2016.04.05
プロモーションの舞台裏 Web Designing 2016年4月号
ど真ん中の商品訴求でビール・酒類商戦を勝ち抜く
広告が敬遠されやすい昨今、このデジタル施策の訴求は、徹底した広告色、商品色。そこには、商品起点を外さず、練りに練ったPR戦略が潜んでいた。各社ブランドがひしめくビール・酒類商戦で生き抜くために、ついつい滞在したくなる広告キャンペーンを目指したという。
THE GOLD MISSION
※キャンペーン終了につき、現在、サイトは見られません
□クライアント:サッポロビール(株)
□企画/制作:(株)読売広告社、(株)読広クロスコム、(株)ワン・トゥー・テン・ホールディングス、(株)テー・オー・ダブリュー
前年比10%増、売上の加速に寄与
本施策「THE GOLD MISSION」は、サッポロビール(株)がコク系新ジャンルブランド「麦とホップ The gold」のWebキャンペーン施策として、2月前半と後半の二回にわたって展開。
第一弾では2週間で約58万PVを達成。また、PR施策全体の成果にはなるものの、2月上旬の売上も前年比10%増を記録し、確実な結果も残している(01)。コミュニケーション全体としては、Webに限らずマス施策を中心に、リニューアル発売前後で膨大な広告量を投下。交通広告も積極的に行った。
「コク系新ジャンルブランドとしての価値向上を目的に、2016年2月2日のリニューアル発売日を目指して、PR戦略を練ってきました。大きな軸は、売上増という目的達成を通じて、これまでの愛飲者に商品の価値を再認識いただくこと。そのほか、20~30代にリーチしきれていないというブランドの課題を、PRとプロモーション全体で解消したいという狙いもありました」(サッポロビール・豊田崇文氏)
「若年層を中心とした、テレビCMではリーチしにくい層に届けることを意識してプロモーションを設計しました。特にWebキャンペーンの結果は顕著で、参加ユーザーのうち、多くの割合が若年層という結果が出ました」(読売広告社、以下読広・山本絵理香氏)
徹底した「商品ありき」の施策展開
コミュニケーション全体には、「MISSION」というキーワードを選択。表現において、麦とホップを通じて何かを企てていくというトーンを出しながら、各出稿先のタッチポイントの特性に合わせた最適化がなされたという。「クライアントのブランドの中でも、新規な取り組みにチャレンジしやすいブランド」(読広・外山毅氏)という考えのもと、PR・プロモーション全体に共通するのが、徹底して「商品ありき」を意識した仕上がりにすることだ(02)。
「大前提として、広告に接したすべての方々が“麦とホップの広告”とわかる施策にしたい。ほかにも、“(麦とホップ)史上最大の麦芽量”というキーワードを用意して、商品がリニューアルしたことを強く訴求したい。そうしたPRを通じて、お客様が店頭で麦とホップを想起しやすくしたかったのです」(豊田氏)
「ブランド名が残らない、ブランディングに寄与しないようなPRやプロモーション施策は求められていませんでした。接触した誰もが“麦とホップの広告だ”とわかる形、それでいて接触したくなるような状況をつくり出すことが、企画チームの使命でした」(読広・戸川進之介氏)
2月2日のリニューアル発売にあわせて展開されたWebキャンペーンや屋外イベントは、表現から仕組みまで、どの側面を取っても、商品ありきのスタンスを曲げずに企画された。
2週間で58万PVを達成した背景
ではWebキャンペーン「THE GOLD MISSION」は、いかに「麦とホップ」の施策であることを鮮明に打ち出しているのか。キャンペーンの内容としては、約900字の商品メッセージに隠れた謎の美女を見つけ出し、美女から出題されるクイズに答えていくというもの(03)。
50問全問正解の中から抽選で1名に100万円相当のプレゼントや、正解数に応じたプレゼントを用意し、「広告への滞在」と「継続的な訪問」に狙いを定めた構成にしている。美女探しを通じて画面を拡大し、テキストに潜む商品名や“コク”などのキーワードも自然と目に入ってくるという設計は、ユーザーの操作に訴求要素を見事に絡めた仕上がりといえる。
「ユーザーと商品の関係を強固にするには、何度も体験したくなる仕組みが求められます。そこで、広告そのものをコンテンツにして、美女探しやクイズというゲーム性を盛り込みながら、広告への長期接触や継続的な訪問を促す仕組みを提供しました」(山本氏)
東京・渋谷パルコ前で行われた屋外イベントもしかり。目立つ装いも手伝って、イベントへの参加の有無を問わず、行き交う人々にとって目につく場(広告)になった(04)。
「Webキャンペーンの誘引策として、参加者には商品とともにリーフレットをお渡ししました。その週末は、明らかにPVがよかったです。こうした体験が多くの人の店頭想起につながればと期待しています」(読広・白石直己氏)
広告に長期接触を裏づける結果も獲得
THE GOLD MISSIONの第一弾がもたらした約58万というPVは、ユーザーの大半が若年層だったという属性分析も出ている。短期間で得た若年層中心のPVとして、豊田氏も一定の手応えを感じているという。また、ユーザーの訪問数をあらわす「セッション」数は約16.5万にのぼり、そのうちの約1万3,800セッションが10~30分という長期接触したユーザーであるという結果も出ている。
続く第二弾は、第一弾でファン化したユーザーに向けた施策として提供した(05)。
「限られた予算の中で、ファン向け施策が求められていました。そこで、第一弾でつくってきたシェアの仕組みを活用しながら、ファンを中心とした話題化を狙いました」(山本氏)
「こうした積み重ねによって、“次は何をする!?”という循環に発展させたかったのです」(白石氏)
1年の総売上目標数を達成するために、今回の追い風も後押しにしながら夏に向けて新施策も準備中と、最後に豊田氏は語った。本施策のような膨大な出稿量を実行できる企業は限られる。しかし、商品色を全面に出した広告でユーザーの長期接触や再訪問を引き出せるアイデアについては、参考にしたいところだ。