店内のBGMと著作権|WD ONLINE

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知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2016年10月号

店内のBGMと著作権 ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

先日、JASRACが全国の美容院や飲食店など171事業者、258施設に対して、簡易裁判所への民事調停の申し立てをしたと発表しました。全国各地の15支部が一斉に法的措置を行うという異例の事態ですが、その理由は著作権使用料を支払わずに店内でBGMを流していたからです。でも、店舗でBGMを流すのは著作権使用料の支払いなどせずに一般的に行われてきたことです。どうしてこのような事件となったのでしょう。

実はこれまで店舗のBGMの多くは、ラジオや有線放送などをそのまま流していたものでした。(有線)放送の音楽を店内に流すのは著作権法では「伝達権」という権利の対象になっています。ところが、この「伝達権」には重大な例外があって、「通常の家庭用受信装置」を使っている限りは、許可がいらないのです。ですから、家庭用の機器を使って(有線)放送の音楽を流している限りは使用料も支払わなくてよかったわけです。これはテレビも同様で、飲食店で高校野球を観戦することなども、家庭用のテレビを使っている限りは問題ありませんでした。

では、近年普及しつつあるインターネットラジオはどうでしょうか。伝達権は放送の場合だけでなく、配信されている音楽にも適用されます。ところが、上述した伝達権の例外は(有線)放送の場合だけで、配信には適用がありません。ですから、インターネットラジオを流すには著作権使用料を支払う必要があります。

また、最近はCDを携帯音楽プレーヤーやPCに取り込んで長時間流すことも可能になりましたが、CDを取り込むことは「複製権」、複製された音楽を流すことは「演奏権」の対象となります。いずれも上述した「伝達権」のような例外はありません。ですから、家庭用の音楽プレーヤーを使っても、これらについては著作権使用料を支払う必要があるわけです。

店舗の側からすると、(有線)放送を店内で流す場合と何が違うの? と思うかもしれません。ハードディスク付きのオーディオを使って、同じ音楽を流しても、ラジオの場合は著作権使用料は不要。しかし、CDを取り込んで流した場合は必要というのは納得し難いでしょう。また、最近は高画質・高音質のオーディオ機器が家庭用として販売されています。そうなると一体どこまでが「通常の家庭用受信装置」に該当するのでしょうか? 音楽の利用形態の多様化、また家庭用機器の進化に著作権法が追いついていないため、利用者の立場からすると著作権法はますますわかりにくいものになっている気がします。

音楽の視聴方法に関する著作権
店内で音楽を流す場合、音源の種類によって関わる著作権が変わってくる。今回、法的措置を取られたのは、CDの再生とCDを取り込んで再生していた店舗になる ※放送番組がそのまま配信されている場合は(有線)放送と同じ扱いになります。
Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/

掲載号

Web Designing 2016年10月号

Web Designing 2016年10月号

2016年8月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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■ 特集:“小さく始める”オウンドメディアのつくり方

「ブランディング、集客、ひいては売上を伸ばすための施策としてさまざまな企業が実践している「オウンドメディア」。競合がはじめているから、いまの時流だから、自社の利益に繋がるならば、などとオウンドメディアをはじめようと思っている方も多いはずです。けれども「Webサイトをつくり、クオリティの高い記事を毎日更新していくのはムリ…」と思われている方、決してそんなことはありません。SNS、ブログ、自社サイトなど、すでにある“コンテンツ”を活かして自社の利益へとつなげることができるのです。オウンドメディアは、大きな会社だけのものではありません。予算をおさえながらも、大きな効果を生むオウンドメディアについてご紹介していきましょう。

第1部 効果的なオウンドメディアの制作→発信術

#新人まこちゃん、インターンとしてあのLIGブログに!
今さら聞けないオウンドメディア
#大事なのは「愛」と「戦略」
基礎の基礎から理解するオウンドメディア
#スピードこそが正義だ!
オウンドメディアは2週間で立ち上げよ!
#重要なのはアクションしてもらうためのスイッチ
“拡散”の秘訣は導きたい結果からの逆算
#スモールスタートで成果を出す
担当者ひとりでもできるオウンドメディアのはじめ方

#【座談会】担当者だから話せる“現場”の話
オウンドメディアの大変なこと、やってよかったこと

#構築後の改善アクションで、他社をリードする
「目標設定」と「効果測定」

#ふたたび新人まこちゃんが登場! 先輩オウンドメディアを紹介
あれも? これも!? オウンドメディア

第2部 事例から学ぶ“小さく始めて”成功する方法

【Case Study #01_河内屋】自社で運営するメリット
特殊印刷の事例で“魅せる”世界観を社内で発信

【Case Study #02_一俊丸】業界不振も、売り上げは2倍に
老舗釣船店メディア3つの掟

【Case Study #03 _Happy Maker!】自社の強みでユーザーとつながる
オタク向けに特化した婚活コンテンツ

【Case Study #04 _町田美容院の知恵袋】意外な手段で記事を量産
自前サイトで勝ち取った集客の極意

【Case Study #05 _SMASH WATCH】新たなコミュニケーション
ECサイトと連携したオウンドメディア
【Case Study #06 _箱庭haconiwa】Webのプロから学ぶ
共感を得る“好き”の気持ちとノウハウ
【Column】海外のSNSはいまどうなってる?
_オウンドメディア㊙記事“作成術”
_うまく活用したい補助金・助成金

■ WD SELECTION
マジョリ画/ Bascule Inc-βver. /ジムナストコロン/水曜日のカンパネラ OFFICIAL SITE/踏み台上等。dof のサマーインターンシップ/ユニコーンNEW ALBUM「ゅ 13-14」特設サイト/ ayanomimi /武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科/MIKIYA TAKIMOTOPHOTOGRAPH OFFICE - 瀧本幹也/ DeNARunning Club /ストリアクリニック/ illion"Water lily" Connected JamVideo / Gallery Site「SHINYA KIYOKAWA」/ ECHO 50V BATTERY SERIES

■ ビジネス・EC
□ ECサイト業界研究
「わさび式」記事作成法で集客力アップ!

□ モバイルビジネス最前線
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□ 知的財産権にまつわるエトセトラ
店内のBGMと著作権

□ Bay Area Startup News
ビットコイン技術で護るBlockai社の試み

■ マーケティング・プロモーション
□ データのミカタ
企業におけるクラウドの普及はどこまで進むか

□ デジタルプロモーションの舞台裏
面白法人カヤック:自らの強みを最大限アピールしたコーポレートサイト

□ 行動デザイン塾
オウンドメディアに求めたい「アクセシビリティ」

□ 解析ツールの読み方・活かし方
ベンチマーキングで市場を見ながら自社の評価を行う

■ コラム
□ One's View
今月のお題【オウンドメディア】
育てるための3つのポイント by 白井明子
オウンドメディアの副作用 by 土屋尚史
“リアル” な空間や体験の価値 by 峰松加奈

□ 未来食堂の「せかいと未来」
自ら発信するためのメディア

編集部よりお詫びと訂正のお知らせ

本誌P67「Case Study01 河内屋」記事内におきまして、誤記がありました。関係者の皆様にお詫び申し上げます。以下に正しい表記を掲載いたします。

× Web制作会社の(株)ナイルはコンサル事業を行っており
○ Webコンサルティング事業を行うナイル(株)が