2016.05.09
One's View コラム Web Designing 2016年5月号
【コラム】サービス開発は自らの課題から始める 今号のお題「課題解決」
さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。
今月のテーマは「課題解決」ということで、広いテーマ設定でどうしようかと悩んだ結果、弊社グッドパッチが開発しているプロトタイピングツール「Prott」について書くことにしようと思う。なぜ、このテーマでProttかというと、自社の問題を解決するために開発をスタートしたサービスだからだ。
今から3年前、グッドパッチは十数名の規模で、チームにエンジニアはおらず、デザイナーとプロダクトマネージャーしかいないという状況だった。アプリの案件は増えていたのだがエンジニアは社内にいないため、外部のエンジニアに開発をお願いしないといけなかった。そういった中で、アプリの案件を制作する際に大きな課題となっていたのが、エンジニアとのコミュニケーションだ。デザインデータと仕様書をエンジニアに渡して実装してもらうのだが、それができ上がってくると、自分たちがイメージしていたものとまるで違う。思い描いていたものをエンジニアに伝えようにも、自分たちで動く画面を実装することができないので、うまく伝わらず、プロダクトのクオリティが上がらない‥‥。そんな時にアメリカでローンチされたばかりのあるプロトタイピングツールを見つけ、それを使って大きな衝撃を受けた。そのツールを使うと、デザインの画像さえあれば、コードを1行も書かずに動くプロトタイプをつくることができるのだ。このツールを使い始めて、グッドパッチのデザインプロセスは一気に変わってしまった。デザイナーが簡単にプロトタイプをつくれるようになったことで、動くものベースで議論ができ、エンジニアとのコミュニケーションも改善したのだ。
しかし、私はここで満足しなかった。そのアメリカのツールはチームで使うことが考慮されておらず、自分たちであればもっとよいツールがつくれるのではないかと考えた。そして、もっと簡単にプロトタイプがつくれること、チームでコラボレーションが生まれることにフォーカスし、自分たちが追い求めるツールの開発スタートしたのである。
Prottを開発開始して2年半、正式ローンチして1年半が経ち、すでに世界140カ国のユーザーに使われるようになり、日本でもProttを取り入れた開発プロセスが広がってきている。自社の課題を解決するためにつくったツールが、このように多くのユーザーの課題を解決するツールとなっているのは非常にうれしい。サービスづくりにおいて、自らの課題を解決するところから始めるのは、とても重要なことである。