アクセスログ解析を使った現状把握で見るべき項目|WD ONLINE

WD Online

サイト改善基礎講座 Web Designing 2015年11月号

アクセスログ解析を使った現状把握で見るべき項目 効果的なデジタルコミュニケーションを知るための分析と対策

Googleアナリティクスに代表されるアクセスログ解析は、Webサイト改善の最初のステップである「現状把握」を行うのに適している。Webコミュニケーションの目的と目標に対して、現状のWebサイトがどの程度到達しているのか把握できるからだ。実際にアクセスログ解析のどの項目から、どんな結果を読み解くのか紹介していこう。

Illustration:goo

集客でユーザーの「動機」を掴む

アクセスログを用いてサイトの「現状把握」を行うことで、Webサイトの問題を知ることができる。アクセスログはユーザーのWebサイト閲覧のフローに従って「集客」「回遊」「コンバージョン(CV)」「リピート」に仕分けると、ユーザーの気持ちをイメージしやすい。

まず集客としては、分析ツールで得られるデータのうち、ユーザーが訪問した「タイミング」と「参照元」の項目に着目する。訪問の状況を把握することで、ユーザーがどのような目的で訪問したのか理解できるからだ。

「タイミング」は、ユーザーのサイト訪問を日別や曜日別、時間別にグラフ化して観察する。曜日・時間帯・デバイス別に訪問数の推移を見ると、ユーザーのアクセス傾向がよく分かる。たとえば01の平日の時間帯別・デバイス別のアクセス数グラフでは、「ユーザーは身近なデバイスから自由に(気ままに)サイトを見ている」ことが推測できる。

 

01 例として、一般社会人向けWebサイトにおける、デバイス別、時間帯別の訪問数の比較グラフを見てみよう。早朝~8時はスマホ、9時~11時はPC、12時はスマホ、13時~17時はPC、18時以降はスマホからのアクセスが多い。スマホは通勤時間や余暇時間に、PCは勤務時間中にアクセスしている様子がうかがえる。このことから、「ユーザーは身近なデバイスから自由に(気ままに)サイトを見ている」と推測できる

 

「参照元」では、以前はオーガニック検索※1のキーワード別にサイトの閲覧状況(直帰率、PV/訪問、CVR)を見るのが一般的だったが、最近は検索エンジンのSSL化※2により約70~80%のキーワードを把握できなくなってしまった。しかしGoogle Search Console※3を使えば、確認することができる。キーワード上位100件を取り出してキーワードカテゴリーをいくつか立て、そのカテゴリーに基づいて分類・再集計しグラフ化してみると、ユーザーがWebサイトへ来訪してくる動機の傾向が見えてくるだろう。

 

回遊でユーザーの「満足」を把握

サイトの回遊状況については、解析ツールの「閲覧開始ページ別直帰率」と「人気コンテンツ」に着目する。ユーザーは何かしらの目的や期待をもってサイトに訪問するが、閲覧開始ページで直帰したのであれば、そのページが期待にマッチしていなかった可能性がある。サイトを自由に回遊した結果、ユーザーの閲覧が特定のコンテンツに集中したのであれば、それはユーザーにとって必要性が高いと考えられる。

「閲覧開始ページ別直帰率」では、閲覧開始ページを閲覧開始数で降順に並べてみる。数が多いにもかかわらず直帰率が高いページは、問題のある可能性が高い(02)。

02 閲覧開始ページを、閲覧開始数の降順に並べたデータ。閲覧開始数が多いページの方が、直帰率改善をする効果は高い。改善を要する直帰率の目安は60%と考えるとよい。このデータでは、ページCとページDの改善を行うことが効果的だといえる

 

問題ページを基点に参照元や検索キーワードを調べ、訪問前のユーザーニーズを推測しつつページを観察し、「ニーズはマッチしていたか」「次ページへの誘導は適切だったのか」を問いてページの問題を考察する。ヒートマップを併用するとページのどの部分が閲覧されていたのかを把握できるので、状況がより分かりやすくなる。

「人気コンテンツ」の把握は、全訪問数を100%としてページ別訪問数をコンテンツマップに整理すると、ページごとにどの程度の訪問数を得ているのか可視化できる。これをコンバージョンした(購入などのサイトの目的を果たした)ユーザーか否かでセグメントを作成し比較すると、コンバージョンしたユーザーにとってのみ相対的に閲覧の多いコンテンツが浮上する(03)。ここから、「どのようなユーザーが、これらのコンテンツに対してなぜ着目するのか?」というターゲットとコンテキストを掘り下げ、コンバージョンとコンテンツの関係性を推測していく。

