2019.11.06
CX向上を実現していくための 6つのステップ(後編) ビジネスを成長させ、社員のモチベーションを高めるノウハウ
Illustration:高橋美紀
[STEP 4]顧客サーベイを実施し、現状の顧客体験を分析する
01 サーベイツールを選ぶ
顧客サーベイの実施には、専用のツールを利用すると、その後の分析もスムーズに行えて便利です。世界的にユーザーの多い「SurveyMonkey」は無料のベーシックプランから利用でき、サービスも日本語訳されているので使いやすいでしょう。NPSや製品・サービス、顧客体験、カスタマーサービスなどさまざまな顧客の声を集めることができます。その他のツールはP098、099でも紹介しています。
02 フリーコメントを社内で共有する
顧客サーベイで集めた顧客の声のうち、フリーコメントは回収したらなるべく早く社内で共有します。気づきや喜びといったよいコメントは、従業員のモチベーションアップになりますし、ちょっとした注意は改善に繋がります。ただし、3点以下の非常に悪いコメントは、マネージャー以上のみで共有・対応するようにしましょう。これらは皆で共有しても気分が落ち込んだり、特定のスタッフが名指しの場合はいじめのようになってしまうからです。
NPSでは、3点以下をつけた人を「深刻な批判者」と名付けています。こうした意見はサーベイを通じたクレームのようなものです。相手の連絡先がわかる場合は、回答から48時間以内に謝罪の連絡を入れると、その対応への好印象から体験が好転する場合があります。
03 経済性検証を行う
経済性検証とは、例えば推奨者を1人増やした場合、どれだけの経済効果があるかを算出するものです。推奨者、中立者・批判者それぞれが過去1年間に使っている平均金額の差を算出し、経済効果を比較します。たいていの企業では、ロイヤルカスタマーが売り上げの8割を占めるといわれています。割合は異なれど、実際に、どの企業でもロイヤルカスタマー=推奨者の購入金額が一番大きくなります。
また、顧客サーベイに「あなたは何人くらいの人にこのブランドのことを薦めましたか」という設問を入れておくと、それぞれのクチコミ効果も算出できます。そうして具体的な数値を算出すると、推奨者を1人増やせばいくら相当の価値があるので、そのための施策をしましょうと経営者や役員層を説得する材料になります。実際に具体的な経済効果がわかると、理解を得られたという企業は多くあります。
04 優先改善課題を絞り込む
顧客サーベイから改善課題が見えたら、どの改善から取り組むかという「優先改善課題」をキードライバー分析で絞り込みます。これは、個別体験の評価が総合評価であるNPSに与えた影響をグラフ上にマッピングしていくものです。当然、NPSへの影響力が大きく、現在の評価が低い体験が優先改善課題となります。
この分析で見える優先改善課題は、顧客サーベイの回答すべてを統計的に計算処理して初めて可視化される課題です。顧客の総意が「改善して」とリクエストしていると考えてよいでしょう。一方、フリーコメントなどを通じて届く改善リクエストは顕在的な課題項目です。これら二つはまったく異なる種類の課題だということにも注意しましょう。