2019.11.18
実務ですぐ役立つデータの使いどころ パーソナライズを難しく考えていませんか?
CXを意識したとき、どのようにデータをつくり、取得して、活用するといいでしょうか? BtoB、BtoC問わず、さまざまな企業のマーケティング支援業務を手がけている(株)ジェネシスコミュニケーションに、実務につなげるためのデータの見方や考え方、活用方法について話をうかがってきました。
マーケティングに活用可能なデータを知る
「データ活用」を考えるときに、みなさんはどのようなデータを思い浮かべるでしょうか?
企業には、マーケティングに活用することができる、さまざまなデータが存在します。例えば、企業の商品やサービスを購入した顧客の属性や履歴情報(購買履歴・購入アイテム・お問い合わせ履歴)、反応・行動情報(サイトアクセスログ・メール開封/反応データ、キャンペーン応募データ)などがそうです。つまり、顧客についての理解を深めてマーケティングに活用していくための情報、いわば「宝の山」を企業は持っています。
企業にとって、商品やサービスを購入してくれるのが顧客です。そのため、顧客を深く理解することは、顧客がなぜ買うのか or 買わないのか、どうすれば顧客に魅力を伝えることができて、購入したいという欲求や行動を駆り立てることができるのかについて考え、実践につなげていくことができるようになります。
だからこそ、企業に蓄積されているデータを活用して、売れるための仕組み(マーケティング)をつくりあげていく取り組みが重要です。そこで、データを扱いたいなら、最初にデータの区分をしておくことをお勧めします。まず自社がどのようなデータをきちんと持っているのか、蓄積しているのかを整理していくのです。
さまざまなデータについて、最初に触れましたが、区分の観点で言い直すと、1つはマーケティングプロセスから生成され、獲得されるデータ。集客から見込み顧客の獲得、クロージング(契約)、顧客の維持などの工程で必要なデータのことです。
他には、「顧客データ」や「販売データ」。あと、メールや電話などの「レスポンスデータ」もありますし、Webサイトのログデータや行動解析データ、メール開封率などの「パフォーマンスデータ」もそうです。自社内で取得し、蓄積しているデータについて、区分や種類を明確にしておけると、データの扱い方や触り方が見えてくるでしょう。
マーケティング活用のために。何から手をつけるべきか?
データの区分やデータの種類についてまとめると、大枠が01となります。自社が取得しているデータについて、01の整理ができたら、次に何をするといいでしょうか?
「手元にあるデータを片っ端から分析していけばいいのか?」といえば、そうではありません。マーケティング活用をしていくこととは、顧客に関するデータに基づいて、適切なマーケティングアプローチを行い、顧客の態度や行動を変える施策を展開できる、ということなのです。
「新規顧客を獲得する」「既存顧客を継続的な購買に結びつける」「ロイヤルティの高い顧客をつくる」など、何に取り組むかによって、相手にする顧客は変わります。重要なのは、対象となる顧客理解を深めて、顧客の態度および行動変容のタイミングやきっかけ/要因(トリガー)を把握した上で、顧客への刺激の仕方や顧客アプローチを細かく設計することを目的に、データを分析することです。
例えば、見込みのある顧客の行動を分析するには「サイトアクセスログ」の分析が有効です。アクセスログ分析では、サイト来訪者や閲覧数、コンバージョン率の推移だけでなく、「どのようなキーワードで、Webサイトを来訪しているのか」「コンバージョンに至るルートや離脱傾向は、どのようになっているのか」など、行動傾向を捉えられるところまで広げて分析するといいでしょう。
顧客の取引実態を分析するには「売上データ」に着目し、売上総額や「何がどれほど売れているのか」を見るだけでなく、「どのようなタイミング」で、「どのくらいの頻度」で購入行動が起きているのかについて、顧客データとあわせて「どのような人が、何を買っているのか」などの「RFM(Recency /直近購入日、Frequency/来店頻度、Monetary /購入金額)視点」での分析が有効になります。
また、Aという商品を買う人はBという商品を買う傾向にある、という購入商品間の相関分析などを行うことで、A商品を購入した人にB商品をリコメンデーションする、という施策の展開も可能です。
データに基づきどのように施策を設計していくか?
データ分析から明らかにしたいのは、「顧客への適切なアプローチの仕方」です。顧客に対して「購入」という「行動を起こさせる」ためには、適切かつ継続的な接触や刺激が重要となるのです。人の価値観やモノが多様化する現在においては、「顧客にあわせたアプローチ」が必要です。そのため、どのような人に、どのようなタイミングで、どのようなメッセージやオファーで、どのようなデバイスや形態でアプローチするかを考えることが施策設計となります。
例えば、Webサイトにおける見込み顧客に焦点をあてる場合、1ページしか見ないで離脱した人も、数ページ~数十ページ閲覧した人も同じ見込み顧客となります。そこで、同じ見込み顧客扱いのアプローチを行わず、1ページで離脱した人には、新着情報やキャンペーン情報などをフックに、ポップアップやSNSなどを介して再来訪を促すアプローチを検討します。後者のさまざまなページを閲覧している人には、見込み度合いが高い顧客とみなして、資料請求やお問い合わせするメリット、購入客の喜びの声などの情報をWebサイト上で出し分けして行動を促す、という別のアプローチを検討することができます。
また、閲覧していたページ履歴やメール開封・反応の有無などに応じて、何を訴求するかを変えて、行動する確率を高めることも考えられます。
参考までに、さまざまな顧客をめぐるデータを用意できる場合、「キャンペーンマネジメントシステム」という仕組みがあり、特にECサイトに向いています(02)。キャンペーンとは、顧客との好意的な関係構築(Relationship)や、再購入(Repurchase)、長期的な取引の継続(Retention)を達成するためのマーケティング活動全般を指しての言葉です。企業が保有するさまざまなデータを横断しながらシナリオを設計し、設計内容にあったアウトプットで配信する仕組みですので、各種データがあれば、こういうことも考えられます。