2016.02.09
サイト改善基礎講座 Web Designing 2016年2月号
最短で効果の出やすい改善ポイントとは? 効果的なデジタルコミュニケーションを知るための分析と対策
現状の集客と回遊状況を土台に、最短でWebサイト改善の成果を出したいのであれば、「新規会員登録」や「カートへ入れる」といった意思決定を示すボタン「CTAボタン」の改善を真っ先に検討するのが効果的だ。その検討ポイント、そしてGoogleアナリティクスのWebテストを用いての効果検証手順を紹介していこう。
Illustration:goo
CTAボタンとは?
Webサイトを訪れたユーザーが「新規会員登録をする」「カートに入れる」といったボタンをクリックする行為は、「ユーザーが態度変容を起こした」と捉えることができる。Webサイトへ訪問しコンテンツを閲覧するうちに興味が高まり、ビジネス成果へとつながる行動をとろうとした意思表示であり、集客やコンテンツを通じた商品やサービスのアピールがうまくいった結果だと言える。
こうした意思決定を示すボタンは「CTA(Call to Action)ボタン」と呼ばれている。CTAボタンをクリックするかしないかは、ユーザーが判断を下す分岐ポイントとなる。そしてこの、CTAボタンを変更するだけで、サイトのコンバージョン率は格段に変わると言われているのだ。
効果的なCTAボタンにするための3つのポイント
CTAボタンを検討する際には、「役割」「文言」「デザイン」の3点が重要なポイントとなる。
役割とは、ボタンの機能を何にするのかということだ。「メルマガ申し込み」「資料請求」「セミナー参加」「見積り依頼」「購入/申し込み」など、CTAボタンと呼ばれるものにもさまざまなタイプがある。こうしたボタンをクリックすることの心理的なハードルの高さは、ビジネス成果と相反する。たとえば、「メルマガ申し込み」は心理的ハードルが低くクリックされやすいが、ビジネス成果は少ない。
不動産や金融のように、購入決定までの検討期間が比較的長い商材の場合は、心理的なハードルの低い「メルマガ申し込み」「資料請求」といった役割のCTAボタンが相応しい。しかし、日用品や食品のように検討期間が短い商材は、直接的にビジネス成果となる「購入/申し込み」などのCTAボタンの方が適切だろう。このように、ユーザーの購入決定に至るまでの気持ちの変化に寄り添いつつ、ビジネス成果を得るまでのプロセスを検討して、適した役割を持たせるようにしよう。
CTAボタンに表記する文言は、単にボタンの役割を明記するだけではなく、内容を具体的にしたり、訴求を絡ませたりすることで、ユーザーのクリックを誘発しやすくする効果がある。たとえば、「資料ダウンロードはこちら」と「コンバージョン率を10倍にした説明資料ダウンロードはこちら」を比較すれば、後者の方がクリックが多くなると感じられるだろう。
デザインについては、ページ内で背景と同化しないよう目立たせ、視認しやすくクリックしやすい大きさのボタンにすること。そして、PCでは定番の表現ではあるがオンマウス時のインタラクションで好意的な印象を持たせ、ユーザーの視線に入りやすい動線に設置することが重要だ。ユーザーがせっかく商品やサービスへの関心を抱いても、検索エンジンや他サイトへ遷移してしまっては、ビジネス成果へと結びつかない。ページ内でCTAボタンを目にとめ意識させることで、ユーザーの気持ちを揺さぶり判断を迫る。
コンバージョン率の高いCTAボタンを見極める
前述の検討ポイントを踏まえ、役割、文言、デザインのバリエーションをいくつか用意したCTAボタンを実際に試し、コンバージョンに効果のあるものを明らかにしていくことがサイト改善への近道だ。このテストには、Googleアナリティクス(以下GA)の分析メニューにある「ウェブテスト」の利用をオススメしたい。これを使うことで、調査対象となるオリジナルのページと比較対象のページを一定の割合で切り替え表示してくれ、どのページがより成果を出せるか比較することができる。A/Bテストができるサービスと似ているが、複数のパターン(最大10種)のWebページを比較することができる点が便利だ。ウェブテスト実施の流れは次のようになる。
1 テストページを用意する
オリジナルと同じドメインで異なるURLのページを作成する
2 テストページを正規化する
検索エンジンにインデックスされないよう重複コンテンツ対策を行う
3 GAでテストを設定する
用いる指標、トラフィック配分、しきい値などを画面に従い設定する
4 GAでテストコードを取得して設置する
オリジナルページのhead開始タグ直後にテストコードを追加する
5 GAでテストを開始する
GA画面上でテストコードの設置ができていることを確認し、「テストを開始」ボタンをクリックする
2について補足すると、重複するコンテンツページを配信することによってSEOランキングが下がらないよう、対策を行うことが望ましい。テストページでリンク属性 「rel="canonical"」を設定することで、テストページのコンテンツがオリジナルのページと本質的に同じであることを検索エンジンに示すことになり、SEOランキングへの影響を抑えられる。
ウェブテストの結果を反映する
ウェブテストで、もっとも成果の高いCTAボタンが明らかになったら、それをオリジナルのWebページとして設定し、テストページはサーバから削除しておこう。ユーザーがテストページをブックマークしている可能性があるため、サーバサイドでオリジナルページへのリダイレクトを設定しておけば、テストによる影響を抑えることができる。
集客や回遊の改善は手間がかかるものだが、こうしたCTAボタンのちょっとした工夫は、コンバージョン率の改善に大きく貢献する可能性がある。テスト自体も、プロセスや結果が明確なので、PDCAサイクルを回しやすい。Webサイト改善とプロセス管理をこれから行っていきたいと考えている方々に、まず取り組んでほしいオススメのアプローチだ。