オムニチャネル~集客に必要なタッチポイント|WD ONLINE

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ECサイト業界研究 Web Designing 2015年11月号

オムニチャネル~集客に必要なタッチポイント

店舗やイベント、ネットやモバイルからリアルにネットなどさまざまなチャネルを利用し、あらゆる場所で顧客と接点を持とうとする戦略を指す「オムニチャネル」。ECショップの集客にはかかせないキーワードとなってきました。では、「接点(タッチポイント)を持つ」とは具体的にどんなことを考えていけばいいのでしょうか。

情報過多時代の集客

現在、「オムニチャネル時代」と言われるほど「オムニチャネル」というキーワードが飛び交っています。それは小売業やECショップ側の話だけではありません。ユーザーが買い物へ行く前にスマートフォンでお店を調べる、お店の中で写真を撮る、価格をチェックする、レビューや評点を見る、お店を出てネットで商品を買うという一連の行為はごく普通のことになっています。つまり、ユーザーがモバイルデバイスやネットを使うスキルが高くなり、「いつでも、どこでも、どの方法でも」が当たり前になっています。そう考えると、ECショップとしてこの「いつ」「どこ」「どの方法」においてもユーザーがショップ側のタッチポイントに触れることができるような仕組みづくりをしていく必要があります。

集客という点では、ユニークユーザー(新規のお客様)だけを集めるというより、1回または2回購入した既存のお客様の「集客の接客」を含めて考える必要があります。世の中にこれだけたくさんの情報が溢れていれば、競合他店の魅力的な情報をみつける可能性が極めて高いからです。

そんな中、まず頭に入れておくべきことがあります。それは、「EC利用時の情報源はどこか」ということと「カスタマージャーニー(お客様の導線)」の2つです。

まずはEC利用時の情報源はどこかというと、利用頻度の高い順から「クチコミサイト」「商品提供のホームページ」「インターネット広告」「検索」「レビューサイト」となっています(01)。

この情報源のデータは複数回答制で、合計で311%となっており、多くの人が情報を重複して使用していることになります。「商品・サービスに関する幅広い情報」「商品・サービスに関する詳細の情報」「商品・サービスに関する最新の情報」が得られるからという理由が目立ちます(02)。

つまり、ECショップはユーザーが参考にする「情報源」をいかに利用し、商品やサービスにあわせてどのようにユーザーをECショップへ誘導し、利用してもらうかを考えていく必要があります。それは、ECショップのリソースや売上・利益目標も影響するため、各ECショップにあわせた販売促進提案が必要になってくるということになります。

では、2つ目のカスタマージャーニー(ユーザーの導線)はどうでしょうか。オムニチャネル時代のユーザーの動きはとても複雑になってきています。テレビを観ながらスマートフォンですぐに検索して商品をチェック、各サイトのレビューや評点(レーティング)を確認、ECショップの企業を調べるなんていう行動は当たり前で、最近ではTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで意見を聞くこともごく普通になってきました。

いまや、ユーザーが接触するタッチポイントはいくつもあります。以前のようにメルマガを見て即購入という例はかなり減ってきていて、購入前に実店舗へ行ったり、検索でいろんなお店を見比べたり、口コミやソーシャルでのチェックが入るといったタッチポイントが複数で、購入までのプロセスが長くなっています。

01 EC利用時に活用する情報源
商品の情報を得るために、ユーザーはクチコミサイト、メーカーのホームページなどインターネットが中心になっており、その後にTV、雑誌、新聞と続きます (平成23年度我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)平成24年2月経済産業省)

 

02 複数の情報源から情報収集する理由
ユーザーは幅広く、より詳しく、最新の情報を求めていくつもの情報源を回り、購入すべきかどうか判断します (平成23年度我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)平成24年2月経済産業省)

 

メルマガからソーシャルへ

電通が提唱したマーケティングモデル「AISAS(アイサス)」をご存じでしょうか。図03は、「Attention(認知)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(行動)」そして「Share(共有)」の頭文字をとっており、インターネット普及時代の「消費者が商品を初めて知り、購入にいたるまでのプロセス」のことを指しています。

商品の存在をなんらかのメディアや媒体等で知って興味を持ったユーザーが、商品名や関連するキーワードを検索して情報を得て、商品の購入後、口コミやソーシャルメディアを通じて、商品の感想を発信したり共有しあう一連のプロセスということです。

しかしながら、オムニチャネル時代のプロセスは、「行動(購入)」前に口コミや「SNSで確認(ソーシャルチェック(Socail check)と仮称します)」している割合が50%以上と言われていますので、言ってみれば「AISSAS」へと変わっています(04)。

