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知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2017年4月号

元号と商標 ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

報道によると2019年に皇太子殿下が新しい天皇に即位し、それにともない改元(元号を改めること)が行われるようです。そこで今回は元号と商標について解説をします。元号は日本人なら誰でも知っていますから、これを商標登録して独占的に使用できるとしたら、それはなかなか魅力的です。ところが、商標法3条1項6号は、商標登録を受けることができない商標として「何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標」を掲げていて、現在の特許庁は現元号として認識される商標、つまり「平成」や「HEISEI」などの商標登録を認めていません。

もっとも、登録ができないのは「現元号」ですから、昭和、大正、明治などの「旧元号」は登録ができます。そのため、現在は登録できない「平成」も、改元後は登録ができることになります。具体的には出願を受理した特許庁が登録をするかどうかの判断(査定)をするのが改元後であれば認められ(登録査定)、改元前であれば認められないこと(拒絶査定)になります。

なお、商標法は、同じ商標について複数の人が商標登録出願をした場合、先に出願した者を優先するという「先願主義」を採用しています。そうなると、少しでも早い日に出願をしておきたいところですが、あまり早く出願をしては特許庁の査定が改元前になり、拒絶査定が出て登録はできません。ですから、「平成」という商標を手に入れるためには、特許庁の査定が改元後になるタイミングを狙い、しかも他の人より一日も早く出願をする必要があるわけです。なお、特許庁では「昭和」から「平成」へ改元した翌年、1990年12月に電子出願システムが導入され、特許庁の窓口に並ばなくても24時間365日PCから出願ができるようになったのです。出願から査定までは半年程度かかるのが一般的なので、改元の半年より少し前くらいから「平成」の商標登録出願をする人が続出するかもしれませんね。

ところで、現在、さまざまなところで新元号の予想が行われています。新元号については、改元後は「現元号」となりますから商標登録できませんが、改元前であれば登録可能です。ですから、改元前から新元号を予想して、先手を打って商標登録をしてしまおうと考える人もいるかもしれません。しかし、政府も新元号を決める際には商標登録や出願についてチェックをし、既にあるものは新元号の候補から除外するでしょう。それなら元号が決定し、発表された直後に出願をしてはどうか、というところですが、新元号が決定した後は特許庁は改元後まで判断を保留し、改元後に「現元号」であることを理由に拒絶査定を出すだろうと思います。ということで、新元号について商標登録ができる可能性も低そうです。

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「平成」の商標登録出願のタイミング。査定が平成の時期だと拒絶査定となる。改元直後、一番最初に査定されたものが商標登録できる

 

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Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/

掲載号

Web Designing 2017年4月号

Web Designing 2017年4月号

2017年2月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

4月号のテーマは「エンゲージメント」です。

競合他社のひしめく中、顧客に自社商品・サービスを選んでもらい、さらにリピートしてもらうのはなかなか難しい現在。
価格競争に巻き込まれることなく安定した収益を見込むための戦略の1つとして「エンゲージメント(愛着・共感)」向上があります。
顧客に自社商品、ひいては会社自体に興味を持ってもらい、贔屓にしてくれる「上客」を育てるにはどうすればいいのでしょうか。

本書では、「安定した収益を見込むための顧客エンゲージメント向上」をベースに、
顧客エンゲージメントを高めるとどんないいことがあるのか?
エンゲージメント(愛着・共感)を高めるには?
顧客のエンゲージメントは今どうなっているかを把握するには?
現在の顧客の声をデジタルをベースに聞き出すには?

と、段階と施策に分けて丁寧に解説します。



【Chapter01】
安定収入を得るためには?
_エンゲージメントを上げることのメリット
_顧客の共感や満足度を高めること
_顧客の満足度とはどういうことか
…etc

【Chapter02】
共感や満足度を高めるためには?
_カスタマーサクセスで成功のプランを設計する
_顧客を知るためのカスタマージャーニー
…etc

【Chapter03】
現状を知るには?
_指標を持つことの重要性
_NPSで測れること、わかること
_CESで測れること、わかること
_なにを改善するかを理解する
…etc

【Chapter04】
顧客の声を聞くには?
_各種アンケートで顧客の声を聞く
_SNSを利用する
…etc


SNSのエンゲージメント率とは?

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