。Goodpatchの初期は、オーガニックのセッション数が5%成長という目標にしていました。セッションとは、同一ユーザーが同じサイト内で複数ページにまたがって閲覧しても、カウントが複数にならず1のままとなる単位のこと。記事が複数ページで構成される場合、3ページの記事に1人が訪問して、一定時間内に遷移すれば、3PVで1セッションとなり、より訪問者数が具体化しやすい数え方です。最終的にはチーム全体でピンときやすい目標を掲げましょう。

「検索上位」を目標にした場合、公開当初は検索エンジンに引っかからない時期が続きます。2週間程度は猶予を見た上で検索し、どれくらいの順位となるかを確認。出てきた順位次第で、公開した内容に立ち返って、この順位となった理由を探りましょう(02)。

運用を続けていくと、実績の平均が見えてくるので、徐々に実績に即して現実的、実践的な目標の立て方に変えていけばいいでしょう。セッション数の成長率が5%だとハードルが低いなら、10%に上げたり、コンテンツを通じてのコンバージョンに見るべき変化があれば、コンバージョンに着目するのもいいでしょう。ただ実際は、購入などのコンバージョンが最初から機能するほど甘くないのが現実なので、肩の力が入りすぎない指標を用いてください。

適切に目標を立てられると、公開後の分析に筋道、基準ができます。漠然とした分析の防止にもなり、目的の明確化が進みます。

競合サイトを調査し、ライバルの考えに学ぼう

チーム内で話し合い、ブレストで浮上したキーワードは、実際に検索してみましょう。検索上位には、自社にとって直接的な競合会社のブログ、コンテンツが並ぶ可能性が高いからです。そうした記事やコンテンツは積極的に見て読むようにして、なぜ上位にランクインするのかを検証しましょう。上位表示されるには、必ず理由があるからです。

今後は、こうしたライバルと肩を並べ、ライバルよりも支持率が高い記事を公開するためにも、結果を出しているライバルの研究は欠かせません。見出しのつけ方、ボリューム、テーマの取り上げ方、更新頻度など、さまざまな角度から検証し、参考にできるところ、取り入れられるところは何かを見極めましょう。

気をつけたいのが、ライバルの記事を参考にするあまり、自分たちの強みが活かされない記事構成になること。学びとして参考にすることと、記事公開時に似てしまうこととは違います。似てしまう段階では、それだけ自分たちが伝えたい核が定まっていません。表向きの表現や展開、流れが似てしまう、真似になる場合は、理解を深めて、伝えたい核を定めて書くようにしましょう。

慣れないうちは、仕上がりが「どこかで見たことがある記事」だと、かえって安心してしまう人がいるかもしれません。すでに世の中にそうした記事が流通しているから、このあたりのことが出せればという安心感につながるからですが、公開する段階でつくり手目線、書き手の都合ばかりに陥っていないかどうかを立ち返るようにしましょう。第2章で触れたバリュープロポジションマップを思い出してください。自分たちが設定したペルソナは、こうしたコンテンツを求めていたでしょうか? そうした問いや気づきによって、表面的で核のない表現を回避してくれるでしょう(03)。

「流れ」や「オチ」は書く前に決めておく

競合サイトの調査を通じて、他社が展開するコンテンツなども検証できた段階で、次に記事の構成を組み立てます。あらかじめ構成を組んでから書き進められると、なかなか思うように書き進めづらくなった場合にも、その原因を探りやすくなります。起承転結は一つの構成の形ですが、テーマの種類にあわせて、書く形をつくっておくことで、次回以降にも(別の機会に別の著者が)活かせるようにしておけるとベターです。

構成を考える際は、各記事の数字の目標を意識しつつ、下記を考慮します。

(1)当初、考えていたことは?
(2)競合調査で見えてきたことは?
(3)(1)と(2)を合わせた最善の形は?

