2016.01.23
One's View コラム Web Designing 2016年2月号
[Webサービス:Adobe Post]指先で創作する時代
4人のナビゲーターが、それぞれ自分のジャンルから一つの対象を選んで毎月紹介する「ナビゲーターズコラム」。選んだ対象の目の付け所や特徴など、わかりやすく解説してくれます。
「Adobe Post」は、写真の上にデザインされたテキストを入れて、手軽にカッコいい画像をつくれるアプリだ。このアプリの登場で、二つのことを感じた。
一つは、Adobeの思惑だ。ビジネスモデルをクラウド課金に切り替えてから大幅に増収したAdobeだが、このアプリには「焦り」が現れている。もともとプロ向けだった写真加工ツールは、ハードウェアの進化に伴い、もはやスマホにも裾野を広げている。そのため、ハイスペックな写真加工ツールよりも、Instagramのように「フィルタを選ぶだけ」といった万人向けの編集ツールのほうが社会的インパクトも大きいし、ビジネス的にも成功している。Adobe Postは、写真にデザインされたテキストが入れられることが特徴だが、それゆえにフィルタだけでカッコよくなるとは限らない。そういった機能をスマホで高精度で実現するのは難しいかもしれないが、プロ向けに特化してサービスを提供してきた巨人のマス向けシフトへの挑戦に期待したい。
このアプリから読み取れるもう一つのトレンドは、Webコンテンツの移り変わりだ。ブログに始まり、その後も進化を続けてきたCGM(Consumer Generated Media:消費者生成メディア)では、スマホの進化と爆発的な普及で、写真や動画といった「簡単に消費できる」コンテンツが主流になりつつある。それに伴って種類も増え、すでに飽和したかと思えた写真アプリ領域にも、Adobe Postが「デザインされたテキストが入れられる」機能に注目したように、まだまだ切り込む余地があったのだ。
この延長線上にある未来は何だろう。個人でも手軽にVR(拡張現実)動画を制作して音をつけたり編集できるアプリが登場してくるのではないかと思う。これまで消費が基本だったモバイル端末で、より高度な創作活動もできるようなトレンドが加速するのが2016年ではないだろうか。
【Web Service】Adobe Post