2015.10.22
サイト改善基礎講座 Web Designing 2015年11月号
アクセスログ解析を使った現状把握で見るべき項目 効果的なデジタルコミュニケーションを知るための分析と対策
Googleアナリティクスに代表されるアクセスログ解析は、Webサイト改善の最初のステップである「現状把握」を行うのに適している。Webコミュニケーションの目的と目標に対して、現状のWebサイトがどの程度到達しているのか把握できるからだ。実際にアクセスログ解析のどの項目から、どんな結果を読み解くのか紹介していこう。
Illustration:goo
集客でユーザーの「動機」を掴む
アクセスログを用いてサイトの「現状把握」を行うことで、Webサイトの問題を知ることができる。アクセスログはユーザーのWebサイト閲覧のフローに従って「集客」「回遊」「コンバージョン(CV)」「リピート」に仕分けると、ユーザーの気持ちをイメージしやすい。
まず集客としては、分析ツールで得られるデータのうち、ユーザーが訪問した「タイミング」と「参照元」の項目に着目する。訪問の状況を把握することで、ユーザーがどのような目的で訪問したのか理解できるからだ。
「タイミング」は、ユーザーのサイト訪問を日別や曜日別、時間別にグラフ化して観察する。曜日・時間帯・デバイス別に訪問数の推移を見ると、ユーザーのアクセス傾向がよく分かる。たとえば01の平日の時間帯別・デバイス別のアクセス数グラフでは、「ユーザーは身近なデバイスから自由に(気ままに)サイトを見ている」ことが推測できる。
「参照元」では、以前はオーガニック検索※1のキーワード別にサイトの閲覧状況(直帰率、PV/訪問、CVR)を見るのが一般的だったが、最近は検索エンジンのSSL化※2により約70~80%のキーワードを把握できなくなってしまった。しかしGoogle Search Console※3を使えば、確認することができる。キーワード上位100件を取り出してキーワードカテゴリーをいくつか立て、そのカテゴリーに基づいて分類・再集計しグラフ化してみると、ユーザーがWebサイトへ来訪してくる動機の傾向が見えてくるだろう。
回遊でユーザーの「満足」を把握
サイトの回遊状況については、解析ツールの「閲覧開始ページ別直帰率」と「人気コンテンツ」に着目する。ユーザーは何かしらの目的や期待をもってサイトに訪問するが、閲覧開始ページで直帰したのであれば、そのページが期待にマッチしていなかった可能性がある。サイトを自由に回遊した結果、ユーザーの閲覧が特定のコンテンツに集中したのであれば、それはユーザーにとって必要性が高いと考えられる。
「閲覧開始ページ別直帰率」では、閲覧開始ページを閲覧開始数で降順に並べてみる。数が多いにもかかわらず直帰率が高いページは、問題のある可能性が高い(02)。
問題ページを基点に参照元や検索キーワードを調べ、訪問前のユーザーニーズを推測しつつページを観察し、「ニーズはマッチしていたか」「次ページへの誘導は適切だったのか」を問いてページの問題を考察する。ヒートマップを併用するとページのどの部分が閲覧されていたのかを把握できるので、状況がより分かりやすくなる。
「人気コンテンツ」の把握は、全訪問数を100%としてページ別訪問数をコンテンツマップに整理すると、ページごとにどの程度の訪問数を得ているのか可視化できる。これをコンバージョンした(購入などのサイトの目的を果たした)ユーザーか否かでセグメントを作成し比較すると、コンバージョンしたユーザーにとってのみ相対的に閲覧の多いコンテンツが浮上する(03)。ここから、「どのようなユーザーが、これらのコンテンツに対してなぜ着目するのか?」というターゲットとコンテキストを掘り下げ、コンバージョンとコンテンツの関係性を推測していく。
CVの鍵は「ユーザビリティ」にあり
一般的にコンバージョンに設定される購入や申し込みにおいて、ショッピングカートやフォームのプロセスで離脱が起きていることは多い。購入、資料請求、申込みなどを行うCTAボタン※4
をクリックする行為は、ユーザーの心理変容における分岐点と考えられる。たとえるなら、コンビニで自分が買う予定の商品をカゴに入れ、レジ前に辿り着いた状態だ。あとは購入完了までスムーズに進んでもらいたいのだが、問題があるとそうならない。理由としては、フォームのユーザビリティがよく指摘される。ユーザビリティはユーザーによって評価が分かれやすいため、制作者も気づかない落とし穴がある場合が多く、客観的に「フォームの離脱」を把握しておくことはとても重要だ。
フォームの離脱は、フォームのステップごとと、フォームの項目ごとで把握する。ステップごとでは、(通常のフォームであれば)入力・確認・完了のページ別訪問数を順番に並べてみれば良い。入力のページ別訪問数を100%とすれば、確認・完了でどの程度の離脱が起きているのか分かりやすい。フォームの項目ごとでは、クリックイベントを活用して項目順にクリック数を並べてみる(04)。
最初の項目のクリック数を100%とすれば、その後の項目での離脱状況が見えてくる。また、ユーザーの閲覧環境や性別・年代によっても離脱状況に差が生じるため、属性ごとにセグメントを設けて観察するとなおよい。「どのようなユーザーによって、どの部分で離脱が高いのか」を明らかにすることによって、問題が具体的に分かってくるからだ。
リピートで「顧客維持」に力を入れる
解析ツールで初訪問か再訪かをチェックするリピートでは、CRM※5の実践に向けて「顧客の定着状況」や「顧客グループ別の訪問閲覧状況」の把握が主眼となる。一般的に新規顧客獲得コストは顧客維持コストに比べて5倍高いと言われ、顧客維持に注力することは収益上とても重要である。その改善のためには、Googleアナリティクスで実践できる、「コホート分析」(05)と「RFM分析」(06)を試してもらいたい。
前者は、ある属性で分けたユーザーグループごとの行動の変化を、後者は購入者を最新購買日(Recency)、累計購買回数(Frequency)、累計購買金額(Monetary)の3つの観点でグルーピングし分析するものだ。
いまや企業では、ほとんどのWebサイトにアクセス解析ツールが導入されていることだろう。これらは、データを集計すればすぐに取り組めるので、ぜひ実践してほしい。
※1 リスティング広告などを除いた、検索エンジンの検索結果のこと。自然検索ともいう。サイトにどのようなキーワードでたどり着いたのかを知る。
※2 Secure Socket Layer。インターネット上の情報を暗号化して送受信する。
>※3 Google検索結果でのサイトのパフォーマンスを監視、管理できるGoogleの無料サービス。以前は「Googleウェブマスターツール」と呼ばれていたが、2015年5月に改名され機能とともにバージョンアップした。 https://www.google.com/webmasters/
※4 Call To Actionの略。
※5 Customer Relationship Managementの略。顧客に応じたきめ細かい対応を行うことで、企業と顧客の長期的かつ良好な関係を形成する手法、戦略。