03 サイトの総訪問数を100%とし、ページ別訪問数の割合を算出したコンテンツマップから、各コンテンツにどの程度の訪問割合があったのかをプロットする。ここでは、サイトに対してコンバージョンしなかったユーザーとコンバージョンしたユーザーでセグメントし、比較を行っている。そうすると、赤の点線で囲った部分がコンバージョンしたユーザーの方のみ著しくアクセスが多いことがわかる。これらのコンテンツは、コンバージョンを起こす引き金となっているのか、いくつかのセグメント(新規/リピート、デバイス別、男女別など)でも比較し確認していく

 

CVの鍵は「ユーザビリティ」にあり

一般的にコンバージョンに設定される購入や申し込みにおいて、ショッピングカートやフォームのプロセスで離脱が起きていることは多い。購入、資料請求、申込みなどを行うCTAボタン※4
をクリックする行為は、ユーザーの心理変容における分岐点と考えられる。たとえるなら、コンビニで自分が買う予定の商品をカゴに入れ、レジ前に辿り着いた状態だ。あとは購入完了までスムーズに進んでもらいたいのだが、問題があるとそうならない。理由としては、フォームのユーザビリティがよく指摘される。ユーザビリティはユーザーによって評価が分かれやすいため、制作者も気づかない落とし穴がある場合が多く、客観的に「フォームの離脱」を把握しておくことはとても重要だ。

フォームの離脱は、フォームのステップごとと、フォームの項目ごとで把握する。ステップごとでは、(通常のフォームであれば)入力・確認・完了のページ別訪問数を順番に並べてみれば良い。入力のページ別訪問数を100%とすれば、確認・完了でどの程度の離脱が起きているのか分かりやすい。フォームの項目ごとでは、クリックイベントを活用して項目順にクリック数を並べてみる(04)。

04 コンバージョンまでにフォームの入力箇所が5個あるページでの、訪問数20件分のデータ例。クリックイベントを利用して、入力フィールドをクリックした回数をカウントした。ここでは項目3から4にかけて50%が離脱していて、項目3で入力のしづらさがあったか、項目4で内容に問題があってクリックされなかったと考えられる。ページを目視でチェックして、問題が分からなければ、ユーザーテストを行い原因を明確にしていく

 

最初の項目のクリック数を100%とすれば、その後の項目での離脱状況が見えてくる。また、ユーザーの閲覧環境や性別・年代によっても離脱状況に差が生じるため、属性ごとにセグメントを設けて観察するとなおよい。「どのようなユーザーによって、どの部分で離脱が高いのか」を明らかにすることによって、問題が具体的に分かってくるからだ。

 

リピートで「顧客維持」に力を入れる

解析ツールで初訪問か再訪かをチェックするリピートでは、CRM※5の実践に向けて「顧客の定着状況」や「顧客グループ別の訪問閲覧状況」の把握が主眼となる。一般的に新規顧客獲得コストは顧客維持コストに比べて5倍高いと言われ、顧客維持に注力することは収益上とても重要である。その改善のためには、Googleアナリティクスで実践できる、「コホート分析」(05)と「RFM分析」(06)を試してもらいたい。

 

 

前者は、ある属性で分けたユーザーグループごとの行動の変化を、後者は購入者を最新購買日(Recency)、累計購買回数(Frequency)、累計購買金額(Monetary)の3つの観点でグルーピングし分析するものだ。

 

いまや企業では、ほとんどのWebサイトにアクセス解析ツールが導入されていることだろう。これらは、データを集計すればすぐに取り組めるので、ぜひ実践してほしい。

 

※1 リスティング広告などを除いた、検索エンジンの検索結果のこと。自然検索ともいう。サイトにどのようなキーワードでたどり着いたのかを知る。
※2 Secure Socket Layer。インターネット上の情報を暗号化して送受信する。
>※3 Google検索結果でのサイトのパフォーマンスを監視、管理できるGoogleの無料サービス。以前は「Googleウェブマスターツール」と呼ばれていたが、2015年5月に改名され機能とともにバージョンアップした。 https://www.google.com/webmasters/
※4 Call To Actionの略。
※5 Customer Relationship Managementの略。顧客に応じたきめ細かい対応を行うことで、企業と顧客の長期的かつ良好な関係を形成する手法、戦略。

 

Text:中川雅史
(株)アンティー・ファクトリー マーケティングリサーチャー&データアナリスト。前職の市場調査会社で身につけた定量・定性調査の経験をベースに、Webサイトのユーザー調査やデータ分析に携わる。また、一般社団法人 日本Web協会(JWA・旧JWSDA)Webアナリスト委員会委員長として、Webアナリティクスの手法や技術の発展に努めている。書籍『サイトの改善と目標達成のための Web分析の教科書』(弊社刊)を監修。 http://www.jwa-org.jp/

