“カスタマー・ジャーニー”をどう考えたらいいのか?|WD ONLINE

WD Online

行動デザイン塾 Web Designing 2016年12月号

“カスタマー・ジャーニー”をどう考えたらいいのか?

適切なカスタマー・ジャーニーを描くことは、ペイドメディアをペイド以外のメディアとどう組み合わせて運用していくかをプランする上でも非常に有効だ。今回は「行動視点」でカスタマー・ジャーニーを考察する。
illustration:石川マサル(mi e ru)

カスタマー・ジャーニーの終着点をどこに設定する?

近年のマーケティング界では、次々と新しいキーワードが登場しては更新されていく。トレンドワードをキャッチアップしていくだけで精一杯だ、という声も耳にするが、重要なのは、そのキーワードの背景にある思想を理解することである。

数年前まで「タッチポイント」という用語がトレンドだった。「顧客の生活動線上にブランドと出会う接点をつくろう」という思想から生まれたものだが、運用の中で「メディアありき」でタッチポイントを設計しがちだった。そこで「メディアではなく、顧客ありき」という自戒の念から生まれたのが「カスタマー・ジャーニー」という発想だ。

ところが、その思想を十分に理解せず、単に「認知から検索、そして購買に至る」というAIDMA型※プロセスをカスタマー・ジャーニーと呼ぶ人が多い。生活者のジャーニーは1回の購買で完結するとは限らない。最終的に顧客をどこに導きたいのか、企業/ブランドのヴィジョンがゴールとなる。

01は「ダブル・ファネル」と呼ばれるモデルだ。左半分はいわゆるAIDMA型の、行動に至るまでのファネル。だが、そこが終点ではなく、むしろその行動体験を起点として、どう顧客の意識と行動が変化し、ブランドのファンに育っていくかという右半分の重要性を気づかせてくれるモデルだ。

01 「ダブル・ファネル」というモデル
ダブル・ファネルの右半分は、従来の「CRM」(顧客関係管理)の領域。これを左側の顧客獲得プロセス(パーチェスファネル)と連結し、一体管理する。しかし、実際に一体で運用するには、統一した管理指標をどう持つかという課題が残る

ある老舗ホテルは、顧客3代にわたる交流でカスタマー・ジャーニーを描くという。両親に連れられた幼い日の体験から、自分が大人になり、やがて祖父母として孫を連れていく。そうしたブランドとの絆(エンゲージメント)が深まるプロセスの想定が重要だ(02)。

02 ある老舗ホテルのカスタマー・ジャーニー
カスタマー・ジャーニーのつくり方に正解や一般解はなく、その企業/ブランドのヴィジョンに沿っていることが重要だ。顧客の人生の中で企業/ブランドとさまざまな場面で関わり、絆が深まる長い“旅路”が本義だろう

 

カスタマー・ジャーニーを360° × 365日で把握

適切なカスタマー・ジャーニーを描くには、360° × 365日で顧客行動を俯瞰するアプローチを推奨したい。一般的には「どう検索するか」「どう購買するか」「どう使用するか」というキー・モーメントにフォーカスして、そこでアクションプランを考えることが多い。

ここでは「買う→持つ(保管する)→使う→捨てる(交換する)」という全周的なサイクルで描くことで、今まで見過ごしていた行動チャンスを発見できる(03)。特に「持つ」「捨てる」は見落とされがちな行動だ。さらには1カ月、1年という長い期間で行動を俯瞰することで見えてくることもある。

03 360° × 365日の全周的な顧客行動
通常のマーケティングは使用行動や購買行動に意識が集中しがち。競合各社がまだ気がついていないチャンスを発見するには、生活者の行動を点ではなく、一連のジャーニーとして俯瞰的に観察・分析しよう

例えば入浴剤で考えてみよう。入浴剤は冬によく売れるが、夏場は浴槽にお湯を溜めずシャワーだけで済ます人が多く、入浴剤には厳しい季節だ。購買履歴を追いかけると、夏冬、同じブランドを使ってくれるロイヤルユーザーはいても、夏はまったく使わず、冬になると同じブランドに戻る“渡り鳥”ユーザーがいることもわかってくる。これも一つのカスタマー・ジャーニーだが、半年も間隔が空くと、再び確実に戻る保証はない。夏場にも施策を投入し、関係性を維持する方が効果的だろう。

