走っただけ支払う自動車保険サービス「Metromile」|WD ONLINE

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Bay Area Startup News Web Designing 2017年10月号

走っただけ支払う自動車保険サービス「Metromile」 IoTで保険業界も変革の波

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

自動車保険は支払いすぎ!?

テクノロジーの進化で、現在最も大きな変革が生まれてきているのが自動車業界です。アメリカ西海岸を中心に自動運転やEV(電気自動車)、カーシェアリングなど、ここ最近で自動車を取り巻く環境が大きく変化してきています。そのような状況で注目すべき関連業種の一つとして、自動車保険が挙げられます。

当たり前ですが、自動車とは乗車して移動する、手段として欠かせないものです。ところが実際、自動車は平均95%の時間“動いていない”状態にあります。要するに自動車は、普段の生活の5%の時間しか稼働していないということになるのです。

例えば都会に住んでいると、便利な交通手段がいろいろと用意されているので、わざわざ自動車を使わなくても用が済んでしまうことが多々あります。それなのに、自動車の維持やメンテナンスにかかる費用を考えると、かなりの無駄が生じていると考えるのは当然の流れでしょう。それは自動車保険も例外ではなく、さほど自動車に乗っている時間や走行距離が長いわけではないドライバーでも、定額の保険料を払わなければいけないのは負担になります。

その一方で、UberやLyftなどのシェアリングサービスの運転手として働いている人たちの車両の稼働時間は、格段と上がっています。しかし、アメリカでは自動車の保険は走行距離に関係なく料金が決められるのが一般的で、登録時の年間走行距離もあくまで目安に過ぎません。要するに、今の保険は格一的であり、多種多様になってきたユーザーのライフスタイルに対応しきれていないということです。

この前世紀的サービスとも言える自動車保険に革命を起こそうとしているのが「Metromile」です。サンフランシスコ市内、筆者の会社btraxから3ブロック隣に本社を構えるMetromile社は、走行したぶんだけ保険料を払う「Pay-per-Mile」(従量制)というコンセプトの自動車保険を提供しています。

日本の自動車保険の中には「走る分だけ」を標榜しているものもありますが、これは走行距離に応じて定めたプランが用意されており、被保険者が最初にそのいずれかを選ぶという形式になっています。それも1つのアイデアですが、Metromileが提供する保険は真の「従量制」で、まさにその月に走った距離にあわせて料金が変動するというものです。

Metromile
専用のデバイスを自動車に取り付け、「走った分だけ」保険料を支払うシステムの自動車保険サービス。現在はカリフォルニア、ワシントンなど米国7州で展開。今後さらに拡大する予定
サンフランシスコ市内にあるMetromile社。夜になるときらびやかな電飾が注意を引きます

 

走行データでリアルタイムに加算

このサービスを可能にするのは、同社が開発した携帯回線とGPS搭載のデバイスです。まずはオンラインで申し込みを済ませると、自動車のダッシュボード下に差し込んで走行距離を測定する専用デバイス「Metromile Pulse」が数週間以内に送られてくるので、車両に取り付けます。

このデバイスを起動すると車両や位置情報を取得し、クラウドに送信します。クラウドに蓄積されたデータはその車両の走行距離だけではなく、車両の現在地、走った日時、ルート、そして移動した際のスピードなどの走行履歴までが細かく記録されており、それらのデータはWebサイトやアプリを通じてユーザーに届けられます。

そして、そのデータをもとに月々の定額の月額基本料金プラス走行距離に応じた従量制保険料がユーザーにチャージされる仕組みです。同社によると、走行距離が1万マイル(約1万6,000キロ)以下であれば、従来型の保険料より平均年間500ドル(約5万円)ほど節約できるとのことです。

今まさにどれだけ走って保険料はいくらになったのか。ユーザーは自動車保険がまるでスマホの利用料金のような感覚を覚えることでしょう。状況はいつでもWebサイトにログインする事で確認できるので、かなりの明瞭会計。毎月の保険料もアプリでチェックでき、どれだけ節約できているか随時把握できるというわけです。加えてエラーコードを読み解く事でその車両の状態も示してくれます。

