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Bay Area Startup News Web Designing 2017年8月号

Facebookが注目する360度カメラ【Giroptic】 Facebook社が注目! 360度写真が撮れるスマホデバイス

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

Facebook開発者4,000人に無償提供

4月の18~19日にシリコンバレーにて、Facebookが主催する開発者向けカンファレンス「F8」が開催されました。例年では、新たな機能のリリースやAPIの仕様変更などの発表が主な内容ですが、今年は一つ異なる点がありました。それは会場に来た約4,000人のオーディエンス全員に、とあるスマホ装着型のカメラデバイスが無料で配られたのです。

その無料提供されたデバイスというのが、「Giroptic (ジャイロプティック) iO」 。iPhoneのLightning端子に差し込み、専用アプリをダウンロードするだけで、一回のシャッターで360度写真を撮ることができるというもの。

最近Facebookに流れる投稿で、360度に動く写真を見ることがあると思いますが、このような写真をスマホを360度動かしたりすることなく一瞬で撮ることができるのが、Giroptic iOなのです。Facebook社のCEO、マーク・ザッカーバーグ自身が「これからの写真や動画は360度対応の時代だ」と公言していることもあり、いわばFacebook社イチオシの機能です。ゆくゆくはVR普及への布石になるともされていいるこのデバイス、製造販売しているのがフランスのスタートアップ、Giroptic社です。

今回のFacebook社とのコラボに至るには、Giroptic社のサンフランシスコ支社の功績が大きいと言います。実は、同社のサンフランシスコ支社は、我がbtraxが運営するコワーキングスペース「D.Haus」内にあり、お互いのスタッフ同士の交流も盛ん。そんなこともあり、今回は同社COOでアメリカオフィス代表を務めるパスカル・ブローシャー(Pascal Brochier)氏に話を聞きました。

パスカル・ブローシャー
Pascal Brochier Giroptic社COO、アメリカ支社代表
Giroptic
フランスに拠点をおく360度カメラのスタートアップ。「360cam」でクラウドファンディングサイト「Kickstarter」出資者を募集し、多くの指示を受け、140万ドル以上の援助を得ることに成功しました

 

「スマホでSNS投稿」を簡単に

Giroptioc社は2014年、フルHDの360度カメラ「360cam」をクラウドファンディング上で展開し成功、発売を実現させました。結局、散々ユーザーを待たせた挙句リリースしましたが、その直後に360camの開発を中止し、Giroptic ioを作り始めたのだそうです。その理由として、スマホとの連動を通じたリアルタイムシェアリングの必要性を強く感じたからでした。

今の時代、多くのユーザーが写真をスマホで撮り、すぐにアップします。そのエクスペリエンスを実現するために、Giroptic iOは開発されました。日本でも有名な「RICOH THETA(シータ)」も360度カメラですが、Giroptic iOは直接スマホに装着する点において異なる体験を提供します。もちろんTHETAの方が写真のクオリティは高いですが、総合的なエクスペリエンスとしては写真を取り込まなければならない分、リアルタイムにソーシャルと連動する点において面倒です。

具体的には、撮影した360度静止画・動画をスマホで視聴したりSNS上に投稿するにはカメラから転送しますが、データ量が大きいので、転送に要する時間が長く掛かってしまうのです。

また、スマホに直挿しするスタイルであることから、スマホのディスプレイを見ながらの撮影ができるという利点があります。スマホのディスプレイによるモニタリングは既存の360度カメラでも可能ではありますが、そのためにはカメラとスマホをWi-FiやBluetooth経由でペアリングしなければいけないというひと手間がかかります。しかもネットワーク越しなので、うまく接続できなかったり、タイムラグが生じたりすることもあります。その点、直挿しならそんな手間もストレスも起きません。

ほとんどの人がSNSへの投稿をスマホで作業し完結することを考えると、「スマホのディスプレイで見られる」「そのままSNS投稿ができる」というのは他の360度カメラにはない大きなメリットです。