掲載号

Web Designing 2015年11月号

Web Designing 2015年11月号

2015年10月17日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

実践的コンテンツマーケティング講座/ヒートマップツール導入ガイド

サンプルデータはこちらから

■ 特集:Web担当者のための実践的コンテンツマーケティング講座
 手法やツールではない、概念であり戦略だ! その秘訣、教えます。

■ 集中企画:ユーザー行動を可視化する「ヒートマップツール」導入ガイド
 ユーザー行動を探りながら、より来たくなるWebサイトを作ろう

■ WD SELECTION
 WDが選ぶ注目のデジタルコンテンツ
  写プライズ/それでも、わたし。 - niko and …/MY MINTIA MAKER/BAO BAO MUSIC/リアル脱出ゲーム「呪われたオーディション会場からの脱出」/ロッテ Fit’s presents みんなでつくろう! ウォーリーのせかい!/A DAY WITH THE ANGELS VOGUE GIRL/Hello, New World./SLICE OF HEARTLAND ハートランドビール/光文社創立70周年記念コンテンツ『360° PARTY』/TYO-ID TYO INTERACTIVE DESIGN

 ナビゲーターが選ぶ注目のデジタルコンテンツ
  [バズ施策]緻密なPR視点がキモ!:The Extreme Minuet?  眞鍋海里
  [デジタルプロモーション]行列エンターテインメント:HelixGame  築地 Roy 良
  [Webサービス]感染する情報:Plug**   仲暁子
  [IoT]実家の課題解決サービス:まごチャンネル  神谷憲司

■マーケティング・プロモーション
 □ サイト改善基礎講座
  アクセスログ解析を使った現状把握で見るべき項目

 □ ハギハラ総研
  国勢調査のオンライン回答率は、なぜ東京が低いのだろうか

 □ デジタルプロモーションの舞台裏
  テーマパークの来場者数増加を呼んだ、サンリオキャラクターが作れるサイト

 □ 行動デザイン塾
  人を動かすための18の「ツボ」

 □ 課題解決のためのU実装講座
  追従要素を工夫してスマホユーザーのストレスを軽減する

 □ 解析ツールの読み方・活かし方
  解析結果からモバイル最適化を行う


■ビジネス・EC
 □ ECサイト業界研究
  オムニチャネル:集客に必要なタッチポイント

 □ 月刊店舗設計
  ぐらこころ:写真をシェアする時代のアイデア商品「おうち写真館」

 □ モバイルビジネス最前線
  MOTTAINAIマーケット:新旧事業の社内ジョイントベンチャーが価値を作る
  
 □ 知的財産権にまつわるエトセトラ
  引用の範疇

 □ Bay Area Startup News
  カギの開け閉めをスマートフォンでワンタッチ! 勤怠管理や入室者制御もできるスマートロック

■クリエイティブ
 □ モノを生むカイシャ
  東京ピストル:「編集力」で遊べる会社!

 □ 清水幹太の「Question the World」
  Zolty(BREAKFAST):NYで最も注目される男との、やたらと落ち着く会話

 □ ツクルヒト
  保坂俊彦(サンドアーティスト):砂から生まれ、砂に還る巨大彫刻

 □ 最果タヒの「詩句ハック」
  第17回 モノローグスタンプ

 □ デザインにできることMonologue
  Vol.142 本をつくる

 □ エキソニモのドーン・オブ・ザ・ボット
  出会った女性はBOTばかり! 情報漏洩事件で判明した悲しき実態とは?


■インフォメーション
 □ Topics
  Illumicap/電撃戦-SPEED CHESS-

 □ Movement&News
  ドイツ銀行の“現代写真”コレクション/杉本博司の大規模展/「原子力」をテーマにしたシャンデリアによるインスタレーション/オモチャや廃材から創り出す“シャンデリアアート”とは?/全長100mもの超絵画大作を披露する村上隆の個展
  Facebookと違うユーザー傾向に注目! Instagramユーザー生態調査/政府が企業の世界進出を支援するフランスの試みとスタートアップたち/Twitterのタイムラインに動画広告、アプリインストールの促進剤に ほか

編集部よりお詫びと訂正のお知らせ

特集「Web担当者のための実践的コンテンツマーケティング講座」にて、P029「情報を拡散しやすい」に誌面のデータに誤りがあり、本文が読めない状態となっていました。お詫びするとともに、以下に正しい内容を掲載いたします。

▼画像をクリックすると拡大表示します。


また、WDオンライン版では、こちらで該当記事を含むページを無料公開しています。あわせてご参照ください。