2016.07.01
SNSで成果をあげる運用チームはこう作る その運用の仕方、間違ってますよ!
SNSを実際に扱うのは人。これからSNSマーケティングに力を入れていくにあたり、どんなチームを作り、どう運用すべきなのか。そのポイントとなる要素を3ステップで紹介したい。
Illustration:小平淳一
SNSを始めるならまず「発想の転換」を
これからSNSを使ったマーケティングに取り組もうと考えている企業の中には、行動をする前から「間違っていたらどうしよう」といった恐れにおののいて、身構えているところもあるのではないだろうか。そのリスク観点が間違っているということはないが、そういった考え方をSNSマーケティングの運用にまで拡大適用してはいけない。
筆者がこれまで見てきた失敗例としてまず挙げられるのが、あらかじめ設けた「上長の確認→許可が降りてから投稿」というルールにがんじがらめになり、何もできなくなってしまったケースだ。説明をしっかりしようとするあまり、投稿の内容がさっぱり理解できないものになってしまったというケースや、批判的なリアクションを恐れるあまりに、SNSの特性の一つであるユーザーとの対話を投げ出してしまったといった事例も、実は、その構造は同じだ。
あらゆる媒体の中でも、SNSは「ユーザーの反応を見る」というアクションが取りやすい。SNSで集客をしたいと考えるなら、その特性を活かす意味でも「失敗を防ぐ」のではなく、「反応を見てダメなら変える」という発想で、成果を設定し、運用スタンスを構築することが必要になってくる。
では「SNS広告における成果」とは何だろうか? 私としては「興味を持ってくれるユーザーの数を増やす」くらいに設定して取り組みを始めるのが効率的で無駄がないと考えているが、理想としては、価値のあるコンテンツをユーザーにシェアしてもらうことで広告費を使うことなく、情報が伝わること、または、自社SNSサイトのフォロワーを増やすことで、情報発信のたびに多くのユーザーが一気に拡散してくれる体制を手に入れる」ことにある(01)。これらいずれかを達成できれば、その結果として広告費を抑えても多くの人に情報を届けられるフィールドが手に入るのだ。
理解すべきはSNS広告の仕組み
SNS運用のよくある失敗事例が「SNSに詳しそうな一人の若手社員に丸投げする」というケースだ。これにはどんな問題があるかおわかりだろうか。
SNSはそもそも、ユーザー間で話題になっているものを大きく取り上げてコミュニケーションを活性化することを目的としているため、基本的に、単位時間あたり(大体30分~1時間くらい)のシェアや評価(「いいね!」など)数の伸び率が高い投稿を上位に表示するというルールが存在している。
これはSNS広告においても有効で、短い時間に、多くのユーザーがシェアや評価などのアクションを行った広告を、より多くのアカウントのタイムライン上で上位に表示するよう調整が行われる。つまり、ユーザーが反応を起こしはじめたタイミングに出稿額を追加できれば、よりCPA(顧客獲得一人あたりの支払額)を抑えた運用が可能になるのだ(02)。
考えてみてほしい。こんなにも重要な判断を、たった一人の若手に丸投げしてしまっていいのだろうか? そもそも「決済権」も「決定権」も持たない者が一人で頑張ったところで、ユーザーが反応を起こし始めたタイミング、言ってみれば「チャンスタイム」に反応して、即座に広告出稿を追加するなどといったアクションができるはずもない。もっと安く抑えられたかもしれない広告予算が、結局は無駄に消費されてしまうというわけだ。
SNSを成功に導くチームに必要なものとは
この事例からもわかるとおり、SNS運用にあたっては、担当者に予算の決済権と決定権を持たせた運用チームを構成することが重要となる。ユーザーからの反応に即時対応し、反響が大きいと判断すれば広告予算を追加、そうでもなければやめるといったような、高速でPDCAを回していくことのできるチームが必要となる。
これが、「週ごとにレポートをつくって振り返りや予算見直し」「個別の稟議申請をしてからの制作リソース確保」などといったやり方では、せっかくのチャンスを逃してしまう(03)。
ここでこれまでの話を振り返りつつ、SNS運用チームにはどんな人材が必要か、そして予算、権限についてどう考えるべきかをまとめてみよう。
•ある程度SNSを使っている(個人としてでかまわない)
•多少なりとも画像加工ができる(投稿において写真が重要なため)
•チームの人数は2~3名程度
•チームに週あたり○円までといった予算と、チームの判断で運用できる権限を与える
なお、コンサルティングやWeb制作会社の人間をチームに入れる場合には、彼らに丸投げするのではなく、アドバイザーとして横で見ていてもらう、といった立ち位置をとってもらうのが望ましい。ユーザーと正面から向き合うべきは社内の人間。そうでなければ社内に何のノウハウもナレッジも貯まらない。それどころか、最悪のケースでは、ユーザーの心理がわからなくなってしまう恐れすらある。
SNS広告はレスポンスが速い。つまり、続けるか変えるか? を判断するに足る情報が手に入るまでのタイミングが非常に短く、またかかる費用も安い。それこそユーザーが反応してくれるかどうかを見るだけなら、数千円程度で足りてしまうこともある。失敗を恐れるよりも、予算と権限を持った仮説検証を繰り返せる体制をつくり、ファンユーザーの育成を進めていくべきなのだ。そして、それに至る意識改革を進めること。それこそがSNS広告運用成功のための秘訣と言えるだろう。