そこで、猛暑の夏に入浴剤を売るために、まず浴槽を溜めてもらう行動をつくり出す必要がある。夏に人気なのはプールである。「お風呂を溜めよう」ではなく「ちょっとぬるいプールをつくろう」と読み替えることで、夏の入浴行動を活性化させることができるはずだ(04)。360° × 365日で気を配りながら思い描いたカスタマー・ジャーニーを実現するためには、こうした行動デザインが不可欠だ。

04 行動の乗り換え(=レーン・チェンジ)という考え方
夏に人気のない「お風呂行動」を動かすには、夏に人気のある行動=「プール行動」を活用すると効果的。こうした「近くにある別の行動」への乗り換えを、当研究所では「レーン・チェンジ」と名づけている

 

Text:國田圭作 Keisaku Kunita
博報堂行動デザイン研究所所長。入社以来、一貫してプロモーションの実務と研究に従事。大手嗜好品メーカー、自動車メーカーをはじめ、食品、飲料、化粧品、家電などの統合マーケティング、商品開発、流通開発などのプロジェクトを多数手がける。2013年4月より現職。著書に『「行動デザイン」の教科書』(すばる舎刊)。 http://activation-design.jp/

掲載号

Web Designing 2016年12月号

Web Designing 2016年12月号

2016年10月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

インターネット広告の費用対効果

サンプルデータはこちらから

企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

12月号の特集テーマは「ネット広告の費用対効果」。SNS広告やリスティング広告などの、少ない予算でも最大限の効果が期待出来る出し方、目的の設定方法、具体的な施策の進め方をゼロから解説します。

【Facebook広告】【Twitter広告】【Instagram広告】【リスティング広告】で宣伝・告知・PR効果を増幅しよう!

安価で、すぐに始められる広告形態として、インターネット広告の需要が高まっています。しかし、「かける費用に対し、どれだけの見返りが期待できるのか」疑問に思ったことがありませんか? 数あるインターネット広告の中で何が一番効果的で、どういった考え方で臨めばいいのか。本特集では、 Facebook 広告、Twitter 広告、 Instagram 広告、そしてLINE@とリスティング広告にフォーカスし「費用対効果」の視点から紐解いていきましょう。

 SNS担当者が体当たりでやってみた! “予算1万円”の広告で売上アップできるのか!?
 勝ちパターンで勝ち抜け! 費用対効果を高める「インターネット広告」
 費用対効果は何で評価していくのか?
 SNS広告の特徴と使いこなしのヒント
 [Facebook広告のココを理解せよ!]Facebook広告の2つの特徴とは / Facebook広告は「マッチング」広告だ / 「マーケティングの目的」に合わせた戦略策定を / 予算とPDCAの基本的考え方
 「ペルソナ」にフォーカスして進めるFacebook広告運用の新常識 「山田太郎ターゲティング」って何だ?
 [Twitter広告のココを理解せよ!]Twitter広告の強みを正しく理解する / 適切なターゲティングで費用対効果を上げる! / クリエイティブの基本と効果測定の考え方
 巧みなSNS広告運用でDAUが半年で5.5倍に
 [Instagram広告のココを理解せよ!]Instagram広告を実施するための基本 / Instagram広告の設定を理解しよう / 効果的な広告制作とさらなるビジネス活用
 これってどうする !? SNS広告現場の“困った!” Q & A
 [LINE@のココを理解せよ!]ゼロからのスタートでどこまでできる? / LINE@配信のコスト感を把握する
 運用効率バツグン!LINE@のリピーター施策
 [リスティング広告のココを理解せよ!]リスティング広告は集客ツールと自覚せよ / 算出したLTVを基に大海原に挑む / 集客後の「売り」と「リピート」がキー
 大手競合ひしめく化粧品市場、成功のカギは“待ち”の姿勢
 組み合わせで効果を発揮! 地域密着型ビジネスで使える、アナログ広告戦略

ほか