2016.05.27
データのミカタ Web Designing 2016年4月号
メッセージングアプリがビジネスを変える データアナリスト萩原雅之氏による統計コラム
本誌のリニューアルに伴い、このコラムも「ハギハラ総研」から「データのミカタ」に衣替えした。最新の調査や統計を通して、少し先の未来を見通すお手伝いをしたい。
インターネット20年の歴史には、いくつかの大きなトレンドがある。デバイスはPCからスマートフォンへ移行し、ブラウザではなくアプリを利用する時間が増えている。だがスマホの小さな画面にたくさんのアプリアイコンが存在しても、使うのは限られたものだけというユーザーは多い。そこで次に注目されているのが、メッセージングアプリがさまざまな機能を取り込むビジネスプラットフォーム化だ。

出典:Statista「Most popular global mobile messenger apps as of January 2016, based on number of monthly active users (in millions)」
実際、「LINE」ではすでに銀行口座の確認やピザの注文、宅配便の再配達依頼などがトークのやりとりで完了できる。企業のデータベースとユーザーがつながっているからだ。トークの画面はECやコールセンターへの入口にもなる。
メッセージングアプリは世界中のスマホユーザーが利用する。欧米を中心に普及した「WhatsApp」のアクティブユーザーは9億人以上、中国の「QQ」「WeChat」や韓国の「KakaoTalk」のように、一つの国で圧倒的な存在感を示すものもある。
日本では、LINEが一歩先んじているが、利用者を二分するFacebook Messengerも「Bot Store」と呼ばれる自動対応でビジネス活用を打ち出す見通しだ。これがユーザー同士のメッセージングだけではなく、ユーザーと企業を直接つなぐチャネルになれば、多くのアプリは不要になるかもしれない。
メッセージングアプリの利用者獲得競争の次は、ビジネスプラットフォームとしての機能拡張の成否が問われる。ブラウザがそうだったように、限られた有力サービスに集約されることになるだろう。
- Text:萩原雅之
- トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/