2016.03.07
業界潮流、競合動向もまるわかり!「SimilarWeb」活用講座(3/3) Chapter03:SimilarWebプロ版を使いこなす
SimilarWebのプロ版では、さらに詳細の競合比較や業界のトレンド分析が行える。実際の使い方について、3つのケースを想定して解説していこう。
プロ版にアップデートするには
SimilarWeb無料版を利用したら、プロ版の機能も気になることだろう。同サイトにデモビデオの解説もあるが、ここでは実際のプロ版の画面を使って、具体的な使い方をいくつか紹介していきたい。それぞれの利用方法を自分の会社の業態などに読み換えてほしい。
なお、プロ版は基本的には法人向けに提供されているので運用価格は公開されていない。導入を検討するには、日本総代理店であるギャプライズに資料請求を行ってほしい(http://www.gaprise.com/)。初期費用は不要で、プロ版では同時ログインできない仕様となっている。
個人的な感想では大企業での運用に適したサービスだが、中小規模のWeb制作会社での導入も不可能ではない価格設定の範囲と思われる。Googleアナリティクスの運用をすでに行っているような制作会社やWeb担当者であれば、データ解析を強化する手法として導入を検討する価値はあるだろう。
また、データマイニングの技術を持っているのであれば、SimilarWeb標準のダッシュボードではなく自社で分析したい内容に最適化したカスタマイズや、その他の分析ツールとの連携も可能だ。そのためのAPIも用意され、さらにそのAPI内で行われる処理を通す前のRAWデータ(生のログデータ)も別途提供可能だ。
プロ版ならではの機能とは
基本的な調査カテゴリ項目は無料版と共通だが、直近3カ月までしか調べられない無料版に対して過去36カ月までのデータが閲覧できるなど、プロ版は制約が少ないので企業ごとのさまざまな利用スタイルにあわせた運用ができる。各項目も日本語化されているので、グラフやリストの意味も理解しやすい(01)。
さらに無料版との大きな違いとしては、近年急増しているスマートフォンやタブレットなどモバイル端末からのアクセスも解析できることや(02)、同時に5つまでのサイトを比較できる点などが挙げられる(03)。さらにWebサイト分析であれば、調査したいサイト内の人気ページのランキングやサブドメインのアクセスシェアなど、競合解析に役立つ強力なツールも多数備わっている。
業界分析を行うには
では、具体的な利用に沿って見ていこう。まずは、もっともポピュラーな業界分析の実践例だ。ここでは出版業界にとっては気になる話題である「電子書籍」の動向について調べるケースを想定してみた。
業界動向は専門誌など各種の調査データもあるが、インターネット利用者全体の調査は難しい。だが、SimilarWebプロ版であれば「業界分析」の項目から「電子書籍(e-book)」のカテゴリを選択するだけですぐにサマリーが一覧表示される。全世界だけでなく日本国内や比較したい別の国のデータに絞り込んだ表示もできる。これから海外に進出しようと考えている出版社が、相手国の市場規模や競合サイトの存在などを調べて資料を手早くまとめる、といった場合に参考になるだろう。
さらに、詳細なトラフィックデータの分析に踏み込めば、普段はなかなか気が付きにくいさまざまな事象をデータが示してくれる。例えば、国内のオーガニック検索キーワードを調べれば、現在放映中のTVアニメなどがいかに電子書籍への関心に影響を与えるのかといったデータが表示される。つまり、隣接する業界と相互に与える影響性なども分析できるわけだ。感覚的にはわかっていたことであっても、実際のデータの裏付けが示せるのであれば施策の提案などにも大いに役立つはずだ。
また、有料検索では通常取得できないキーワードのランキングも表示されるので、自社のSEO施策やリスティングの運用にも役立つ。
自社サービスの企画立案に使う
次に自社サービスの企画・運営を行う担当者の視点から、競合解析ツールの使い方を見ていこう。ここではGoogleアナリティクスなどを用いて自社のデータ解析はある程度行っている体制にあるという前提で話を進める。
