業界潮流、競合動向もまるわかり!「SimilarWeb」活用講座(2/3)|WD ONLINE

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業界潮流、競合動向もまるわかり!「SimilarWeb」活用講座(2/3) Chapter02:無料版のSimilarWebを使ってみる

競合解析ツール「SimilarWeb」には無料版とプロ版がある。まずは無料版を使って、どのようなことができるのか、その概要を理解しよう。

SimilarWebでできること

では、SimilarWebでは実際にどのようなことができるのか、まずは無料版をベースに基本機能を見ていこう。同サービスへのユーザー登録は不要で、知りたい相手のURLを打ち込むだけでさまざまな情報が得られる手軽さが魅力で、「こんなに簡単に相手のWebサイトの情報がわかってしまうの?」とWeb解析の経験がある人ほど驚きを覚えるはずだ(01)。

情報はインフォグラフィックを多用したビジュアルレポートとして1つのウインドウ内に表示される。現在のところ無料版ではインターフェイスは英語だが、直感的に把握できるので問題はないはずだ。なお、レポートをPDFに書き出してメールに送る機能もあるため、提案資料としても利用しやすい。ただし、Webサイトの概要など日本語の部分は表示未対応だ。

01 使い方はとてもシンプル。「Websites」か「Mobile apps」を選択して、URLまたはアプリ名を入力して「Search」をクリックするだけだ。URLはインクリメンタルサーチで候補を表示してくれる

 

どのような情報が解析できるのか

Webサイト解析のレポートは8つの項目に整理されて表示される。最初に確認すべきは「Overview(概要)」の項目で、Webサイトの基本情報と関連するモバイルアプリ、世界と国内でのアクセス数ランキング、同社が独自に分類した業界カテゴリ別のランク順位も表示される(02)。また、直近6カ月のデスクトップからのトラフィック推移やエンゲージメント(滞在時間、PV数、直帰率)、直近3カ月のトラフィックの参照元(ダイレクト、リファラー、検索、ソーシャル、メール、ディスプレイ広告)などが表示される。無料版ではモバイルからのアクセスを表示しないので、アクセス数などは実態よりは低めに算出される傾向にある。

「Referrals(リファラー)」の項目では参照元の上位5サイトおよびディスティネーション(行き先)サイトが表示されるので、おおまかな利用者の流れが把握できる。

「Search(検索)」はオーガニックと有料リスティングの割合、それぞれの主要検索キーワードのランキング、「Social(ソーシャル)」は流入するSNS上位5番目までの割合、「Display(ディスプレイ広告)」では上位のパブリッシャー(出稿元)と広告を配信するアド・ネットワークの比率が表示される。

「Audience(オーディエンスの関心)」では、そのサイトが利用者からどのような業界カテゴリとして認識されているかという割合が表示されるので、Webサイト運営側のセルフイメージと照らしあわせてみると面白いだろう。

そして、同サービスの一番の特徴が「Similar Sites(似たようなサイト)」の項目だ。ここでは独自集計したスコアで類似性の高さとランキングを表示するため、意外なサイトが自社サービスの競合であったりすることが判明したりするはずだ。そのほか、「モバイルアプリ解析(Mobile Apps)」で関連するアプリについての情報も収集できる。

02 アクセス数のランキング、トラフィックの推移、参照元、ソーシャル、検索キーワード、類似するWebサイトの概要など8項目の大きなテーマから各データが一覧できる。さらに詳細なデータを見るにはプロ版が必要だが、概要の把握には役立つ

 

業界動向の把握にも役立つ

2つのサイトを比較する「Competitors(競合)」機能もある。自社サイトと競合関係にあるサイトを登録することで、両者のPVの推移を比較したり、リファラーの比率などを視覚的に見比べられる(03)。ここから利用者属性や行動パターンの共通性などを客観的に把握できる。

さらに、SimilarWebではさまざまな利用者動向から独自にスコア化してWebサイト同士の類似性を判定したり業界カテゴリ分けを行っている。ランキングは各カテゴリで上位50位まで表示され、このランキングを確認することで、自社や競合サイトが、現在どの業界カテゴリでどの程度の影響力を持っているのか理解できる。

03 特筆すべきは類似した性質を持つと思われる競合Webサイトを追加して比較できる点だ。無料版では2つを比較するだけだが、プロ版では同時に5つのサイトを比較できる

 

数値はどのくらい正確なの?

