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知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2017年6月号

「森のくまさん」騒動で考える著作者人格権 ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

童謡「森のくまさん」をもとにした曲をお笑い芸人のパーマ大佐が発表したところ、「森のくまさん」を和訳した馬場祥弘氏が、パーマ大佐とレコード会社に対して著作権法を根拠に販売差止めと慰謝料などを請求する騒動が起きました。オリジナルの曲はアメリカ民謡ですから、どのように利用しても著作権法上の問題はありません。この騒動で問題になったのは馬場氏が和訳した歌詞との関係です。

この件はいわゆる替え歌とは異なり、パーマ版では馬場版の歌詞そのものに手を加えていません。ただ、歌詞の間に独自の歌詞を加えただけです。また、馬場版の歌詞の著作権はJASRACに譲渡されていて、パーマ版のCD販売などについては使用料を支払ってJASRACから使用許諾を受けていました。それなら、なぜ著作権法違反が問題となったのでしょうか。

実は、ここで問題となったのは著作権法上の“同一性保持権”という権利です。これは著作権ではなく、著作者人格権という権利のひとつです。著作者人格権は財産権ではなく、人格権で、同じく人格権とされている肖像権やプライバシー権といった権利と同様に、他人に譲渡することができません。ですから著作権がJASRACに譲渡されていても同一性保持権のような著作者人格権の権利者は著作者である馬場氏のままなのです。

この同一性保持権は、作品の変更、切除などの改変を禁止する権利で、パーマ版は馬場版を改変しているので、同一性保持権の侵害になるというのが馬場氏の主張でした。しかし、パーマ版は新たな歌詞を挿入してはいますが、歌詞そのものに改変を加えたわけではありません。そのため、このような行為も同一性保持権の侵害になるのかは疑問だという声も多かったようです。

しかし、パーマ版は別の歌詞を挿入することによって、馬場版の意味とはまったく違うものに改変されています。また、馬場版をまったく知らない人がパーマ版の歌詞を目にしたら、パーマ版で挿入された部分の区別はつきません。このような手法はやはり、歌詞の一部を改変してしまう替え歌と同様、馬場版に対する改変として同一性保持権の侵害ということになってしまうでしょう。なお、替え歌といってもオリジナルの歌詞の痕跡をとどめない程度の大幅な改編をした場合には、まったく別の作品であるとして同一性保持権の侵害とはなりませんが、その線引きは微妙で、どの程度改変すればセーフなのかは一概にはいえません。

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著作権と著作者人格権の関係性

 

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Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/

掲載号

Web Designing 2017年6月号

Web Designing 2017年6月号

2017年4月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

6月号のテーマは「AI」です。「え!?」と思った人、ぜひ本書ですでに直面している現実をご覧ください。

現在、ビジネスのキーワードとして飛び交っている「AI(人工知能)」。人間の脳の代わりとなり、さまざまな仕事をAIが賄ってくれる未来像がネット上でも飛び交っています。「人間の仕事を奪うのではないか」「人間を支配するのではないか」そういって煽るメディアも多々ありますが、果たして現在のAIとは、本当にそんなSFのような話なのでしょうか?
答えは「今はNO」です。
むしろ、AIはインターネット、そしてSNSといったものと同じ、現在のマーケティングを加速させる「新しいマーケティングツール」なのです。

一方、AIの導入は巨額の開発費を投資できる大手企業の話であり、自分たちのような中小規模の企業には関係ないと思っていませんか?
答えは「NO」です。
むしろ、時代の流れに少なからず影響を受ける中小企業こそ、大手との仕事のため、企業成長のため、正しい理解と認識が必要です。

AIは今すぐに、多額の投資をしなくとも活用できる状況がすでに作られています。
人工知能によってマーケティングにおけるあらゆるコミュニケーションが変わっていく可能性があり、そんな時代はもうすぐそこまで来ています。仕事の効率化、人件費削減など中小企業が抱える長年の課題に対する解決の道筋をつけてくれる可能性が大いに有り得ます。
御社の競合がAIを使った施策を行っている、そう聞いてからでは遅いのです。
本特集では、今、現場で活用できるAI技術を使ったWebマーケティングの方法と、それによるリソース面、予算面のメリットまで追求します。

第1部 【中小企業Web担こそ!】いますぐAIを検討すべき理由
●いますぐ使えるAIの基礎理解
●図解・AIがマーケティングで注目される理由
●AIの仕組み~要するに、何をしてるの?~
●AIをビジネスツールとして活かすには

第2部 AIを現場の即戦力にするメリット
●AI搭載型botでオペレーションコスト低減へ!スモールスタート可能なチャットボット活用法
●AIの機能は「分析」ではなく「分類」だ!AIの導き出す「答えの見方」
●実録・AIでFAQを作る
●こんな身近にある!AIツール

など

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