2017.03.23
[格之進]特別感とビジョンでコアなファンを掴む お客様の「やってみたい」を実現
舌の肥えた食通から高い評価を受けるレストラン「格之進」。同店は少し変わった取り組みでコアなファンを増やし、成長を続けている。
参加するとファンになるイベントの秘密
岩手県・一関に本社を構え、都内を含む10のレストラン、さらにオンラインストアも展開するなど、熟成肉で人気を集める格之進。さまざまなメディアで取り上げられる同店は、こだわり抜いた肉を使用した数々の料理はもちろんだが、ある取り組みによってお客様とのエンゲージメントを高めている。
それが熟成肉の解体ショーや、寿司屋とのコラボ、白ワインとのコラボなど、各店で開催されるさまざまなイベントだ。とはいえ、レストランが特定のテーマを設けたイベントを開催するのはそれほど珍しいことではない。格之進のイベントがユニークなのは、イベントをお客様が企画して、集客まで行う点だ。

たとえばある人が、熟成肉とチーズのマリアージュを楽しんでみたいと格之進のスタッフに相談すると、そのリクエストに沿った特別な料理の数々をイベントのためだけに考え、提供する。代わりに、発案者はそのイベントの幹事となって、友人などを誘って集客する仕組みだ。一見、いわゆる飲み会と同じようにも思えるが、多くの飲食店では、いくつかの価格帯のコースに応じて、決まったメニューを提供するのが一般的。それを格之進では発案者の要望にあわせて、ふだんは取り扱わない食材などもわざわざ取り寄せ、提供する料理を細かくカスタマイズする。それゆえ、発案者はもちろん、参加者の満足度も非常に高くなると、格之進を運営する株式会社門崎の代表、千葉祐士さんは言う。
「今は自己実現欲求の高いお客様や、いつもとは違う特別感に高い価値を見いだすお客様が増えているように感じます。そうしたお客様の『やってみたい』を、格之進の店舗や、お肉を使って実現するのがこの取り組みです。通常はないメニューを提供して、いわば特別扱いをするので、1度イベントを開催してくださったお客様とは、以前とまったく関係性が変わり、格之進の非常にコアなファンになってくださる方がほとんどです」
こうしたイベントを初めて開催したのは2008年。常連のお客様のリクエストに応える形で開催し、今では毎月、各店で1~2回は開催している。1回のイベントは約3時間程度で、30人前後が参加。1人あたりの料金は内容によって異なるが、1万円を下回るものはないという。こうしたイベントが成功する理由を、千葉さんはこう説明する。
「うちの店に来店されるお客様は、皆さんとても食への意識が高いので、ふだん食べられないようなもの、おいしいものには価値を感じてお金を払ってくださる。そうしたお客様が多いことが、イベントがうまくいっている理由だと思います。岩手に本社があるので、お付き合いが深くなったお客様が岩手に遊びに来る際にアテンドすることもありますね」

六本木にある「肉屋 格之進F」を旗艦店に、都内に7店舗、岩手に3店舗を展開するレストラン。熟成肉にこだわる同店では、お客様のリクエストに応じたさまざまなイベントの実現のほか、他業種とのコラボも受け付けている