2015.09.14
One's View コラム Web Designing 2015年9月号
[Webサービス:Trello]老舗の羊羹のように
4人のナビゲーターが、それぞれ自分のジャンルから一つの対象を選んで毎月紹介する「ナビゲーターズコラム」。選んだ対象の目の付け所や特徴など、わかりやすく解説してくれます。
「Trello」を知っているだろうか? Web業界では鉄板ともいわれるGTD(「Get Things Done」の略で、David Allen氏が提唱した仕事術)のWebサービスだ。対応プラットフォームも多く、この4月にはApple Watch版もリリースされた。しかし、Trelloのスゴさは、そういう対応力ではなく、逆に何年経っても変わらない「見た目」にある。
世の中一般のWebサービスは、どんどん新しい機能が付け加えられては、削られる。見た目もトレンドに合わせて変わっていく。ドラスティックに変更され、機能が加わり、その後シンプルに向かうフェーズが来て、削る。そういう波が行き来する。
けれどTrelloは、私が知る限り、ほとんどUIが変わっていない。よっぽど人が足りていないか、流行っていないのかとも思うが、サービス自体は順調に伸びているし、世界中で愛用されている。歴史は長く、2011年にFog Creek Softwareという会社で生まれ、2014年にはスピンアウトして独立し、10億円ほどの資金調達もしている。それが嘘のように本当に何も変わっていないように見えるのだが、それは逆に相当難しいことではないかと思う。
プロダクト作りをする人というのは、往々にして派手で見た目にもインパクトのある変更を好む。でもTrelloの開発チームは、見えないところに力を入れて地道に改善してきたんだと思う。とにかく動作の「サクサク感」がたまらないし、使い込むうちにほしいと思えてきた機能がすでに用意されている。
見た目は変わらないけど、実はすごく進化しているというのは、ユーザーを夢中にさせるための絶対条件だ。Googleも見た目はそんなに変わらないけれども、裏側で走るアルゴリズムや仕組みは日進月歩で進化を遂げている。ベースは残しつつ、マイナーに進化し続ける、老舗の羊羹のようなプロダクトを、私たちWantedlyも作っていきたい。
【Web Service】Trell