例えば、ある商品の新しいキャンペーン施策を企画する際に「今までに(自社では)行ったことがない画期的な提案」であるのと同時に「効果が不透明だと実施できないので、KPIとなる指標と他社の成功事例を示せ」と矛盾するような要求を上司から求められて困った経験がある人も多いだろう。
当然のことながら、今までに実施したことのない施策は自社の過去ログを漁ったところで参考となるデータを見つけ出すことは難しいし、目標となる指標も曖昧になったり、根拠がないため「PVを倍増!」のような過度に高い数値を設定しがちだ。
こうした状況において、競合他社のデータを参照できるSimilarWebプロ版は役立つ。例えば、SNSや動画を活用したプロモーションで成功を収めていると思われる競合他社のキャンペーンサイトのURLを打ち込んでみよう。施策の開始から実際にはどの程度のPVが集まっているのか、利用者はどのSNSからどのくらいの割合で訪れているのかなどは一目瞭然だ(03)。メディアなどで話題になっていた割には、思ったより数値が伸びていなかったなどの背景事情も手に取るようにわかる。もちろん、そこで諦めずに、さらにそこからSimilarWebで類似性の高いサイトを検索して成功事例を集めベンチマークとなりえるサイトを設定しよう。
こうした競合の情報を裏付けとして得られれば、新しい施策ではどのような手を打つべきかといった提案が行いやすくなるし、他社の事例もグラフとともに添えれば説得力も増すはずだ。具体的な数値のイメージも湧きやすいので、訪問数にせよ商品購入率にせよ無理のない目標設定が行える。
さらに、競合の検索情報を保存しておく機能もあるので、施策を実施した後も継続的に推移をチェックしたり、さらなる改善につなげることも可能だ(04)。
営業活動やプランニングに利用する
Web制作会社視点からもSimilarWebのような業界分析・競合解析ツールは有用だ。一般的にクライアントは異業種であることが多いが、実際のサイト制作作業に入る前に業界の状況をおおまかに知ることができるのは大きな強みとなる。
そのクライアントの競合がどこなのかといった情報も得られるので、各種の提案も行いやすい。例えば「深夜営業の飲食店に訪れる人はカラオケ店の情報も探すことが多い」といった利用者の興味・関心のパターンを知っているのと知らないのでは、打てる施策の幅に差が生じてくる。
ここでは例として雑貨を取り扱うECサイトの改修をプランニングする際の使い方を紹介する。まずは、そのECサイトのURLを入力し、「競合を探す」機能で同カテゴリのランキングから上位のサイトを比較対象として登録する。調査期間を長めに取れば、そのサイトの伸び具合なども確認できる(05)。
ほかの事例と同様に、人気ページや利用者の興味を確認して、取り扱い商品やカテゴリ、特集記事など人気のあるコンテンツもチェックしたい(06)(07)。たとえ同じような商品を扱っていても、カートの遷移率まで分析できる。こうした離脱率の低いECサイトの設計は、改修をプランニングする際に大いに参考になるはずだ。
さらに、ECサイトごとに単独で検索すれば、ディスプレー広告のクリエイティブ施策などもわかる。バナー広告の実際のデザインだけでなく、広告を打ち始めた時期や掲載されていた期間、ランディングページがわかるだけでなく、時系列に並べることで広告の比較テストの実施状況やその効果の違いなども自社サイトの分析と同様に推測できてしまう(08)。ここから得られるノウハウも多いはず。
知っている人だけが得をする
ここまで競合解析ツールの利用スタイルを何種類か見てきたが、ここまでの情報がわかってしまうのでは、他人の答案をのぞき見するようで「ズルい」という感覚を覚えるかもしれない。今まで自分のWebサイトの情報は自分たちしか知り得ないのだと思っていたらなおさらだろう。とはいえ、SimilarWebはあくまでもWebで行われる視聴率調査のようなもので、利用すること自体に何らの問題もない。いまや国内企業が200社以上導入しはじめていることからもわかるように、存在を知っている人だけが有利に戦えるというツールだ。むろん第一義的には自社サイトの改善こそが優先課題だが、そのためにも競合解析ツールを賢く使うというサイトは今後増えていくに違いない。