2019.11.04
CXを向上させると何が変わるのか
顧客体験をより好ましいものにしていくCX向上は、企業にとって多くのメリットをもたらします。ファンが増えれば当然売り上げの向上や購買の継続に繋がりますし、顧客からよい評価をもらえることで社員のモチベーションが上がるEX(従業員体験)向上の効果が出ることも多いです。しかし、具体的にどのように取り組んでいったらよいか、わかりづらいものかもしれません。ここでは、多くの企業で実施されているCX向上のための6つのステップと、各ステップごとで行う手順をご紹介していきます。
Illustration:高橋美紀
なぜいまCXが注目されているのか?
CX=顧客体験は、店舗やWebサイト、アプリなど、顧客とのあらゆる接点で発生します。顧客にとって好ましいCXを提供できると、顧客はファンになり、その愛着の気持ちが競合との差別化要素になります。CXと似ている概念としてUXがありますが、その違いは対象とする体験の範囲になります。UXは、提供する製品やサービスの上で顧客が得る体験、CXはその企業やブランドに関わるすべての体験が対象です。
CXの概念は以前よりありましたが、ここ数年とても注目されるようになりました。スマホとSNSの普及と浸透が重要性を高めたのです。2000年代頃までは、企業のマーケティングといえばメディア利用がもっとも効率的でした(01)。もちろん商品がよいものであることはとても大事ですが、インターネットが広く普及する以前はテレビ・ラジオCMや新聞・雑誌広告等でブランドの認知を高めて話題をつくり、売り上げをつくるのが成功への近道でした。
しかし、スマホとSNSが浸透・普及した2010年頃からコミュニケーションは双方向になり、ユーザーはブランドが発信する情報への懐疑心を強めます。代わりに、クチコミ情報を重視するようになってきました。CMや広告に予算を投資するだけで一定数の売り上げとファンを獲得できるという、何十年も通じたマーケティング手法が効力を失い、企業は新しい時代に効果のある手法を模索するようになったのです。
そうした手法はいまなお探索されている最中ですが、確かな投資対効果と再現性がいち早く認められたのがCX向上です。顧客の声を集めるという地味さ、具体的活動のわかりにくさ、目に見える効果が出るまで時間がかかるなどのハンデもありますが、世界中の成長企業がこぞって成果を上げている手法を試さない手はありません。
01 ブランド差別化要因の変遷