また、Metromileが提供するユーザーエクスペリエンスはかなり画期的です。その一つが走行履歴。Webサイトでは自分の移動した道のりや距離が地図上に再現されます。さらにそれぞれの箇所でのスピードも表示されるので、ユーザーは自分がどの場所でどんな運転をしたか、どんな特徴があるかも一目でわかるのです。

 

IoTで新たな時代

Metromileは現在までに2億ドル強の投資を受けており、日本の三井物産もシリーズD投資ラウンド(ベンチャー企業に対し、ベンチャーキャピタルなどが出資する段階)で出資をしています。さまざまなサービスが体験型になる中で、これからは保険も新たな時代を迎える段階に来ているのではないでしょうか。

Metromile社が開発した専用デバイス「Metromile Pulse」。搭載されたセンサーで取得した走行データをクラウドに蓄積し、Webサイトやアプリでユーザーはいつでも状況が確認できます
左のデバイスを車のダッシュボードに取り付ければ、走行中なのか停止中なのかを自動的に記録してリアルタイムに保険料に反映していきます
Metromileは保険料の金額がわかるだけでなく、取得した走行データを地図上に反映し、走行履歴の詳細が見られるようにもなっています。走行した各地点での走行速度なども把握でき、新たなユーザーエクスペリエンスを提供しています

 

Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。サンフランシスコ、シリコンバレーを中心に、スタートアップの魅力をデザイン、ビジネス、テクノロジー面から解説します。 http://btrax.com/jp/

掲載号

Web Designing 2017年10月号

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2017年8月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

決済の改善は売上拡大に直結する!

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企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

10月号のテーマは「Webビジネスとお金」。電子決済やポイントシステム、はたまた仮想通貨で変わるビジネスの世界を追究します。



技術の進化に伴い、決済方法の多様化・自由度拡大により、ビジネスは大きく変わろうとしています。

①ビジネスのバージョンアップ
 ・新しい市場、新しいマネタイズ

②お金まわりに関わるコスト削減

これは、大企業がやっていることでウチのような中小企業には関係ない、で済ませて本当にいいのでしょうか?

さらに新しい技術の波(仮想通貨)が近い将来に確実に押し寄せようとしている中で、すでに波が来てしまってから慌てても遅いのではないでしょうか。そして、あなたのビジネスをさらにバージョンアップさせる可能性が眠っていないでしょうか?


本特集で、電子決済・電子マネー・そして仮想通貨という「これからの決済」を軸に、決済の進化があなたの(Web)ビジネスをどうバージョンアップさせるのか追究してみましょう。


●日本の決済の現状とIT技術進化によるビジネスの変化、中小企業にとってどんなチャンス(注意点)があり、どんな認識・準備が必要か

●データで見る、顧客の意識・利用調査、海外の現状

●身近な事例で見る、ITの進化で生まれた新しい決済方法

●決済の進化が変える<収益増大・市場拡大> 
 ・越境ECをメインに海外の状況、すでに日本で対応している例、これから小規模ビジネスでもビジネスチャンスを逃さないために必要なポイントなどを解説します。

●決済の進化が変える<買い逃し防止>  
 ・ユーザー側にすでに幾多の決済方法が用意されている現状で、指をくわえて商機を逃す(かご落ちさせる)わけにはいきません。業界、業態、商品によってどの決済方法は必須なのか、それによる費用対効果は?


●決済の進化が変える<マーケティング> 
 ・電子決済、Webマネーで期待できることとして、POSでは計れない購買データ、顧客データがマーケティングに活かせるというポイントがありますが、実際にはどんなサービスでどんなデータが取れ、それを何に活かせるのでしょうか。大手ペイメントシステム会社に聞きました。

●決済の進化が変える<業務効率化・コスト削減>

●決済の進化が変える<新しいビジネスモデル>

●決済サービスとセキュリティ

●ポイントシステム導入に必要なこと
 ・中小企業におけるポイントシステムの費用対効果は? ポイントは課税?非課税?など


●仮想通貨
 ・近い将来にやってくる、今まで決済の進化から考えられるビジネスのバージョンアップを現実のものにできるかもしれない、仮想通貨の基礎知識と、それにより具体的にどんなビジネスが可能になるのかまで言及します。