2016.10.31
知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2016年12月号
動画・画像の埋め込みとリンク ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~
身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。
著作権の成立している動画・画像を無断で掲載すると、原則として複製権や公衆送信権の侵害になります。しかし、無許可だとしても動画・画像のリンクを掲載するだけでは、無断掲載にはなりません。ですから、著作権侵害の責任も問われません。
では、動画の埋め込み(エンベッド)はどうでしょう。たとえばYouTube動画の埋め込みコードを自分のWebサイトに記載すると、同じ動画を掲載できます。この方法を使うと、外見的には自分のWebサイトに動画が掲載されているのと同じ状態となります。
もし、その動画が無断でYouTubeに掲載されていたものだとしたら、エンベッド掲載した人も著作権侵害の責任を問われるのでしょうか?
ある人が上半身裸でマクドナルドに入店した顛末を撮影した動画が話題になりました。ロケットニュースがその動画を記事内に埋め込んで配信したところ、それは無断でニコニコ動画に投稿されていたものだったため、撮影者が著作権侵害を理由にロケットニュースを訴えるという事件がありました。この事件で大阪地裁は、平成25年6月20日にその請求を棄却する判決を出しました。リンクを貼っただけの場合、動画のデータはロケットニュースのサーバに保存されたわけではなく、ニュース閲覧者が記事内の動画再生ボタンをクリックした場合も、ニコニコ動画のサーバから直接閲覧者へ送信されたものなので、動画送信の主体はニコニコ動画であって、ロケットニュースではないというのがその理由でした。これは動画の例ですが、写真の場合も同様に考えてよいと思います。このように動画や写真については、「違法に配信されたものでも、その埋め込みやリンク行為自体は問題がない」という結論になりそうです。
ただ、違法配信動画・写真の埋め込みやリンク行為は違法動画の拡散を助長することになるので、倫理的には問題があります。JASRACは、「動画投稿(共有)サイトでの音楽利用」の中で、違法配信されている可能性がある動画については、埋め込みやリンクを控えるよう呼びかけていますし、政府は現在違法に配信されている動画などを紹介する、いわゆるリーチサイトのうち、悪質なものを取り締まる法改正に向けた検討に入っています。少なくとも明らかに違法配信されていると思われる動画、写真については埋め込みやリンク行為は控え、著作権者からクレームを受けたら直ちに削除した方がよいでしょう。
ロケットニュースの裁判でも、問題となった動画が違法配信されたことを確認した時点で、ロケットニュース側がすぐにリンクを削除したことが、ロケットニュースの責任を否定する理由の一つになっていますので。