そのコンテンツマーケティングは行動を喚起できているか?|WD ONLINE

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行動デザイン塾 Web Designing 2018年6月号

そのコンテンツマーケティングは行動を喚起できているか?

一方的な広告情報がスルーされる時代。コンテンツマーケティングが注目されているが、本当に投資に見合ったビジネス成果が得られているのか? その検証が必要だ。

コンテンツマーケティングの「ミッシングリンク」とは?

コンテンツマーケティングを考える上で、ブランドとの距離感はとても重要なポイントだ。「一方的な商品広告はスルーされる」という前提に立てば、商品と距離があるコンテンツほど、生活者には歓迎されることになる。実際、まったく商品と結びつかない“面白動画”が大量のビュー数を稼ぐ例はあるが、一般的にブランドとのエンゲージメントは担保したい企業が多いだろう。であれば、ブランドのビジョンや哲学とシンクロしたコンテンツに、コンテンツのファンが集まり、そこからブランドとのエンゲージメントが拡大する構造が必要だ。

例えば生活雑貨のECサイトであれば、ただの商品カタログではなく、社員の手づくりでリッチな生活コラムを日々更新すれば、人肌が伝わるライフスタイルへの共感/共鳴の先に「商品購入」という行動が生まれる、というような構造だ。順調に顧客数を伸ばす、ある北欧系雑貨のECサイトの作りがそれだ。センスのいい丁寧な暮らしを愛するコミュニティにファンが魅力を感じ、そこに参加するために商品を購入するのだ。

特にマスプロダクトでコンテンツマーケティングを実施する場合、コンテンツへのリーチの拡大には、Web PRなどの手法が必要になる。だが、それだけではまだ不足だ。EC完結の商品ならコンテンツから購入ページに誘導できるが、一般流通メインの商品では、コンテンツ体験と実際の商品体験/行動(検索、試用、購買)との間に「ミッシングリンク」が存在するからだ(01)。コンテンツを通じてブランドへの好意は獲得できても、必ずしも行動につながらない問題を本連載は繰り返し指摘している。

では、どうすればいいのだろうか?

01 コンテンツマーケティングのミッシングリンク
肝心の「コンテンツ」は、Web PRで話題を拡散し、コンテンツを格納するオウンドメディアにファンを誘引することが重要。コンテンツがブランドと結びつくほど、コンテンツファンのコミュニティはブランドにエンゲージメントを感じてくれる。だが、気持ちのエンゲージメントだけではビジネス成果にはつながらない。リアルな行動/体験の喚起も必要である

「商品」ではなく、「行動」そのものをPRする

例えば、手に付いた油汚れを落とす効果が高い新製品のハンドソープはどう売り出すべきか? 多くの生活者はハンドソープに低関与で間に合っている。そんな状況で生活者を引き付けるには、コンテンツマーケティングが有効だろう。

では、視聴数が見込める面白動画コンテンツ(ソープの泡で面白い形をつくる etc.)を制作すればいいのか? もし主婦にとって油汚れが一番気になる瞬間は、「キッチンでハンバーグを捏ねている時」という発見があれば、「上手なハンバーグのつくり方」という料理コンテンツを用意したほうが行動に直結する。レシピサイトに「ハンバーグを捏ねた時の手の汚れ、どうする?」とタイアップ記事を出稿するのだ。低関与な商品ほど、商品そのもののPRではなく、こうした「行動のPR」が効果的となる(02)。

02 商品のPRと行動のPRの違い
特に低関与商材ほど、商品自体のPRよりも(「商品を使う」に関連する)行動のPRに注力する方が成果につながりやすい

ここで、動画を使った「行動のPR」の一例を挙げよう。関東・関西エリアの量販店を中心に展開する卵「きよらグルメ仕立て」は、「きよらのお布団をかけてください」とケチャップライスでできた猫が訴える「寝冷えネコ」CM(03)が話題になり、大きな販売増を獲得した。低関与商品である卵を、「美味しい」とストレートにPRせず、「ケチャップライスでネコをつくり、そこに卵をかけてキュートなオムライスをつくる」という行動を世の中に広めたからだ。「寝冷えネコ」CM動画は多数シェアされたと同時に、ユーザーの「やってみた」動画や、調理写真なども大量に投稿されている。

03「寝冷えネコ」(「きよら グルメ仕立て」のCM)
「寝冷えネコ(きよニャ)」は、ブランドたまご「きよら グルメ仕立て」を展開する(株)アキタのCMに登場する、ケチャップライスでできたネコのキャラクター 「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」のマーケティング・エフェクティブネス部門で2016年度の「総務大臣賞/ACCグランプリ」を受賞をはじめ、多数の広告賞を受賞。現在では、きよニャのLINEスタンプなども展開し、今後は絵本を発売する予定だ http://nebieneko.com/

単に「いいね!」で終わらず、「自分もつくりたい(=お布団をかけてみたい)」と行動を喚起し、販売増に寄与。コンテンツマーケティングは、こうした販売増につながるシナリオ設計が必要だ。

 

Text:國田圭作
博報堂行動デザイン研究所所長。入社以来、一貫してプロモーションの実務と研究に従事。大手嗜好品メーカー、自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などの統合マーケティング、商品開発、流通開発などのプロジェクトを多数手がける。2013年4月より現職。著書に『「行動デザイン」の教科書』(すばる舎刊)。 http://activation-design.jp/

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