ジュリア・カガンスキー(NEW INC)|美人マッドサイエンティストによるやばい実験計画|WD ONLINE

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清水幹太のQuestion the World Web Designing 2016年1月号

ジュリア・カガンスキー(NEW INC)|美人マッドサイエンティストによるやばい実験計画 インキュベーションスペース「NEW INC」が次々と新しいクリエイティブやビジネスを生み出しつづけられる理由を聞きに行く。

今回話をしたのは、フ?ロク?ラマーて?もテ?サ?イナーて?もない、しかしニューヨークて?いま最も注目すへ?き「クリエイター」の一人、ジュリア・カガンスキー(Julia Kaganskiy)た?。次々と新しいクリエイティフ?・新しいヒ?シ?ネスか?生み出されるシェアスヘ?ース「NEW INC」は、開設1年あまりにもかかわらす?、すて?にニューヨークにおいて無二の存在となっている。そのNEW INCをリート?する存在て?あり、スーハ?ー管理人て?ある彼女の頭の中を覗くへ?く、NEW INCに向かった。

ニューヨークは、街全体が実験室のようなところがある。なにか新しいことをやろうとする人に対してとても寛容だし、それが良いものであればすぐに支持が集まって盛り上がってくれたりする。

「NEW INC」は、そんなニューヨークの中にあって、いま最も熱い「実験室」の一つだ。インキュベーションスペース、つまり新事業を始めるチームが入居して、ビジネス上の支援を受けることができるシェアオフィスのようなものだ。最大の特徴は、ニューヨークでも名高い現代美術専門の美術館であるNEW MUSEUMが運営しているという点だ。これがすでに「他にはない実験」であるとも言える。

 

NEW INCには、プログラマーやデザイナーからアーティスト、建築家、ファッションの世界に至るまで、さまざまな領域で新しいことをやろうとしているチームが集まっている。筆者のチームであるPARTY NYも、その一員としてお世話になってきた。

「なにか才能を持っているというだけではなくて、もともとあった境界を超えて新しいことを新しい方法でやろうとしている人だけを集めている」

NEW INCの代表であるJulia Kaganskiyはそう言う。さすが、実験室の長だ。

彼女はこの場から生まれたものを積極的にPRしたり、年に数回「Demo Day」という形で新作の発表会を行い、プレスや投資家を集めたりもしている。こういった活動の一つひとつが新しい実験であり、新しいものづくりの形の提案となっているのだ。

Juliaはもともと編集者であり、ライターだ。さまざまなデジタルクリエイティブをフィーチャーしてきたIntelによるWebメディア「The Creators Project」の編集長を経て、昨年からNEW INCの代表を務めている。

編集者がコミュニティの中心になるというのは、結構自然なことだ。編集者の仕事は、あるものを適切な形で世の中に紹介することであり、誰かが活躍する場を創出することでもある。

コミュニティをつくるということは、人と人をつないでいくということだ。NEW INCでもそれが行われている。いろんな職能の人同士が同じ空間で隣の席に座ることで、コラボレーションのきっかけを生み、今までにない新しいアイデアやビジネスが生まれていく。じゃあJuliaは「人つなぎ」が好きでこの仕事をやっているのか?

「まあそうね。誰が何をつくっていて何を研究しているか、それを知ってつなげていくことで、リアルタイムに文化ができていく。そういう化学反応のプロセスを見ているのが好きね」

難しいことを言っているようだが、彼女が言っていることは、だいたい「シムシティ」と同じだ。地球上空から「この人とこの人をくっつけたら面白いんじゃないか」なんて思ってつなげてみて、様子を見る。それで面白い反応があったのを見てニヤッとするJuliaの顔が思い浮かぶ。

「人と人をつないで何が起こるかを見ることで、環境や構造を理解したいのよね」

 

彼女はあまり目的の話をしない。彼女のモチベーションは研究者というか、もはやマッドサイエンティストのようなところがある。目をキラキラさせながら、そういった「化学反応」について楽しそうに語る。

NEW INCの面白いところは、いろんな業界のつくり手であるメンバーを集めて、プレゼンテーションのワークショップや法律・知的財産のワークショップなども積極的に行っていることだ。Juliaはまた科学者っぽいことを言う。

「新しい物やビジネスをつくることは、何かを変えること。プレゼンテーションも法律も何かを変えるために必要な道具だから、それができる人たちに与えたらどうなるかを見てみたいのよ」

世の中には、結果を出すことを大切にする人と、日々やっている経過を大事にする人がいる。Juliaは明らかに後者だ。科学者として化学実験が好きで好きでしょうがない。「好きこそものの上手なれ」。こういうレベルのモチベーションに支えられている最高の実験環境であるからこそ、NEW INCはまったく新しい「作品」として、新しい波をつくりつつあるのだ。

その不敵な笑顔を見ていると、この人についていけば、変な実験をたくさん見ることができて飽きないんじゃないかと思わせてくれる。‥‥と思った時点で、私もすでに実験素材として取り込まれてしまっているのかもしれない。

 

NEW INCの工房スペースにて。Julia氏と筆者。最初の入居者選考からずっと、彼女がリーダーとしてこのスペースをつくり、運営してきた。それから1年ちょい。どんどんいろんなコラボレーションが花開いている
Juliaは6歳のときにニューヨークのブルックリンに移住してきたウクライナ人だ。小さい頃からNYにいるせいかまったくなまりがないので、最近までそのことを知らなかった
NEW INCのデスクスペース。さまざまな業種の人々が机を並べて一緒に作業する。美術館がこれを運営しているというのがとても新しい。最近では本誌でも連載しているexonemoの二人が加入した
NEW INCの工房スペース。ハンダごてに始まり、3Dプリンタやレーザーカッターまで、ものづくりに必要なものが何でもある。グレードの高いカメラなんかもメンバーみんなで共有している
 
 
 
Webサイトからメディアアート、ソーシャルゲームから都市デザインまで、ここからさまざまなプロジェクトが生まれている

 

清水幹太のQuestion the World:
30代後半になってニューヨークに移住した生粋の日本人クリエイター清水幹太(PARTY NY)が、毎月迎えるゲストへの質問(ダベり)を通して、Webについて、デジタルについて、世界を舞台に考えたことをつづっていくインタビューエッセイ。
Photo : Suzette Lee (PARTY NY)

 

Text:清水幹太
Founder/Chief Technology Officer/PARTY NY 1976年東京生まれ。2005年より(株)イメージソースでテクニカルディレクターを務める。2011年、クリエイティブラボ「PARTY」を設立。企画からプログラミング、映像制作に至るまで、さまざまな形でインタラクティブなプロジェクトを手がける。現在はニューヨークを拠点に広告からスタートアップまで幅広い領域にチャレンジしている。 http://prty.nyc/

掲載号

Web Designing 2016年1月号

Web Designing 2016年1月号

2015年12月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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 Julia Kaganskiy:美人マッドサイエンティストによる、やばい実験計画

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