2016.01.29
課題解決のためのUI実装講座 Web Designing 2016年2月号
Webフォントが普及しても、まだ手放せない画像テキスト(1/2) 画像テキストとWebフォントのメリットとデメリット
近年、日本語フォントでの表示スピードの向上やフォントの種類の増加により、Webフォントを使用するケースが増えてきた。とはいえ、まだまだ画像テキストを使用するケースは少なくない。今回は、Webフォントと画像テキストのメリット・デメリットを説明し、さらに画像テキストを用いたメニューを効率よく実装する方法を解説する。
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製品パンフレットや冊子などの紙媒体をデザインする際、どのようなフォントを使用すれば、製品の印象やサービスのメリットが読者により魅力的に伝わるのか熟考するだろう。ところが、Webサイトのデザインにおけるフォントの選択肢は少なく、デザインをイメージ通り実現するのは難しい。
そこで、Webサイトでも意図したフォントでデザインする手法として考えられるのが、画像テキストを使用したテキスト置換や、Webフォントだ。
Webフォントが普及する以前は、画像テキストを用いていたが、グラフィックソフトで書き出した画像を、HTMLに挿入し、altタグを設定するなど、実装するのに多くの作業時間を必要としていた。
一方、Webフォントでは、フォントベンダーのサーバにあるフォントファイルを閲覧者のブラウザにダウンロードさせて表示しており、実装の手間はそれほどかからない。
その他の両者の主な特徴を下図にまとめている。Webフォントは画像テキストのデメリットを解消してくれるだけに、近年ではWebフォントを使用したサイトが多く見られるようになった。画像テキストは不要の存在となっていくのだろうか?
[Case Study]今も画像テキストが制作現場で使われているワケ
両者を比較すると、Webフォントの方が実装コストの削減やアクセシビリティの確保といった面で優っている。しかし、制作現場では、画像テキストをデザイン手法としていまだに手放せない。それはなぜだろうか。
十分なコントラストを生み出せる
欧文と比べて、日本語にはイタリック体や大文字がないため、文字を視覚的に強調させる技法が限られている。そのため、文字の入力だけで生まれるコントラスト(対比)ではデザイン的に十分ではなく、多くの制作者は文字自体に装飾を加えることで他の要素とのコントラストをつけている。
たとえば、訴求対象者が女性や若年層の場合、手書き風のフォントを使ったり、マーカーで引いたような下線をつけるなど、文字を強調するエディトリアルデザインの要素を取り入れることで十分なコントラストを生み出し、ターゲットへ意図した印象を与えようとする。
このようなフォントへの強調・装飾は、デザイナーの自己満足というわけではなく、実際にクリック率、滞在時間、SNSでのシェアなどに影響してくるだけに重要なデザイン要素となる。そのため、Webフォントよりも画像テキストを使用することになる。
画像テキストの注意点
画像テキストを多用すると、ページの表示速度が遅くなったり、更新に手間がかかったり、アクセシビリティが失われたりすることを念頭に置いてデザインを考えなければならない。
「どこを画像テキストにするか」「どこをWebフォントにするか」についての正解はない。デザイン段階で閲覧者の環境や文字の更新頻度、与えたい印象などをトータルで考えた上で、サイト全体のルールを作っておくとよいだろう。