03 購入のプロセスモデル「AISAS」
電通の提唱した「AISAS」は、消費者が商品やサービスの存在を知る「認知」から、興味を持ち、情報を集めて購入し、満足いけばその情報を「共有」するという行動プロセスの流れを説明しています

 

04 ソーシャルが浸透し「AISSAS」に
現在では図03に加えて「SNSで確認する」という行動が加わっています。図は各プロセスにおいてタッチポイントになる可能性が高いショップ側の施策の代表的なものを挙げています。SNSは認知から共有まで一連の行動プロセスの至るところに浸透してきました

 

以前は購入の最後のひと押しをする手段としてメルマガが主流だったのが、クチコミやSNSになってきたことがオムニチャネル時代の大事な要素になってきたと言えます。このため、オムニチャネルでの集客は大きく分けて「認知」「検索」「ソーシャルチェック」と3つの行動プロセスに分けられます。つまり、興味を持ってもらうための施策として重要なのは、「商品やサービスの幅広い情報」「情報が詳細に掲載されている」「最新情報」ということになります。

では、オムニチャネルによる集客を「認知」「検索」「ソーシャルチェック」から考えてみましょう。

タッチポイントについて、スターバックス(以下スタバ)を例に考えてみます(05)。

媒体としては、PC、スマートフォン、タブレットがあり、それぞれブラウザとアプリに分けられます。ネット以外で考えれば、TVやラジオ、新聞、雑誌、実店舗、カタログやDMも媒体になります。

まず、スタバには実店舗があって看板があり、そこでお客様はその所在を知ることができます。店内に入ると、コーヒーを注文するカウンターにはメニューが置いてあり、そこには新商品の情報が記載されていますし、場合によっては試飲、試食が用意してあります。これらはすべて「認知」です。

そして、ひとたびネットを「検索」してみれば、スタバの情報が満載です。スタバで取り扱っている商品のメニュー、全国の店舗検索、最寄りの店舗へのアクセス、ニュースリリースおよび新製品情報、そして「ソーシャルチェック」するとWikipedia、Facebook、NAVERまとめまで検索結果画面最初の1ページがまるまるスタバの情報になっています。

また例えば、スタバのサービスの一つであるドリップコーヒーを注文すると100円でもう一杯購入できる「ワンモアコーヒー」やANAカードでマイルが加算されるカード連携は「認知」からSNSなどで話題になることによる「ソーシャルチェック」に繋がりますし、季節限定商品が購入できるオンラインストア、キャンペーン情報などのメール配信、会員限定コンテンツなども「認知」「ソーシャルチェック」の対象となります。このように、ユーザーがとるであろう行動、接触するであろう接点を研究したうえでサービスを展開しています。

05 リアルとネットのタッチポイント
スターバックスを例にとってみると、実店舗や看板などリアルにお客様と接するポイントと、ネット上で接するポイントを想定し情報を公開しています

 

一貫性を持ったアピールを

オムニチャネルを成功させるには、すべてのタッチポイントにおいて、一貫性を持ってアピールをすることが必要です。ECショップで言えば、ECサイト自体もそうですが、ユーザーへ送るメールそのものもタッチポイントですし、ダンボールやガムテープ、納品書やサンクスカード、保証書などの同梱物もすべてユーザーとのタッチポイントになります。どんなにかっこいいECサイトをつくっても、見栄えの悪いダンボールで届いたらショックですよね。ダンボールに足跡が付いているなんてもってのほかです。

このタッチポイントでの集客を考える時には、一つひとつで「認知」「検索」「ソーシャルチェック」のどこがどのように当てはまるのかを考える必要があります。例えば、ダンボールで認知、検索してもらえるにはどうすればいいのか、同梱物で検索、確認してもらうにはどうすればいいのかなどといった視点で考えるといいでしょう(06)。

あなたのお客様の目に止まるもの、そのすべてがタッチポイントであり、メディアであり、接客になるのです。そのすべてが集客に役立ちます。オムニチャネル時代の集客は、プロセスが長い上に、すべてのタッチポイントにおいて何度も「接客」をしなければなりません。

よくO2Oやオムニチャネルと言うと、ポイントやクーポンの話が出ますが、まずは集客時の接客ができていなければ話になりません。集客の仕組みを先に考えてみましょう。

06 各タッチポイントの「認知」「確認」「ソーシャルチェック」
ネットからリアルのタッチポイントについて、行動プロセス「認知」「検索」「ソーシャルチェック」のどの段階に効果があるかを簡単に表したのが上表です。ただし、アイデアによっては同じタッチポイントに複数の要素を付加することも可能です

 

Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。http://jeccica.jp/

掲載号

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