2016.06.21
行動デザイン塾 Web Designing 2016年8月号
その企画は「OK率」を確保できているか?
行動は、本人の一存で決められるとは限らない。相手の賛同(OK)が期待できないと、行動のもっと手前で、その選択肢は棄却されてしまうことがある。逆にOK率が高まれば、その分相手の行動の促進につながるのだ。
SNS社会の行動デザインはどうあるべきか
クリック、いいね、シェアなどのデジタル行動は、リアル行動に比べればエネルギーコストが低いので、それを誘発することは比較的、容易といえる。それだけに、SNS上の行動喚起だけでよしとしてしまうキャンペーンが多いのが実情だ。
もちろん、話題にならないより、なったほうがいいのは確かだ。話題拡散はリーチ量を拡大する。ペイドメディアでそれなりのリーチ量を獲得するにはかなりのメディアコストを必要とするから、ノンペイド(無償)でユーザーによる拡散を狙えるなら、それは費用対効果の高いマーケティングといえるだろう。
話題化したトピックスは、テレビのワイドショーなどが報道してくれることがあるので、さらにリーチ量を拡大できる。よくキャンペーンの成果として「広告費換算で1.2億円分のPR露出」といった記載を目にすることがあるだろう。それをKPI(重要業績評価指標)として依頼主と握っているケースもあると聞く。
問題は、本当に話題化できれば、それで行動が誘発できるのか、である。「意識と行動は必ずしも相関しない。いくら認知を上げても行動に移るとは限らない」が行動デザインの基本的な立ち位置だ。せっかくSNSを活用して話題化を狙うなら、どういう文脈が実際の行動につながるかをきちんと考え、その文脈を拡散/話題化させるというアプローチが必要だ(01)。
逆に拡散しても、実際に誰も行動しなければ、そのSNSマーケティングは無駄撃ちだった可能性がある。次から次へと新しい話題が更新されていく中で、一瞬話題になっても、生活者がその記憶をずっと大切にしてくれるとは限らないからだ(02)。
OK率を上げると相手は動いてくれる
行動は本人の一存で決められないこともある。特に旅行やテーマパークなど、家族や恋人などの連れ(相手)を誘っていくのが一般的なレジャー行動は、相手の賛同がなければ行動が成立しない。
そもそも、ある行き先を提案したときに相手がすんなり同意するかわからないのは、本人にとって大きなリスクだ。相手に「なに、それ? 意味わかんない!」と言われるかもしれない行き先は、最初から選択肢から除外されてしまうだろう。他に行きたいところがあっても、メジャーで無難な行き先に人気が集まるのは、そういう理由だ。
逆に事前にOKが出そうな確率(=OK率)が予測できれば、非常に相手を誘いやすい(03)。
サンリオが運営するテーマパーク「ピューロランド」が、昨年の夏から展開していた「ちゃんりお」プロモーションは、「ピューロランドに行こうよ」と連れを誘いやすい、「OK率」を高めるような施策になっていた(04)。
「ちゃんりおメーカー」というジェネレーターは、友だちや自分がサンリオキャラクターのようになりきった画像(アイコン)をサイト上で簡単に生成できる装置のことで、そこでつくったキャラクターはピューロランド内で展開されるバーチャルパレードに“出演”することが可能。また、ピューロランドに行かないと手に入らないレアアイテムも用意されていた。
先に連れのキャラクターをつくり、そのキャラクターを連れにメールやSNSで送っておいてから誘えば、かなりの確率でOKが出そうだ。実際、前年より来場者が一定以上増えたという。日本中でたくさんの“ちゃんりお”がシェアされていたSNS環境のおかげで、OK率が高まったのだろう。