2016.05.19
生徒の「わかった」をつくり出すまでの、これまでにない道のり プロトタイピングが変えたものづくりの現場
これまでにないデジタル教育コンテンツをつくり出す。ベネッセの意欲的な挑戦に協力したのはプロトタイピングを使って、斬新なものづくりに挑むtakramだ。その独特のプロセスには最新の課題解決のノウハウが込められている。
takram http://www.takram.com/
ベネッセコーポレーション http://www.benesse.co.jp/
デジタルならではの「わかった」をどうつくり出すか
教育や育児などの生活分野でさまざまなサービス、コンテンツを展開するベネッセコーポレーション(以下「ベネッセ」)。なかでも小中高生に多くの支持を受ける通信教育講座「進研ゼミ」が、この春からiPad学習を強化した「進研ゼミ+」として生まれ変わった。それに先駆け、2015年から受講生向けに提供している副教材的なコンテンツが、iPadアプリ「デジサプリ」シリーズだ。進研ゼミでは、これまでもデジタル化した教材を積極的に提供してきているが、デジサプリはそれらとはひと味違うものだという。
同社ハイブリッド講座開発推進部の前川靖博氏は、その違いをこう説明した。
「私たちがこれまで提供してきた中学生向けのデジタル教材は、『Challenge』などの紙媒体で好評だった内容をそのままデジタル化したものが多かったんです。しかし、iPadのようなデジタルデバイスが子どもたちの間でも広く使われるようになっていくに連れ、社内でも、デジタルだからこそできる教材を提供すべきではないかという問題意識が育ってきました」
「デジタルだからこそできる」とは、教材に動きや音を加えたものといったイメージだろうか。同社教材開発担当の永田幸樹氏は、それだけではないと話す。
「私たちが目指しているのは、そういったデジタルの特徴を駆使して、その教科全体に通用するような見方や感覚などのセンスを身につけられるものです。デジタルでしかできない、これまでになかったものをつくりたい、そう思ったんです」
前川氏はその「つくり方」に注目したという。
「新しいものを生み出すなら、そもそものつくり方から見直す必要があるのではないか、と。そこで注目したのが『プロトタイピング』なんです」
協力を依頼したのは、プロトタイピングに多くの知見を持つtakram。テーマは苦手とする生徒の多い「関数」。KPIは「ユーザーである生徒氏たちの『わかった』の一言」(前川氏)。takramはその課題にどう取り組んだのだろう。