2016.03.27
月刊 店舗設計 Web Designing 2016年4月号
細かな改善を積み重ね、売上を半年で150%向上させた「ブランドショップAXES」 注目を集めるネットショップの集客術を知りたい
海外から並行輸入したブランド品を販売する「ブランドショップAXES」は、主要なショッピングモールなどに11店舗を展開している。その中の一つであるDeNA店の店長が、就任半年で売上を150%に伸ばしたという。どのような施策を行ったのか、話をうかがった。
Photo: 五味茂雄(STORO!ROBO)
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創業:2012年
スタッフ数:約20人
取扱商品:ブランド品
商品点数:約1万5,000点
SNS:Facebook Twitter Instagram LINE
超多店舗展開のショップ運営とDeNA店の特徴
ブランドショップAXESは海外ブランド品の専門店で、バッグや財布、アクセサリー、時計などを扱う。並行輸入することで、国内の正規店よりも安価で販売したり、国内では販売されていない商品を扱ったりしていて、若い女性を中心に人気を獲得している。現在の社名になったのは2012年だが、前身となる会社から数えると11年前からネットショップ運営をしてきた。自社ドメインのショップのほか、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon、ポンパレモールなど全11店もの多店舗展開をしている。
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自社のサイトでもネットショップを展開。商品写真は倉庫の担当者が一括して撮影したもので、バッグはトルソーにかけたり、A4サイズが入ることを明記するなど、ネットショップでは掴みづらいサイズ感を伝える工夫がなされている
今回は、急速に業績を伸ばしたという、DeNAショッピングの店長を務める寺山紀子さんに話をうかがうことにした。そもそも、なぜこれほどまで多くのネットショップを運営しているのだろうか。
「単純にチャネルが増えれば、その分だけ売上を増やすことができるからです。多店舗出店していることで、認知の拡大にも繋がっていると思います。また、お客様の年齢層や抱かれているイメージがモールによって違ってきます。特に若い方は、このモールの方がカッコイイから買うというような判断をされることがあります。そういった層の取り込みについては、オウンドメディアの『A-box』など、新しいチャネルで展開を進めています」
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パリ在住の日本人カメラマンや同社バイヤーが執筆するオウンドメディアサイト。ヨーロッパのカルチャーやショップ情報などを発信している。ファッションアイテムを扱うショップゆえ、利用者に楽しめる情報を提供し認知拡大するだけでなく、「おしゃれ感」を感じてもらう役割もある
店舗数が多いと更新・運用の手間もかかってくるが、商品登録や写真撮影は倉庫で一括して行い、効率化している。
「商品写真は倉庫の担当者が撮影して商品登録までを行い、すべての店舗で共有できるようシステム化しています。私も以前はこの商品登録を担当していました。ページのデザインも本部の担当者がテンプレートを作り、すべてのショップでデザインの統一をはかるようにしています。DeNAショッピングではページ作成にHTMLが使えないため、以前はデフォルトのフォーマットに画像や文字を入れているだけでしたが、今はDeNA plusという機能を使ってページを作り込み、他のモールと同じ印象になるような見せ方ができています」
DeNAショッピングに出店したのは2013年から。同店特有の顧客層の特徴というのはあるのだろうか。
「お客様は20代から30代の女性が中心で、COACHやMichael Kors、MARC BY MARC JACOBSといった、ヨーロッパのブランドよりも手頃な価格のアメリカ発のブランドが売れているのは、どの店舗も共通です。ただDeNA店では、こうしたアメリカブランドの占める比率が特に高いのが特徴です」
寺山さんが同店の店長に就任したのは昨年9月のこと。そこからわずか半年で売上を150%にまで伸ばしていった。
細かなページ改善を積み重ねる
寺山さんは売上を伸ばすために、どのような施策を行ってきたのだろうか。
「店長になってまず、ページ改善をする余地がたくさんあるなと思いました。特にDeNA店では購入者の9割がスマホからのアクセスなので、そうした特性も考慮するようにしました。たとえば、昔はネットショップでは、購入ボタンまでの間にセールなどのバナーをたくさん見せるという方法が主流でしたが、スマホはPCに比べて操作がしづらいので、シンプルにしてユーザビリティを上げることが大事ではないかと考えました。PCだと同じ商品を扱っている他のサイトと価格比較をされることも多いのですが、スマホでその作業をするのは手間なので、価格での優位性よりも、いかに使いやすいか、商品がすぐ届くか、安心して買えるかといった利便性に重きを置かれる傾向があります」
そうした考察を重ねて、ページをリニューアルしていった。
「以前はセールなどのバナーが一番上にどんと置いてあり、スマホから見たときのファーストビューではそれしか表示されませんでした。また、あまりセールを訴求しすぎると、ブランド品を扱うショップらしくない安っぽい印象になりかねません。オシャレ感を出しクオリティを上げるために、一番上には特集ページなどへ誘導するバナーを置いて、スライドショーで切り替わるようにしました。そしてその下に、新作や特集、セールページなどのメニューを並べることで、サイト内の回遊を促しています。商品ページも、以前は商品情報が購入ボタンより下にあり、ずっとスクロールしないと読めなかったのですが、もっと手前に入れるようにしました。あとはスマホでも見やすいよう文字サイズを小さくしすぎないようにしたり、毎日新入荷のアイテムを更新するようにしたりしています。細かな部分ばかりですし、まだ完全ではありませんが、『ここを直した方がいいかな』という部分を見つけては改善をするようにしています」
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広告枠の獲得と表示内容の検証で流入を増加
寺山さんがページ改善と並び、もう一つ力を入れているのが、バナー広告への出稿だ。
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「ショップへの流入は、DeNAショッピング内で表示される広告からというお客様が多く、ほかにも外部の導線から遷移してくださる方もいます。以前からのブランドカテゴリーでのバナー出稿に加えて、いまはレディースファッションのカテゴリーなど他の出稿枠も利用しています。最初の2カ月くらいはまったく効果が出なかったのですが、どんなバナーにすると良いかということを繰り返し検証してきたら、ようやく手応えが出てきました。もともとバナーのビジュアルにはバッグや財布などの商品だけを載せていたのですが、レディースファッションのショップを参考にモデルを使った写真を採用したところ、効果が出てきたんです。ときにはセールが急遽決まることもあるのですが、広告は事前に入稿するものなので、基本的に急には出せません。それでも、すぐに出せる枠はないかなど、モールのコンサルタントの方とは毎日のようにやりとりして、いろいろ協力していただいています」
こうした施策を重ね、実際に売上が伸びはじめたのは昨年12月からだった。
「12月はクリスマスなどもあって、例年売上が多い時期ではあるのですが、この頃からコンバージョンも高くなりました。ラッピングサービスを訴求するメニューをページの横に表示していたので、プレゼント需要とマッチして売上に繋がったのもあるかもしれません」
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「例年はその後売上は落ちつく傾向だったのですが、今年の1月2月もそのまま売上をキープしていて、前年比で150%にもなりました。やってきたことが、結果につながってよかったです。今後も改善を繰り返しながら、リピーターを増やしつつ、今以上に売上をあげていけたらと思っています」
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