2015.10.17
集中企画一覧 Web Designing 2015年11月号
ユーザー行動を見える化する「ヒートマップツール」導入ガイド(1/4) Chapter01:「ヒートマップツール」で何ができるのかを知る
「ヒートマップツール」とは、Webサイト内のページにおける「ユーザーの動き」をサーモグラフィのように可視化する解析ツールのことだ。本企画では、「できること」と「できないこと」、他のツールとの違いと連携など、その特長と活用法を紹介していこう。
まずは冒頭の2ページで、ヒートマップツールの特性を学びながら、「できること」と「できないこと」を把握しよう。
アクセス解析ツールと何が違う?
Webマーケティング市場では、元来はキャンペーンなどの「新規サイトの制作」や「広告」がビジネスの中心だった。だが、Webサイト自体はすでに多くの企業が持っており、そのサイトのデータを用いた改善こそがより求められるようになっている。改善のためのもっとも一般的なツールはGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールだが、ヒートマップツールにも注目が集まっている。
理由は大きく二つある。一つは、アクセス解析では把握しづらい「ページ単位」の「ユーザーの動き」がわかることだ。アクセス解析のデータだけでは該当ページの離脱率はわかっても、該当ページ内でユーザーがどう動いたかは把握できない。もう一つは、アクセス解析では得られない直感的なデータが手に入ることだ。たとえば、アクセス解析ではページ下部にマウスの動きが集中しているといった傾向を捕捉できないが、ヒートマップだと可視化してくれる。
ヒートマップで得られる3つのデータ
ヒートマップツールは、個々のユーザーの「クリック」や「マウスの動き」をリアルタイムで取得し、得られた複数人の大量なデータをページ上にマッピングすることで、サーモグラフィのように可視化する。これらのデータから大きく三つのことがわかる。
一つ目は、「ページのどこがクリックされているか」だ(01)。
Webユーザビリティの世界では、「一目でクリックできるところかわかるか」という点は非常に重要視されるが、「押せるところがわからない」「押せると思ったら押せない」というサイトも多い。もし「押せない要素なのにクリックしている」ことがわかれば、その箇所をリンク設定できるように変更するなどで使い勝手を改善することができる。
二つ目は、「ページのどこが見られているか」だ(02)。
「見てほしい要素がちゃんと見られている」ことの確認や、「あまり重要と思っていなかった情報が実は見られている」といった気づきの発見が可能で、要素やレイアウト変更などに活用できる。なお、実際のヒートマップツールのデータは、アイトラッキング(視線を追う機器)ではなくてマウスの動きとなるが、サイト閲覧時の「目線の動き」と「マウスの動き」は85%も一致しているという研究データの裏づけ※がある。
三つ目は、「ページがどこまでスクロールされているか」だ。リスティング広告で用いられる「縦長のランディングページ」などでは、ユーザーのスクロールの度合い(≒どれほど興味を持ったか)が非常に重要だ。これがわかれば「この広告から来たユーザーはスクロールしていない(興味が薄い)」「画面上部のメッセージの興味づけが足りていない」といった仮説を立てられる。
ヒートマップでは得られないデータ
一方で、ヒートマップツールだけではわからないこともある(03)。
その一つが、「なぜ注目しているか(クリックしているか)」という要因だ。予想外の要素が注目されていたとしても、それが「その要素に興味を持ったから」なのか「単に内容がわからなかったから」なのかや「ポジティブなのか、ネガティブな印象なのか」といった心理面の状態を得るのは難しい。
二つ目は、「そもそも存在しない要素の要否」もわからない。Webサイトの改善コンサルティングを行う際に、たとえば「該当ページにユーザーが求めているコンテンツがない」というケースはあるが、ヒートマップツールでその判断はできない。
※「マウスの動き≒目線の動き」として考える場合が多い https://www.ctale.jp/product/Mouse_Move.php
つまり、ヒートマップツール単体で改善策を考えると、要素の位置やリンク設定といった個別の機能に留まりがちだ。ヒートマップツールをはじめアクセス解析ツールが導き出すのは、「現状に対するユーザーの行動データ」にすぎない。サイト内の「ユーザーの心理」や「新しいアイデアや要素の良し悪し」を検討したい場合は、ユーザーテストやアンケート、A/Bテストといった他の手法との併用が望ましい(04)。