2015.09.21
One's View コラム Web Designing 2015年10月号
[IoT:mononome]IoT妖怪
4人のナビゲーターが、それぞれ自分のジャンルから一つの対象を選んで毎月紹介する「ナビゲーターズコラム」。選んだ対象の目の付け所や特徴など、わかりやすく解説してくれます。
子供達の間ではあいかわらず「妖怪」が大人気だ。我が家には二人の小学生がいるのだが、年がら年中妖怪の話をしている。思えば自分が子供の頃も「ゲゲゲの鬼太郎」が大人気で、空前の妖怪ブームだった。どうやら日本では定期的に妖怪が流行するようだ。その中には付喪神(つくもがみ)という妖怪がいる。モノは時間が経つと妖怪になってしまうってことらしい。日本には「モノに魂が宿る」という民俗伝承が広く信じられてきた土壌がある。
さて、今回紹介するIoTデバイスは、目の形をしたデバイス「mononome」だ。家具や家電(つまりモノ)に装着すると、中にあるセンサーでモノの動きを計測。モノを動かすと目の表情が変わり、スマホ専用アプリにモノの動いた時間や頻度が記録される。たとえば椅子に装着すれば「使われないと寂しがるイス」になる。「モノと人のためのコミュニケーションツール」であり、まさにモノに魂を宿すことのできるデバイスである。取り付けたモノの使われ方によってmononomeの反応は変わるわけで、大事に愛着をもって使うのと、乱暴に使うのでは反応も変わるだろうし、パターン数の少ない使い方(つまり癖のある使い方)をすれば、特徴的な反応になるだろう。人とモノとの関係性が可視化されることで、モノのキャラクターが浮かび上がってくる。優しい冷蔵庫もいれば、つっけんどんな冷蔵庫もいるだろうし、最初は1台1台違う性格だったものでも、データを集めて学習させていったら、冷蔵庫という「種」の性格なんかも浮かび上がってくるかもしれない。まさに冷蔵庫妖怪の誕生である。
今まで物語の世界の中だけだった付喪神やら妖怪やらが、最新のテクノロジーで生まれようとしているのだとしたらなんだかおもしろいし、こういう発想は日本発のIoTとしてユニークだ。世界でもいい勝負できるんじゃないかと思うのである。
【Internet of Things】mononome


- ナビゲーター:神谷憲司
- Creative Director/Creative Technologist (株)WHITE 代表取締役。(株)スパイスボックスで「プロトタイピングラボWHITE」を立ち上げた後、今年4月にはIoT企画会社となる(株)WHITEを設立。文化庁メディア芸術祭グランプリ、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル銅賞など、国内外の広告賞受賞歴多数。 http://255255255.com/