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小川明久の将棋レポート 第3回 PonaX発売記念イベントの裏話「たかが握手 されど握手」

2014.06.06 | 

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■白黒付けたくない
 今回は6月3日(火)、マイナビルームで行われたPonaX発売記念イベントについて書いてみたい。
 このイベント、私が担当したのは公開対局とソフト購入者への特典会。公開対局にPonaXが登場するのは当然として、相手をどうするか頭を悩ませた。普通は激指13を指名するところだろうが、どちらも大事な商品。白黒を付けたくない、どちらが勝っても味が悪いという気がした。お客様からも「激指とPonaXどちらが強いのですか」という質問が一番困る。
 そこでひらめいたのが女流棋士を交えたリレー対局。PonaXとその読み上げ山口恵梨子女流初段、激指13とその読み上げ竹俣紅女流2級がタッグを組んだ。人間と機械のミックスマッチは恐らく初めての試みだろう。
 戦型の定まる30手までを女流に指してもらい、以後は2手交替で指し進めていく。コンピュータは検討モード(読み筋と形勢を表示する機能)を使用し、25秒の時点で考えている最善手をオペレーターが読み上げる。使用しているマシンが株式会社サードウェーブからお借りした電王戦モデルだけに、猛烈なスピードで手を読んでいく。激指13の検討モードはあっという間に七段レベルに到達するし、PonaXの局面探索数は瞬く間に1,000万局面を突破する。
 私は激指13のオペレーターを務めたのだが、途中で検討モードに夢中になり過ぎて、竹俣女流の指し手を読み上げるのを忘れるという失態を演じてしまった。
 
■理想の将棋観戦
 ニコニコ生放送では両女流の対局姿と長岡裕也五段の大盤解説が映し出されたが、会場では激指13の検討モードの画面も映し出していた。
 私はコンピュータの検討モードを見ながら、プロ棋士の解説を聞くのが一番面白いのではないかと思っている。数値で形勢が表示されるのはすっきりしている。公式戦のテレビ対局やタイトル戦の大盤解説会場でも電王戦のようにコンピュータの検討モードを導入してくれることを期待している。
 対局は初手から1手30秒、2手交替という変則ルールにもかかわらず、局面は1手を争う激しい終盤戦となった。最後は指運みたいに逆王手の筋が現れて激指13&竹俣チームの勝ちとなった。
 
■難解な終盤戦
 感想戦は短く終えたが、山口さんが「先に金でしたか?」と発言。図から△3九金と打てば▲同玉の一手。そして△7五馬なら▲同銀に△2九飛▲同玉△2八金までの詰みだった。
 本譜は先に△7五馬▲同銀としたので、△3九金は▲5八玉△3六角▲4七角(逆王手)で詰まない。それなら図は後手勝ちかといえば、激指は△3九金▲同玉△7五馬に▲3七銀で互角と読んでいた。
 恐らく番組を見ていたファン、会場に来てくれたお客様は、コンピュータも強いけど、女流も強いとの印象を受けたのではなかろうか。コンピュータと人間のリレー将棋、これから流行してくれればと思っている。
 
■特典会での一幕
 対局終了後はソフト購入者による特典会。この日は対局前には両対局者の写真撮影タイムを設け、ソフト購入者以外にも撮影できるようにしたが、特典会では両女流と一緒に記念写真の撮影ができる。
 また対局前の打ち合わせで、両女流との握手もOKになった。握手については将棋世界のふるてつ記者も書いていたが、ファンにはいい思い出になる。
 私が記憶にあるのは大内先生、米長先生、森内先生、先崎先生の4人。大内先生は大内名局集の打ち合わせの後、米長先生は世界コンピュータ将棋選手権の会場、森内先生は麻雀大会の打ち上げの後、先崎先生は職団戦でのサイン会の際。いずれも「握手してください」と言うのは照れくさかったが、そのときの情景まで鮮明に覚えている。ファンにとっては「たかが握手、されど握手」なのである。
 ということで、ソフト購入者は満足してくれ、私もうれしかったが、購入者のほとんどが長岡五段を交えた4人での写真撮影を希望した。また中には女流2人より明らかに長岡五段に力を込めた握手をした方もいた。打ち上げで長岡五段にその話をすると、「ちょっと、うれしかった」と笑っていた。
 
 またこんな調子でイベントを行いたいので、興味を持たれた方はぜひ会場に足を運んでください。
             (激指シリーズプロデューサー、PonaXプロデューサー 小川明久)