2017.04.27
中小企業がWatsonでマーケティングする方法 人間の知能を「拡張」する IBMのビジョン
今やAIの代名詞的存在といえる日本アイ・ビー・エム株式会社のワトソン。実際にはどんな活用方法があって、いくらから使えるのだろうか? ワトソンを始めるための第一歩を伺った。
Photo:黒田彰
日本アイ・ビー・エム株式会社
ワトソン事業部 事業企画推進部長
林克郎 Katsuro Hayashi
ワトソンはほぼすべての業務・業種に対応できる
IBMのワトソン(Watson)がボブ・ディランや渡辺謙、Pepperらと対話するコマーシャルを見て、“近未来”を感じた人も多いのではないだろうか。一方で、実際にワトソンがどのような仕組みになっていて、ビジネスの現場でどのように活用できるのかを理解している人は多くないだろう。
まず、一番多い誤解のひとつが、IBMのAI=ワトソンという認識。しかし、ワトソンはIBMが提供するコグニティブシステムのブランド名の1つであり、他にもさまざまなAI技術があるということを覚えておきたい。IBMのワトソン事業部 事業企画推進部長の林克郎氏は言う。
「ワトソンは発表当初、AIという言葉を使わずにコグニティブ・コンピューティングという言葉を使っていました。現在ではAIという言葉が広まったことで、『Artificial Intelligence(人工知能)』ではなく『Augmented Intelligence(知能を拡張するもの)』と定義して使っています。つまり、人、特にプロフェッショナルの方々を支援するツールという位置づけです」
ワトソンには音声認識や画像認識など、さまざまな技術やサービスが含まれているが、そのなかの特にコアな技術が自然言語、つまり人の話し言葉を理解して回答するQ&Aだ。
その仕組みを簡単に説明すると、まずワトソンに知識となるデータを覚えさせて、次にそれらのデータに「アノテーション」と呼ばれるタグ付けを行う。すると、質問に対して必要なデータをとってきて回答し、もし間違えていた場合には指摘することで、ワトソンがそれを学習していく。さらに、ワトソンの大きな特徴のひとつに、「確信度」がある。これは「ワトソンの自信」を表示するもので、ワトソンに質問を投げかけると、確信度の高い答えを5つ表示するといった具合に使われている。いずれにせよ大事なのは、ワトソンにどんなデータを覚えさせるかということだ。
「私たちはデータを3層のピラミッドに分けて考えています。一番底にあるのがパブリックデータで、誰もがアクセスできる情報。その上にあるのが医療や金融など、業界・業種が持っている情報、そして一番上にあるのが、各企業が固有で持っているデータ。そのなかでも特にIBMは業界固有のデータに強みを持っているので、現在は業界に特化した使い方をワトソンで提案していますが、実際にはワトソンはほとんどすべての業界で、営業や人事、総務など、ほぼあらゆる業務に適用することができます」