2015.09.11
拡大するEC市場。その焦点はどこに?●特集「EC再強化」
驚異的な成長を遂げ、瞬く間に我々の生活に浸透したネット通販(EC)市場。これからの成長を考えた時に、どこに注目すればいいのだろうか。まずは、今のEC市場の動向に注目してみよう。
大きな成長が見込まれる背景
「ピーヒョロロロー」という音とともに、インターネットのダイヤルアップ接続の商用サービスが日本で開始されたのが1993年。一般電話回線を使ったインターネットに接続することができるようになったのがこの年です。その後、Windows 95のリリース、時間限定ながらネット使い放題を実現した「テレホーダイ」、そして本格的な常時接続回線であるADSL、光ファイバーの普及と、徐々に社会的インフラが整備され、そして現在、内閣府調査によれば、スマートフォンの保有台数は100世帯あたり116.4台に達し(平成26年度)、1家に1台以上の時代を迎えています。もはや、インターネット利用はモバイル中心になりつつあるのです(01)。
このように日常的な道具になったスマートフォンで、ユーザーはさまざまなコンテンツやサービスを利用するようになっていますが、ネット利用の主な目的はというと「コミュニケーション」、「情報収集・コンテンツ利用」、「オンラインゲーム」、そして「買い物」です。2014年のネット通販流通総額は13兆円、通販化した比率は4.3%で、このまま推移していくと2018年には20兆円、通販化率6.5%にまで達すると期待されています(02)。
成長を牽引しはじめた食品・酒・飲料
このように発展を続けているEC市場における商品ごとの「EC市場規模」は03のとおりです。市場規模の大きな「衣類・服装雑貨等」「生活家電・AV 機器・PC・周辺機器等」「食品・飲料・酒類」、「雑貨・家具・インテリア」の4つのカテゴリーは、すべて市場規模が 1兆円以上。4カテゴリー合計で物販系分野の7割以上を占めています。
ただし、このベスト4の中で、「ネット通販比率(EC化した割合)」が高いと言えるのは、「生活家電・AV 機器・PC・周辺機器等」「雑貨・家具・インテリア」で、なかでも「食品・飲料・酒類」については、まだまだ低いというのが現状です。しかし、だからこそ伸び率が高く、いま最も注目が集まっている分野でもあるのです。
加工食品など長期間買い置きが可能な商品はECでの購入に向いていますし、高齢者人口の増加や内食指向、さらには個食化、共働きによる家事の簡素化・時間短縮、オーガニック、お取り寄せブーム‥‥といった社会背景やライフスタイル、さらには食に対する意識の変化にともなって、食品や飲料をECサイトで購入しようというニーズが広がっています。
なお、「食品・飲料・酒類」の市場は、国内の物販でもっとも大きなもので、60兆円以上と言われています。今後EC市場の中でより存在感を増すのは間違いのないところでしょう。