2017.02.22
「売り上げ向上」に直接つながる「エンゲージメント」の秘密 企業を長期的に安定成長させていくために欠かせない考え方
企業と顧客との関係性を表す言葉「エンゲージメント」。企業を長期的に安定成長させていくために欠かせない考え方としていま注目を集めている。トータル・エンゲージメント・グループの池田順一さんにそのポイントを解説してもらう。
Photo:カトウキョーコ
1. 「エンゲージメント」はこう理解せよ
デジタルマーケティングの世界では、日々、新しいマーケティング手法、ツールが登場しています。それと同時に、その効果を計測するための指標もまた、さまざまなものが現れては話題をさらっていきます。しかし、そのスピードがあまりにも速すぎて、何から学べばいいのか、何を信じればいいのかわからないと感じている方もいらっしゃるのではないかと思います。
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ヴァージンメディア社が2014年に公表したデータより。エンゲージメントの向上が株価の向上につながっている
出典:2014 CX conference in Miami
そんななか、「エンゲージメント」は、それらさまざまなマーケティング手法の、基礎の部分にあたる考え方だと言えるかと思います。お客様とどういう関係性をつくればいいのか、そのためには何をすればいいのか。エンゲージメントを学ぶことでそのポイントが見えてくると思います。
そもそも「エンゲージメント」とはどういう意味の言葉なのでしょう。私はそれを「愛着」とか「共感」といった言葉で訳するのがいいと思っています。気持ちでつながる、そんなニュアンスを含んだ言葉なんですね。同じつながりでも、「コントラクト(契約)」のように、約束事を交わしてお互いを縛るような仕組みとは根本的に違いますし、マーケティングの世界でよく使われる「ロイヤルティ(忠誠)」という言葉が持つ上下関係を匂わせるようなニュアンスもありません。そう、エンゲージメントはあくまでも対等な横の関係なんです。だからこそ、どちらかの心が離れたらその関係は壊れてしまう。エンゲージメントは極めてマインド的なつながり、だと理解していいと思います。
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企業と顧客との間にエンゲージメントが確立すると、両者の関係は対等なものとなリ、顧客は企業の側に立ったかのような行動をとるようになる
その一方で、「ポイント」や「割引」「おまけ」のような、損得で結びつく関係性はエンゲージメントとは呼びません。それがなくなったら、壊れてしまう可能性があるからです。
このエンゲージメントは、実は、企業の売り上げに直結するのですが、この点は少し噛み砕いて説明しましょう。繁盛している小さな飲み屋さんに必ずいる「常連さん」を思い浮かべてください。常連さんは、なぜ、その店にいつもいるのでしょうか? 小鉢をサービスしてくれるから? 割引してくれるから? そういう理由もないとは言えないでしょうが、それよりも、その店が、その店の主人が、その店で飲むのが好きだからいるんですよね。まさに愛着や共感をベースとしたマインド的なつながりがそこにはあります。
常連さんは、「予約をキャンセルされて魚が余ってしまった。助けて!」といったメールが来たら、予定を変えてでも喜んで店に行くでしょう。「今日は忙しい」と店長が言えば、机を拭いたり洗い物をしたり、店の手伝いをすることもある。エンゲージメントが構築されると、顧客は店側の立場に立った行動をとるようになるんです。
企業と顧客の間でも、同じようなことが起きます。エンゲージメントが確立すると、顧客は企業の側に立って商品を買い、サービスを利用し、それを人にすすめるようになる。ともに成長しよう、そんな立場に立つようになるんです。エンゲージメントが、企業の売り上げを押し上げるというのはこういった理由からなんです。
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「エンゲージメント」というと、Facebookの指標である「エンゲージメント率」をイメージする人も多いと思いますが、ここでは本来の意味を紹介していきます。混同しないように!
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エンゲージメントは顧客との間だけではなく、従業員との間でも確立することが大事。上のグラフはそれを表しています。この点についてはこの後、3章で解説します。
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