2017.03.29
業界別NPSベンチマークを正しく読み解くには えっ、自社のスコアが低すぎる!?
「NPS(Net Promoter Score):推奨者の正味比率」は、単独ではその数値の意味を理解しにくい。NPSを比較するのに役立つベンチマーク調査もあるが、その示す意味を知るにはいくつかのポイントがあるのでチェックしていこう。
NPSがマイナスになる日本特有のユーザー心理
顧客エンゲージメントを測定する指標として用いられることが増えてきたNPS。導入して調査を開始したところ、顧客から「マイナス評価」を受けて驚くこともあるだろう。だが、これは必ずしもあなたの会社や製品・サービスに対する顧客ロイヤルティが特段に悪いことを示すものではない。
NPSの算出方法は「友人や同僚に薦めたいか?」という質問に対する「推奨者」の割合から「批判者」の割合を差し引くというシンプルなもの。これを評価する際に0点から10点の11段階で点数を付けるが、ニュートラルな「どちらでもない」という回答に対して、5~6点をイメージする方も多いだろう。
だが、NPSを提唱した米国のコンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの定義では、文化的な背景の違いもあり7~8点が「中立者」となる。この中立者の割合はNPSの算定には用いられないが、5~6点は「あまり人には薦めたくない」ネガティブな批判者としてカウントされるため、日本でのNPS調査の結果がマイナス評価となりやすい傾向にある。

自動車保険業界(9社)平均のNPS推奨度分布を見ると、0から10の11段階で5点が最大値になるという、日本でのNPS調査に典型的な結果となっている。NPSでは「中立者」は7点と8点だが、「どちらでもない」という視点で5点を付けると「批判者」としてカウントされるので、マイナス評価となりやすいのだ
出典:2016年11月29日発表のNPSベンチマーク調査結果(自動車保険業界)より一部抜粋
では、NPSは役に立たない指標なのだろうか? という疑問が生じるかもしれないが決してそんなことはない。全世界で共通の標準化された指標を用いることで、自社と競合他社、あるいは業界ごとの比較、さらには国内とグローバルとの比較さえも可能になるからだ。
もちろんNPSは基本的に自社の顧客ロイヤルティを測定する指標なので、競合他社や業界のスコアを知るには第三者の調査が必要だ。その際に参考になるのが、2015年3月にNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション(株)によって実施された「NPS業界ベンチマーク調査」だろう。本調査では金融・通信・情報機器・EC・旅行業など21業界、140ブランドに対して実施されたNPS調査で、ここまでの質・量とも大規模な一斉調査はその後(原稿執筆時点)実施されていないが、個別の業界ごとのベンチマーク結果は不定期に実施されているのでマーケティング担当者は参考にしてほしい。

業界ベンチマークでは、従来からある「銀行」よりも利便性の高い「ネット銀行」のほうがインターネット利用者からの期待値が高いため、NPSも高めになる傾向にある。だが、これは全体的なブランドイメージの評価なので、個々のサービスの満足度とは直接は関係ない。また、利用者の「関与度」が低い商材ほどNPSが低くまとまる傾向も見られる
出典:2015年3月31日発表のNPS業界ベンチマーク調査より一部抜粋