2016.12.28
One's View コラム Web Designing 2017年2月号
【コラム】「動画ネイティブ」世代がつくる未来 今月のお題「動画マーケティング」
さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。
今回のテーマは「動画」ということで、またしても専門外で何を書くか迷った結果、動画世代の未来について考えてみました。最近見た何かの記事で大学生がTwitterやYouTubeに動画を公開して、20万人以上のフォロワーがいるということが書いてあり、その大学生がつくった動画を見たのですが、これがなかなかのクオリティで単純に感心しました。
近年、YouTuberが急増し、誰でも簡単に動画をアップして自分たちのチャンネルが持てるようになっていますが、やはり急激に動画が広まった背景として、動画の作成と編集がアプリで簡単にできるようになったことが大きな要因ではないかなと感じています。スマートフォンがなかった時代、動画をつくるというのはある程度専門的な技術が必要で、自分でつくるとしても何万円もする動画ソフトを買って使い方を勉強して、というような感じでした。それに比べて今は、スマホのアプリで物凄く簡単にクオリティの高い動画をつくることができ、数百円やタダでもある程度良い感じでつくれるなど、動画コンテンツをつくるハードルは10年前に比べて劇的に下がりました。スマートフォンという小さな画面の中で動画の編集という複雑な操作をユーザーにさせるためには機能の削減や設計もシンプルにする必要があるので、PCで使う動画編集ソフトよりも直感的で簡単なアプリがたくさんあります。
YouTubeはこの数年で急成長を遂げていますが、デバイスの進化とアプリケーションの簡易化は密接に関係していますね。最近では映画「シン・ゴジラ」の一部も監督がiPhoneを使って撮影したという話もあるとおり、高スペックなデバイスを一般の人も持つようになったという、現代は本当に凄い時代だなと思います。
スマートフォンのアプリは誰でも簡単にクリエイターになれるという可能性を広げたのと同時に、既存のプロフェッショナルたちのマーケットを奪っていってしまったかもしれない…そう思うと、少し考えてしまう部分はありますが、高いハードルをテクノロジーの進化とデザインの力で低くして、新たな価値が生まれるというのは世の中にとっても非常に良いことだと考えています。今の若い世代は子どもの頃から動画を当たり前に編集して育ってきた人たちなので、彼らの中から、今までにはない斬新な映画をつくるような、新進気鋭の映画監督が出る未来を楽しみにしています。


- ナビゲーター:土屋尚史
- (株)グッドパッチ代表取締役。1983年生まれ。Webディレクターとして働いた後、サンフランシスコに渡る。帰国後、2011年9月に(株)グッドパッチを設立し、UIデザインを強みにしたプロダクト開発で2015年にはベルリンに進出。グッドデザイン賞受賞の「Prott」も開発している。