膨大なユーザーデータから推計された各種のスコアは100%正しいというわけではないが、統計的には一定の信頼性がおけるものだ。ただし、無料版のデータを参照する際にはいくつか注意する点もあるように思われた。

まず、前述のようにプロ版と異なりモバイルからのアクセスを集計していないので、実際のPV数よりは少なめに出る傾向がある。この数値の振れ幅はサイトがモバイルに最適化されているかどうかなどの要因によっても異なるようだ。

また、ITやWeb技術との親和性の高い業界では信頼性の高い結果が出る傾向にあるが、アクセス数が少ないサイトや官公庁などITとの親和性が不十分な領域では、データの少なさが原因で信頼性は若干下がると思われる。

いずれにせよ、参考として利用するレベルであれば問題はないだろう。そのほか、新規事業で競合の動向を探す際に利用することもできるが、まったく競合が存在しないものは解析に適さない。

なお、通常であれば知ることができないこれらの情報を取得するプロセスは、大きく分けて月間10億PV以上の「クローラー」のデータと、5,000近いWebブラウザのアドオン、プラグイン、アプリなどから取得する「クリックストリームデータ」の2つ。これを独自のアルゴリズムで解析しているという。取得したユーザーデータの総量は世界で毎日7,000万人分、毎秒4万5,000リクエスト、月間25億PVという膨大なもので、さらに世界約4万サイトのGoogleアナリティクスの連携データやISPデータも加味して各種のデータを推計している。

04 Webサイトの分析はデスクトップでは直近3カ月の流入元の比率が表示され、検索流入はさらにオーガニックサーチとペイドリスティングの割合、それぞれの主要検索キーワードなどが調べられる。また、SNSからのトラフィック、ディスプレイ広告の出稿元、オーディエンスの興味なども表示される
05 業界別、地域別の上位50位までの独自ランキングも見られる。原稿執筆時点では25の大カテゴリ、200以上の小カテゴリがあり、各業界の人気ランキングが簡単に俯瞰して把握できる
06 モバイルアプリの解析も行える。Google Play内で取得したデータが基本だが、iOSアプリの対応も検討しているようだ。ストアおよびWebからの流入経路など、興味深いデータが多く取得できる

 

掲載号

Web Designing 2016年3月号

Web Designing 2016年3月号

2016年2月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

デジタル時代の「リピーター&ファンを生む」新法則/SimilarWeb活用講座

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■ 特集:デジタル時代の「リピーター&ファンを生む」新法則
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「自社サービスのリピーターを増やしたい!」「自社商品のファンを生み出したい!」というのは、売上を安定して伸ばすためには欠かせない命題です。しかし、スマートフォンの普及でネットが当たり前になった「デジタル時代」の消費者動向は、以前とは明らかに変わってきています。では、この時代にリピーターやファンを生み出すには、どのようなポイントを押さえて施策を打っていく必要があるのでしょうか。リピーターやファンを生むために必要な「エンゲージメント」の仕組みから、実際の成功事例の考察まで、さまざまな切り口の「法則」を紹介していきます。

 Part1 デジタルサービスにおけるエンゲージメント向上とは
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  顧客がそのサービスを仕方なく使っている「悪い売上」
  単なるリピーターではなく、ファンをつくる
  顧客からの愛着度を高めるためには?
  よい体験を生むための重要なポイント
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 Part2 成功の理由はコレだ! エンゲージメント四賢人の事例分析
  Case Study 01 斬新なポイント制度でユーザーを巻き込むタイムズカープラスの戦略
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  Case Study 03 顧客満足度を高め継続性を促進するOisixのECショップ戦略
  Case Study 04 ワイン特有の悩みを自社の強みで解決する京橋ワイン
  Case Study 05 稼働率の上昇プロセスを重視するスーパーホテルの徹底的“おもてなし”

■ 集中企画:業界潮流、競合動向もまるわかり!「SimilarWeb」活用講座
 競合Webサイトを徹底分析して、自社Webサイトの運用・施策を改善しよう

Webサイトの運用では、アクセス解析と時流に即した改善は成果を上げるために必須のポイントです。また、自社Webサイトの分析と同時に、競合他社や市場トレンドの動向についても目を配る必要があります。ここでは、そうした分析を効率的に行える「Web競合解析ツール」の効果的な活用法について紹介します。

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■ ビジネス・EC
 □ ECサイト業界研究
 LTV(顧客生涯価値)――顧客エンゲージメントを高め、収益につなげる効果指標

 □ 月刊店舗設計
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 □ モバイルビジネス最前線
 TimeTree:今さら共有カレンダー? その成功に見る「チーム文化醸成」というグロースハック

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 人工知能に著作権は認められるか?

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 シンプルを極めた「Amazon Dashボタン」。IoT製品の成功は“一つにつき一つ”

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 来店につながる指標を見抜く! 集客型Webサイトにおけるアクセス解析データの活用

■ クリエイティブ・コラム
 □ ナビゲーターが選ぶ注目のデジタルコンテンツ
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■ インフォメーション
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編集部よりお詫びと訂正のお知らせ

本誌目次、WD SELECTIONにおきまして誤記がありました。お詫びするとともに、以下に正しい表記を掲載いたします。

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