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行動デザイン塾 Web Designing 2018年4月号

Web 動画と顧客との間に生じるエネルギーコストは?

人は有限なエネルギーを大切にしながら暮らしている。エネルギー負荷を低くすることが行動喚起の要諦だが、低くし過ぎても目的を達成できないので見極めが必要だ。

なぜ“キャズム”を越えられないのか?

本連載は、顧客(受け手)が支出するエネルギーコストに目を向けよ、と警鐘を鳴らしている。そのコストを送り手が過小評価すると、マーケティングが成功しない(行動喚起に至らない)からだ。問題が起こると、リカバリーのための大きなコストが発生する。リスクはコストの事前評価なので、受け手のリスク感軽減が、行動喚起の必要条件といえる。

例えば、新製品は受け手にとって「未知」の存在で、受け手には大きなリスクだが、送り手にとってはすでに馴染みがあるので、つい受け手のリスクを見過ごす。操作マニュアルの不親切な記述は、受け手と送り手の情報格差が原因だ。送り手は受け手のリスク感にもっと敏感になるべきだが、これが難しい。そこに作業者のエネルギー負荷も発生するからだ。送り手も人間なので、できるだけエネルギーコストは節約したいもの。当然、自分基準の判断のほうが楽なのだ。

コストやリスクは受け止め方に個人差がある、相対的で感覚的なものだ。本人の手持ちエネルギー量が豊富なら、相対的にリスクは小さく感じられる。旅行行動で考えるとわかりやすい。訪日観光客の大半は韓国、中国、台湾などの近場(01)。さらに中国や台湾で円安(現地通貨高)が進んだことで、相対的な手持ち資産が増えたように感じ、それが「爆買い」行動を生み出したのだ。

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01 訪日観光客数(国別)と日本への距離の関係
2017年の訪日外客数は2,869万人(過去最高)。国別の推計では、アジア4地域で全体の約4分の3を占め、欧州が少ない。この数字と、日本への距離(東京と各地域の主要都市との距離を目安とした)の関係を見ると、米国など一部の例外を除き、ほぼ距離に反比例した順位となる。出典(左側):訪日外客統計(JNTO/2017年12月推計値) https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/180116_monthly.pdf (右側):東京から各都市までの距離は出典 http://chireki.com/

受け手の手持ちエネルギー資源の格差を示したと言えば、ジェフリー・ムーアが提唱した “キャズム(溝)理論”だ。資産と情報量、体力(権力)などは相関していることが多いので、エネルギー富裕層と非富裕層の差は滑らかなグラデーションではなく、簡単に越えられない大きな溝が存在すると考える(02)。

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02 ムーアの“キャズム(溝)”理論
ジェフリー・ムーアは「ロジャーズの普及曲線」モデルに異論を唱え、「アーリーアダプターまで普及しても、必ずしも次のマジョリティ層が採用に至るとは限らない」という、“キャズム(溝)理論”を打ち出した。※「ロジャーズの普及曲線」では、真っ先に革新的な新製品などを採用する層(イノベーター)、つまり「リスク・テーカー」は全体の2.5%程度しか存在しないとされる

 

情報コストの観点でWeb動画を評価する

身体的疲労も大きなコスト要因なので、負荷の高い行動は喚起しにくい。情報処理にも、当然エネルギーコストがかかる。テレビ視聴行動は、PCやスマホ行動に比べれば受動的でエネルギー負荷が低い行動だ。「家で何となくテレビをつけている人」が多いのは納得できるが、最近はザッピングをしない(チャンネル固定)人も意外に多い。ザッピングは能動的な探索アクションだが、スマホとテレビの同時視聴が増えたため、能動的な情報探索はスマホで行い、テレビは受動視聴に徹するという使い分けが進んでいるからだろう。

デジタル行動はリアルな行動に比べれば、エネルギー負荷は相対的に小さいが、その中でさらに負荷を小さくしようとする圧が常に働く。静止画像であれ動画であれ、スクリーン上の広告情報を処理するエネルギーコストは低ければ低いほど、受け手にはありがたい。

では、静止画と動画はどちらが身体的な負荷が高いのか? 動画のほうがデータ量は圧倒的に上なので、視聴(情報処理)するエネルギー負荷は相当高いはずだが、必ずしもそうとは限らない。眼球運動の特性を考えると、動画をぼんやり見ている(動きを目で追っている)時は、体と心が楽をしているため、Web動画でもテレビに近い受動的視聴になっている可能性がある(03)。

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03 眼球運動の大小によってエネルギー消費は変わる
人間の眼は静止画に対して、細かく視線(眼球)を動かす(固視微動)。網膜は動かないものは見えないので、静止画を注視する時も眼球を動かし続ける。その肉体的負荷は無視できない。 一方で動画(特に人物や生物)は、表情の変化があるので認識しやすく、眼球運動が抑えられる。動画は眼球の運動負荷が予想外に低い可能性がある

デジタル情報がオーバーフローする中で、Web動画が好まれるのはこうした身体的コストの低さに関係する。逆に、Web動画広告が受動的に見られているなら、動画内の広告的情報が受け手にどこまで意識的に視聴され、サイト閲覧といった能動的行動を喚起できるかは、慎重に計算する必要がある。

 

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Text:國田圭作
博報堂行動デザイン研究所所長。入社以来、一貫してプロモーションの実務と研究に従事。大手嗜好品メーカー、自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などの統合マーケティング、商品開発、流通開発などのプロジェクトを多数手がける。2013年4月より現職。著書に『「行動デザイン」の教科書』(すばる舎刊)。 http://activation-design.jp/

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