2016.04.01
モノを生むカイシャ Web Designing 2016年4月号
仲間たちと働き方をつくるカイシャ「シフトブレイン」
易きに流れるのではなく、時代錯誤なプライドを守り続けるのでもない。設立13年目のシフトブレインは、変わり続けるカイシャ。時代を半歩リードする彼らは、強くて、優しくて、カッコイイ!
Photo:合田和弘
あれから5年。世界へと向かう「日本発のデジタルクリエイティブ」
今回はちょっと、思い出話からはじめさせてください。2011年3月のこと。私は初めて地元を離れ、東京の会社で働くことになりました。春休みを利用しての大学生インターン。ド緊張しながら私が門をくぐったのは、当時原宿にあった「CINRA」という会社。そのCINRAと場を分かちあっていたもう1社が、シフトブレインでした。壁1枚もない空間で、私は東京デビューとともに彼らの仕事ぶりを目の当たりにしたんです。
当時、有名な広告仕事をいくつか進行させていたチーム・シフトブレイン。朝昼夜そして朝昼夜と、ビッシリと仕事に取り組む制作者たち。そこで起きたのが、あの大震災です。大きく揺れるビル、机にしがみつく私。そんななか横を見れば、揺れながらもプログラミングを書き続けるシフトブレインのエンジニアたちの姿が見えーー。
「これが、広告業界か‥‥」
そんな衝撃を抱えながら、ゆるふわ女子大生の私はまるで逃げるように関西に帰っていったのでした。あれから丸5年。取材に行ったのは外苑前の一軒家を改装した、あたたかなオフィス。「あぁ、久しぶりだね、なつかしいね」と笑顔で迎えてくれたのは、チーム・シフトブレインでした。なつかしい人も、初めましての人もいるけど、なんだか昔よりも柔らかく感じるのは、あたたかなインテリアのせいだけではないようです。社長の加藤琢磨さん、COOの仲村直さん、クリエイティブディレクターの鈴木慶太朗さんにお話を聞きました。
Company Profile
組織形態:株式会社
資本金:1,000万円
事業内容:インタラクティブに特化したプロモーションサイトの企画・制作および、ロゴ・タグライン等の企業CI、カタログ等のコミュニケーションツール、映像制作など、それらを包括したブランド構築全般
スタッフ数:19名(2016年3月現在)
設立:2003年11月
ーー超、お洒落なオフィスにお引越しされましたね! 洋館みたいな一軒家。素敵すぎです!
加藤:変わった物件ですよね。 80カ所くらい内見して見つけたのですが、大きく改装して一階をキッチンにしたり、二階を撮影スタジオにしたり。でも、ここに越して来てから、快適なのかみんな夜までオフィスで過ごす時間が増えたような気がして、それはマズいのかな?って(笑)。
ーーあれ、私が知っている5年前のシフトブレインさんは、いつも昼夜オフィスでお仕事をされているイメージでしたが‥‥。
加藤:あの頃は、そうですね。多数ある案件すべてにおいてクオリティは妥協したくないし、会社としても成長したい。その想いが強くなるあまり、スタッフには無理を強いてしまっていました。その限界に達した頃に、「もうこれ以上はダメだ」という状況に陥り、組織を見直す機会ができたんです。冷静になってあらためて周囲を見回すと、自分たちと同じフィールドには良質なものをつくる制作者がたくさんいたんですよね。そこで競争していると、間違いなく消耗して、埋もれていってしまう。だから「自分たちがやるべき仕事で、最高のクオリティを出していこう」と方向転換したんです。
ーーその方向で認知されていくのも、大変なことですよね。
加藤:つくってもすぐにお金がついてくる、というわけではないですからね。僕のやることはまず、銀行に相談することでした(苦笑)。あと、社長としてトップに立つのではなく、メンバーがいかに疲弊せず、クリエイティブに働けるかを考える役回りに徹しました。これは当時出会った、LETTERSさんやBEES/HONEYさんらの影響が大きい。僕より若い世代ですが、とても柔軟に組織をつくって、カッコイイモノづくりをしてるんです。
鈴木:加藤さん、変わりましたよね。僕が入社した2012年頃は、1ミリ単位で違うデザイン案をいくつも加藤さんに提出していたりしました。でも今は完全に任せてくれています。
OFFICE
外苑前の一角に位置する洋館。佇まいがとても素敵なオフィスです
ーー鈴木さんは日本で誰よりも早く、世界的なWebサイトのアワード「AWWWARDS」の審査員になりましたよね。
鈴木:海外のサイトをリサーチしてたら、クオリティの高いものにはリボンがついている。それがAWWWARDSの受賞マークだったので、自分がつくったサイトを勝手に応募しまくったんですよ。するといくつか受賞させてもらって、とくに2013年にローンチしたパナソニック「LAMDASH DNA」のサイトを大きく評価してもらえました。その後、審査員側にも声を掛けられたり、海外からの問い合わせが一気に増えましたね。
ーー海外のお仕事は、やりやすいですか?
鈴木:一概には言えないですが、クライアントは世界中のプロダクションの中からうちを選んで、声をかけてきてくれています。だからフラットな関係を築きやすい、というのはあります。
仲村:いまは毎日、海外からの問い合わせが来ているんです。でも、会社としてのインフラが整っていないと受けられないですよね。銀行口座や、時差や言語。時代の変化とともにインフラもどんどん変わっていく。僕らは時代にあわせて会社を変えている最中なんです。
加藤:鈴木を中心に、オランダのアムステルダムにオフィスをつくるプロジェクトも始まっています。鈴木はヨーロッパでの登壇経験もあるから、あちらとのコネクションも豊富。そんな窓口が現地にあると全然違うんです。
ーー正直、ひとり海外に行く鈴木さんのこと、うらやましくないですか?(笑)
加藤:うらやましいに決まってるじゃないですか(笑)。でも、日本でも外国人スタッフを積極採用して、全社員が外国人スタッフと英語ランチする仕組みをつくったり、キッチンスペースではプログラミングを学びたい外国人のための勉強会を定期的に行ったり。僕はまさに、インフラづくりの真っ最中です。「グローバル化」という言葉を使うのは、日本人くらいなんです。ヨーロッパでは、扉を開けば他の国。僕らもシフトブレインをそんな環境にしていって、「どの国からの案件でもストレスなくスムースに仕事ができる会社」と、質や経験も含めて認められるようになりたいですね。
CREATIVE
“らしさ”あふれる、シフトブレインのクリエイティブを紹介します
◎取材後記 本当の仲間たちとたどり着いた「働き方」の追求