2015.10.23
Bay Area Startup News Web Designing 2015年11月号
カギの開け閉めをスマートフォンでワンタッチ!勤怠管理や入室者制御もできるスマートロック
海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。
あらゆる製品のデジタル化、IoT化が進む中で、いまだにアナログな“ドアの鍵”ですが、最近ではスマートフォンと連動させることで“スマートロック”化させることが可能になっています。スマートロックは、最も実用化が進んでいるIoT系プロダクトの一つで、既存のドアの鍵の部分にハードウェアデバイスを装着するだけで、スマホで開閉が可能になるという製品です。弊社btraxのサンフランシスコ本社オフィスも、このスマートロックを導入しています。
アメリカではスマートロック関連製品が多く登場していますが、その中で今回紹介するのは、btraxと同じオフィスビルの1階に入居しているAugust社の「August Smart Lock」です。これはオフィスのドアに取り付け、スマホのアプリ経由でスタッフに“鍵”を配布するだけ。リアルな鍵を用意する必要がないのは便利です。そしてこの鍵は、日時や時間を指定して有効にすることができます。例えば、常勤スタッフには24時間265日出入りを可能にし、清掃員には数時間だけ出入りを可能にすることもできます。来客のアポ等がある時も、来客者に事前にスマホ経由で鍵を配布しておけば、受付を通してセキュリティゲートを通り‥‥といった手間を掛けることなく訪問してもらうことも可能です。また、鍵を失くした場合や盗まれた場合にも、実際に新しい鍵を作り直す必要もなくアプリ上で削除や新しい鍵の作成ができるので、物理的な鍵よりもはるかに対応しやすいのです。
さらに、入居者のログデータが閲覧でき、いつ誰が開閉したかのデータが保存されるため、勤怠管理にも役立っています。
もう一つの特筆すべき点としては、一つのアプリで、複数のドアに設置されたスマートロックを開けられることです。アプリ内でいわゆる“デジタルキーホルダー”を所有でき、「このドアはどの鍵だっけ?」と慌てることもありません。もちろん、ドアごとに鍵を開けられるスタッフも設定できますし、別荘や共同で利用する施設のドアの鍵の開閉等にも大変役立ちます。
August社のCEOジェイソン・ジョンソン氏によると、実はAugust Smart Lockの心臓部分にあたるモーターは日本製なのだそう。彼によると、他の国ではマネできないようなクオリティのパーツが日本企業にはつくれると言います。そして、そんな優れたハードウェアとソフトウェアデザインを通じて、ユーザーに対しての価値を提供することに成功しています。
サンフランシスコでは急速に普及しはじめているスマートロック。日本での普及はセキュリティ面や法規の問題でもう少し時間がかかりそうですが、アイデア次第でさまざまな用途が考えられますね。

August Smart Lock

- Text:ブランドン・片山・ヒル
- 米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/