(1)~(3)を通じて、最終的に「伝えたいこと」も定まってきます。特に を通じて、独自の切り口で内容を組み込めると、当初の考えに対し、理解を深めながら改めた要素や、誤解が解けていった過程が記事に反映できるので、よりオリジナル感の漂う記事になります。

こうした構成づくりを通じて、記事全体の展開(流れ)や結論(オチ)がはっきりとしてくるはずです。あとは、組もうとしている流れやオチをユーザーが読んだとき、納得して受け止めてくれるかを判断します。執筆時点で書き手自身が行っているのを、チェックする立場の人も確認して、狙い通りか、独りよがりで狙いに反していないかを検証しましょう。

 段取りがうまくいっても行き詰まることはありえます。行き詰まりの打破には、社内で知見のある人にヒアリングをし、助言を仰ぐといいでしょう。自分の引き出しにはない視点やボキャブラリーを持っている人との意見交換を通じて、新たな気づきや所感を構成に活かせれば、記事に厚みが加わります(04)。

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掲載号

Web Designing 2018年6月号

Web Designing 2018年6月号

2018年4月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

Webビジネスの成功は【UX視点のコンテンツ】にある!

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UXでキラーコンテンツを生む方法

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近年、盛んに「UX」の重要性が叫ばれていますが、それはサイトのデザインだけの話ではありません。
Webに掲載し、ユーザーに読んでもらう・見てもらう「コンテンツ」こそ、Webビジネスの成否を握っていると言えます。

例えば自社の商品を「もっとも必要としている人」に、商品の魅力を十二分に理解してもらい、前向きな反応をしてもらうには、
サイトに載っている情報(キャッチコピーや説明文、ビジュアル、映像など)が刺さらなければ意味がありません。

その確度を上げるために有効なのが、「UX」視点です。
Web Designing 6月号では、より実践的に、UXの考え方を実際のWebビジネスに落とし込むための方法を網羅しました。
誌面を読んで、実際に手を動かしてみてください。

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「質問に答える」「付箋を貼る」「定型書式に書く」だけで、
自社に必要な「ユーザー視点のコンテンツ」が見えてくる!

◆答えるだけ!自社サイトに足りない“愛”診断
質問に答えて、どれだけターゲットになる読者のことを把握しているか、ユーザー目線で見られているか、現状を把握しましょう。


◆貼るだけ!付箋ではっきりさせる課題と方針
自社サイトをユーザーにとって何の役に立つものにしたいか、どんな情報を公開べきかが見えてきます!


●書くだけ!自動化できるテキストコンテンツ制作用フォーマット
定型の書式に書いていくだけで、文章が苦手な人でも効果が期待出来る文章が出来上がります!

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◆ユーザー調査・設定
コンテンツの成功は「ペルソナ」にある!伝えたい「読者像」を浮き彫りにする調査・考察方法

◆コンテンツ戦略設計とKGI/KPI設定
浮き彫りにした対象読者に、[何を][どのように]提供し、[どう感じてもらうか][どういった行動を取ってもらいたいか]の戦略の立て方

◆コンテンツ制作
届けたい相手の「行動変容」を促すユーザー目線(UX視点)の具体的テキスト・コピー・ビジュアルその他の作り方・限られたリソースを有効利用した制作体制の作り方


●これからはSEOに加えて、「SXO」が重要!
いかに検索で行き着いたユーザーの意図を捉えたコンテンツを作成し、検索体験を満足いくものにできるかどうかが今後のWebビジネスには必須になります。そのためには、UX視点での分析・施策が欠かせません。

■コンテンツの見せ方
せっかくのコンテンツ、一生懸命会心の作を作っても、見てもらわなければ意味がありません。コンテンツの「見せ方」も、ユーザー目線を持って考えなければ、「見えてるのに認識されない」「結局記憶に残らない」ということが往々にして起こり得るのです。では、発信するコンテンツを効率的に効果的に見せるにはどんなことを考えればいいのでしょうか。


<こんな方にオススメです>
■中小企業のWeb担当者
 ・自社メディアにかける予算なし
 ・本業の片手間でやらざるをえない
 ・プロジェクトチームを組める余裕はない

■引き継いだ、やる気だけはある未経験の担当者
 ・何書いていいかわからない

■自社メディアを始めてはいるが、停滞期に入っている
 ・PVが下がりもしないけど伸びもせず、サイトが役割を果たしているかわからない

■UXをまずは何から始めていいのかわからない
■UXってデザインだけじゃないの?
■そもそもUXってなにがよくなるの?
■部署を横断して取り組むべきなのはなんとなくわかっているが、説得する自信がない
■理論だけではなく、現場で実践していることが知りたい