2017.03.23
データのミカタ Web Designing 2017年4月号
SNSがもたらす複雑な感情 データアナリスト萩原雅之氏による統計コラム
ソーシャルメディアが引き起こす感情の問題は、ビジネス活用と同じくらい重要で興味深いものである。セキュリティ対策企業のカスペルスキー社が2017年1月に発表した、日本を含む18カ国を対象としたアンケート調査結果は、SNSがもたらすネガティブな感情が身近なものであることを実感させてくれる。
日本でも世界でも、ソーシャルメディアを利用していて「嫌な気持ちになったことがある」という人は約4割を占める。その理由として、世界全体では「迷惑広告」(72%)、「友だち削除」(61%)、「否定的コメント」(59%)など自分に対して行われたことを挙げる人が多いが、日本では「他人の人生(結婚、子ども、旅行、休暇)」(54%)や「友だちの楽しそうな休暇」(43%)など内側の嫉妬感情が上位に並ぶ。隣の芝生が青いのはSNSに限らないものの、毎日SNSを見ていればそういう感情を抱く頻度が増えるのは当然だ。
また全対象者への質問では、「いいね!」が確実に得られるなら「普段は口にしないような意見を強く主張」したり(世界21%、日本6%)、「行っていない場所に行ったふり」をする(世界12%、日本6%)人は少なくない。友人の「恥ずかしい情報」や「秘密の情報」を公開するとの回答もみられた。そうした承認欲求に基づく軽率な行動は、他人や自分に問題となって跳ね返ることは容易に想像がつく。
セキュリティ会社がこのような調査を公表するのは、それが企業や個人にとっての「リスク」につながるからだ。ウイルスと同じくらい人間行動はトラブルのもととなる。幸いにも日本では、こうしたリスク行動は世界平均よりも低い水準にとどまっていた。SNSに現れる問題は、他人の迷惑行為との戦いだけではなく、自分の内面的感情との付き合い方次第であることは意識しておこう。
- Text:萩原雅之
- トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/