2018.11.09
地域別攻略(3)アメリカ編 情熱と緻密なブランド戦略で挑む マーケ先進国はグローバル市場で成功するための登竜門!
世界展開と聞いて誰もが最初に思い浮かべる国のひとつがアメリカではないでしょうか。アメリカでは、多様性やプロフェッショナリズムなどの違いから日本の業態や仕事の進め方がそのままでは通用しません。しかし、成功すればまさに世界へ羽ばたけるチャレンジしがいのある地域です。
挑戦者を受け入れる世界一のマーケット 成功は簡単ではない
アメリカと日本はビジネスにおいても多くの行き来があります。しかも事実上世界の公用語たる英語の世界なので、そのほかの言語の地域に比べて日系企業が目指しやすい国という印象もあるでしょう。しかし、まず知っておきたいのは「地の利」での障壁、そして現地の人件費など諸々のコストの点です。
オンライン上でのみサービスを提供するのであればよいのですが、物販やストア展開を考えている場合は、まず地の利の面で日本からは遠すぎるのが問題です。たとえ越境ECといっても、1商品ごと日本からコツコツ商品を発送していては時間的にも送料的にも高くつき、競争力が落ちてしまう商品が大半です。そうしたことがアメリカ展開を思い立った時点で意外と盲点になっている場合があります。もし本格的に販売を行いたいならば、現地に倉庫や製造場所などの拠点が必要となります。
次の問題はアメリカは総じてコストが高いという点です。日本と同じような生活水準の国と考えても、プロフェッショナルに支払うギャラは日本の同じ職種の人間に比べたら高目です。一言でいえば、起ち上げのコストはアジアで小規模な小売りを始めるのとは比べ用もありません。その数年分の起ち上げの出費を確保してでも進出しよう! という情熱と強い決心がアメリカ上陸へのファーストステップとなります。
日系の強みは「食」と「美容」技術力の高さや繊細さのイメージが活かせる分野
「アメリカには、日本製だからその商品を欲しいと考える人は基本的にいないと思ってほしい」と言う結城喜宣さん。アジアではまだ「日本製」が強い売りになる面があり、日本国内がインバウンドブームに沸いているため世界が「日本はすごい」と思っている感覚に陥りがちです。しかし、アメリカでは違います。
多くのアメリカ人にとって日本の存在は知ってはいても、基本的には極東の「遠い国」。憧れや具体的な知識を持つのは一部で、まったく興味がないのが普通と考えるべきでしょう。逆に日本製品だからという理由で売れないこともありません。本質的にバリューがあるものを買いたいという心理はむしろ強い傾向があります。
「もちろん、日本発のイメージをフックに成功するケースもあります。例えばラーメンブームはまだまだ続くでしょう」
アメリカでラーメン・レストランが流行りだしたのは2012年頃で、現在もブームが続いています。滞在時間が長く、日本より客単価が高いのも面白い点です。
「また、“KビューティからJビューティへ”というフレーズで、日本の基礎化粧品などが西海岸では人気を集めています」 これは、日本人の肌がきれいというイメージや、ハイテク技術で肌を変えるという信頼が価値を下支えしているようです。そのほかにも食品関連は引きが強く、肥満人口が少なく長寿という日本人のイメージが商品イメージを良くしています。ただ何事も「日本製だから良い」というセールス手法はNGです。技術や顧客にとってのメリットがハッキリわかるロジックを伝えることが重要です。
実際に「日本風」でいいなら韓国製でもベトナム製でもよく売れます。それを表しているのがアメリカの日本料理店で、日系オーナーの日本料理店がわずか10%以下という現実です(厚生労働省調べ)。「正統な本物」より「心地よくアレンジされた味」を好むのはどの国の人でも同じことと言えるでしょう。
なお、アメリカは地理的に広いためエリアを絞ってスタートするのが一般的です。東海岸はファッション、フード関連の進出が多く、ITや健康、食品、美容などは西海岸が多い傾向があります。