抜群の操作感と小資金でも利用できる仕組みで初心者の心を鷲掴みにした株トレーディングアプリ「obinhood」|WD ONLINE

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Bay Area Startup News Web Designing 2018年2月号

抜群の操作感と小資金でも利用できる仕組みで初心者の心を鷲掴みにした株トレーディングアプリ「obinhood」 データの見える化のその先へ

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

手数料ゼロで簡単株取引

スマホ一つあれば簡単に誰でも株の取引ができる、それも手数料は無料で。

そんな嘘のような体験を実現したアプリ、それが「Robinhood(ロビンフッド)」です。インターネットが出現してから株の取引もオンラインで行うことが増えてきましたが、最近ではスマホアプリでもそれが一般的になってきています。今回紹介するRobinhoodはそのような株取引アプリの中でも群を抜いてUXのクオリティが高く、取引手数料が無料であることから非常に高い人気を集めています。

シリコンバレーの中心地、パロアルト市にオフィスを構える同社は2014年にサービスをリリース。今までは株取引の手数料として通常7ドル~10ドルほど支払わなければいけなかったものが、無料で取引できるというトピックは大きなインパクトを与えました。その後現在までに200万人以上のユーザーを集め、リリース3年でこれまでに扱った取引額は実に750億ドル超。さらに会社の評価額は13億ドルを超えるユニコーン企業(投資家から、伝説の生物のようにまれで巨額の利益をもたらす可能性があると注目されているベンチャー企業)です。

Robinhood
手数料ゼロで利用できるサービスということで話題となった株のトレーディングアプリ。少額の取引からできるということで、米国の若い世代を中心に人気になりました
ブラッド・テネフ氏 Vlad Tenev
Robinhood社 CEO

 

ゲーム感覚で使える操作感

スタンフォード大学出身の若者2名がつくったこのアプリの未来的なUIのデザインは非常に斬新で、使いやすさを最優先し、機能面も極限まで削られています。

UXのクオリティの高さは利用してみればすぐにわかります。リストに掲載されている株式銘柄を選び、購入もしくは売却する株式数を入力、ボタンを上にスワイプすれば取引は完了。この一連の動作がすべて片手、それも指一本で行うことができます。株取引というと、今まではかなり複雑なイメージがありましたが、Robinhoodを利用するとそれがまるでゲームのように気楽に行うことができるのです。

さらにこのサービスは、掲げるミッションを「to democratize access to the financial markets」(金融市場の民主化)とし、社名としている中世イングランドの伝説上の人物であるロビンフッドが「貧しい人に富を分け与える義賊」であるように、所得が少ない人でも株取引ができる(利益をもたらす、そういったチャンスが与えられる)サービスをつくる、というところに端を発しています。

そこで、例えば口座開設に必要な預金の最低額をなくすことにより少額での取引を可能にし、預金の少ない人や初心者も簡単に始められるようにしました。

アプリの操作感だけでなく、想定するユーザーにいかに利用してもらえるかを考え実現したことで、それら一連のユーザー体験は主に若者層に支持されるに至りました。実際、同アプリユーザーの平均年齢は28歳で、ユーザーの25%が初めてトレーディングを行った初心者なのだそうです。

ちなみに、利用手数料を無料にした彼らがどのように収益をあげているかというと、「外国の有価証券での取引」「電信送金」といった、すでに積極的に株取引を行っているヘビーユーザーや投資の熟練者などを対象にしたサービスの利用で徴収しています。「資金の多い人が有利」と言われる投資の世界の間口を、見事に広げたと言えるでしょう。

アプリを起動すると、現在の資金やグラフ化された株価の推移など、自分のステイタスが一目瞭然。気になる企業の動きはリストで表示され、変動も色分けされてわかりやすくなっています。株を購入するには銘柄を指定して購入数を入力、上へのフリックで取引完了。複雑なイメージのある株取引が親指1本で完了してしまうユーザー体験はインパクトがあります

 

投資・運用の敷居をUXで下げる

ファウンダーの一人であるVlad Tenevは現在30歳。幼少の頃に両親と一緒にブルガリアからアメリカに移住した彼は、大学時代から若者の銀行離れ、証券会社離れに着目し、より簡単で早くそして経済的な株の取引を実現するのをミッションに親友のBaiju BhattとともにRobinhoodを立ち上げました。

しかし、スタート直後はそのコンセプトがあまりにも斬新すぎたために、投資家になかなか信じてもらえず、最初の投資を受けるまでに実に75回もピッチを行ったとのこと。そして現在では人気ラッパーのスヌープ・ドッグも彼らに投資した一人です。

フィンテック系のスタートアップを代表するようなRobinhoodの魅力は、やはりそのUXに隠されています。黒のバックグラウンドにわかりやすく値上がりは緑、値下がりは赤で示した高いデザイン性のUIは、モバイルアプリに不可欠な可視性が非常に高く、実際に使ってみるとその簡単さとわかりやすさで、ついつい利用してしまいます。

そしてその度に、お金を投資する、運用するといったユーザーの行動をアプリのUXが正しい方向に誘導する設計に感心させられます。今までは投資家が中心だった株取引の世界も、このような新しいサービスの出現により、心理的ハードルが下がり、より多くの人たちによって利用される可能性が高まっていくと考えられます。

Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/

掲載号

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2017年12月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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UXとはとても端的に言えば、ユーザー視点で設計やデザインを考えることです。マーケティングの世界は、ユーザーの心をとらえる「体験を売る」時代になり、ますますこの考え方が取り上げられるようになりました。ただ、「UX」という言葉が先行して、イマイチ何のことかわからない、理論はわかるけど実際にどこから手をつけていいかわからないという方も少なくないのではないでしょうか。

UXは闇雲に叫んでも成功するものではありません。そこには理論に基づく準備やプロセスがあります。
本特集を一通りお読みいただければ、無意識にUXの理論や見るべき視点、メリットや期待できる効果などが把握でき、みなさんのビジネスの現場で応用ができるようになることでしょう。

【段違いの成果が出るUXの「5プロセス」】

[1]心を1つに。
プロジェクトチームの意識共有を図ろう

[2]お客様を知る。
ユーザーの「ホンネ」や動向を知ろう

[3]商品を知る。
プロジェクトにおけるビジネス的課題を把握しよう

[4]理想を描く。
商品のあるべき姿を描き、実現のためのアイデアを練ろう

[5]つくる・見せる・話を聞く。
原型を部外者に試してもらい、反応を見よう


<こんな方にオススメです>
・UXをまずは何から始めていいのかわからない
・UXってデザインだけじゃないの?
・そもそもUXってなにがよくなるの?
・部署を横断して取り組むべきなのはなんとなくわかっているが、説得する自信がない
・理論だけではなく、現場で実践していることが知りたい
・Web解析時のUX評価方法や改善方法を知りたい
・UXの重要性をクライアント・上司に理解してもらいたい
・効率よく成果をもたらすためのテクニックを知りたい