4,000台購入したFacebookの本気

Giroptic iOは絶対的な写真のクオリティよりも、そういった総合的な体験を優先したそうです。このカメラで写真を撮ると、専用のレンズが複数の角度で写真を撮り、内蔵されているソフトウェアがその写真を縫合することで、360度ぐるぐる回すことができる写真が出来上がります。それをFacebookでシェアすれば、誰でも簡単に360度写真を投稿することが可能になります。より簡単に、スムーズにSNSへの投稿ができることを考えて作られたGiroptic iOに、CEOが「360度対応の時代」と公言しているFacebook社が関心を示すのは当然のことだと思います。

現にF8でのGiroptic iOの配布は、Facebook社が同製品を4,000台購入してくれたことで実現しました。彼らもそれほどまでにこのプロダクトに対して真剣だということがわかります。

実は近いうちに日本での販売が予定されており、より多くのユーザーに360度写真を撮ってシェアしてもらいたいと思っているとのことです。

「SNSへの投稿」のために開発された「Gioptic iO」。裏表に2つの超広角レンズを持ち、写真、動画はもちろんライブストリーミング配信にも利用できます。このSNSへの投稿に対するエクスペリエンスを追求した結果、Facebook社も関心を示し、同社の開発者カンファレンス「F8」(写真左上)にて参加者に無償提供されるに至りました
2014年にクラウドファンディングで商品化が実現した「360cam」。3つの光学カメラ、3つのマイクを搭載し、2K(1,024p)、4K(2,048p)画質で撮影可能。単体撮影可能ですが、Wi-Fiでアプリと接続し操作することもできます

 

Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。サンフランシスコ、シリコンバレーを中心に、スタートアップの魅力をデザイン、ビジネス、テクノロジー面から解説します。 http://btrax.com/jp/

掲載号

Web Designing 2017年8月号

Web Designing 2017年8月号

2017年6月17日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

反応ナシ、ネタナシ、元気ナシな企業Facebookアカウントを蘇らせる!

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企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

8月号のテーマは「Facebook」。
業界・業種問わずSNSのマーケティング活用が「やって当たり前」になってきた現在、
集客や認知拡大、顧客エンゲージメントの向上など、さまざまな目的でFacebookページを立ち上げ運営している方も多いと思います。
しかし、こんなお悩みもあるかと思います。

例えば、
「一生懸命書いて投稿しているのにユーザーの反応が薄い…」
「定期的に投稿するネタが思いつかない!」
「メインの業務ではないので、継続していく自信(モチベーション)がもはやない…」
「そもそも『いいね!』を増やしたところで何が起きるの!?」

いざ始めてみると、「想像以上に大変!」と思っている方もまた多いのではないでしょうか。

Facebook登場時には、とにかく「いいね!」を集めようと躍起になっていた方も多いと思いますが、
ユーザーのネットリテラシーが養われてきている今、「いいね!」のつけ方もFacebookの活用の仕方も変わってきています。
では、今ドキの目的達成・課題解決に役立つFacebookの投稿とは、どのようなものなのでしょうか。

今号は、すでに企業Facebookページ運用を始めてみているもののうまくいかない!とお悩みの方に、
実際の投稿内容の考えかたや日々のネタの作り方、モチベーションの保ち方など実務レベルで今日から役立つノウハウをご紹介します。

そして、Facebookのマーケティングツールとしての“現在の正しい活用法”を紐解いています。

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さらに!
企業の情報発信において、現在も今後もますます必須になってくる「コンテンツの信頼性」の担保についてもまとめました。
軽率な発言によって企業自体の信用も失いかねないほど重要な「信頼性」。
著作権から景品表示法、個人情報保護法など、Web担当者が把握しておかなければいけない規律や法律、そしてモラルはたくさんあります。
そこで、現場で忙しいWeb担当者のために「これだけは最低限おさえておくべき!」というポイントを
具体的な例をもとに優しい表現で説明します。

Webビジネスを展開する企業、担当者は避けて通れない問題ですので、ぜひお見逃しなく!