2015.09.19
月刊 店舗設計 Web Designing 2015年10月号
子供服・雑貨店「matao(マタオ)」|ファン5,000人以上を獲得するインスタグラムの写真演出&接客術 注目を集めるネットショップの集客術を知りたい
オリジナルブランドとあわせて、セレクトショップとしても展開する子供服・雑貨店「matao」。創業に先だって始めたInstagramでは、5,000人以上のフォロワーを集める。その写真の見せ方や接客方法など、ネットショップの集客へと繋げる秘訣をうかがった。
Photo: 五味茂雄(STRO!ROBO)
写真で魅力を伝えやすい商材と好相性なInstagram
mataoは、ハンドメイドで子供服を制作するオリジナルブランドの名称でもあり、国内外のブランドから仕入れた子供服や雑貨を扱うセレクトショップの名称でもある。小学校から専門学校まで同級生だった鈴木陽子さんと古家麻祐子さんが立ち上げた。最初は鈴木さんによる個人ブランドとして、古家さんがボランティアでお手伝いをする形でスタートした。
「専門学校卒業後、それぞれ別のアパレル会社で働いていました。私には7歳、古家は4歳の男の子がいるのですが、お互いに子育ての時期になって仕事を辞めて。私は編み物で服を作っていて、彼女はもともとバイヤーをしていて仕入れのプロで。一緒にやろうという話になりました」(鈴木)
2013年3月にInstagramのアカウントを開設し(01)、同年7月にハンドメイド作品に特化したマーケットプレイス「minne」に出展(現在はネットショップに一本化)。2014年4月に正式に2人で活動をすることになり、ネットショップを開設した。主にオリジナルブランドの制作を鈴木さんが、セレクト商品の仕入れとネットショップ運営を古家さんが手がける。
2015年8月27日現在、Instagramのフォロワーは5,327人にもなる。
「これだけフォロワーさんが増えたことには、私たちもびっくりしています。Instagramを使うことにしたのは、やっぱり写真が一番影響力があるから。FacebookやTwitterは見返すのが大変ですが、Instagramでは過去の投稿も一覧して見られますし。最初は鈴木がこれまで長男の太央くんのために作ってきたものや、これから販売していきたいというサンプルを少しずつ載せていったら、それを見た人から作ってほしいという声があって。注文してくださったお客様が、商品がお手元に届いたら写真を載せてくれて。Instagramはタグが付けられるのも良い点で、その写真を見たお客様のフォロワーさんがタグでmataoを知ってくれたり、セレクト商品を扱うようになるとそのタグでmataoで売っていることを知ってくれたりして、広がっていきました」(古家)
各商品自体の魅力もさることながら、写真のコーディネートが秀逸で、ブランドの世界観が出ていて、見るのが楽しい。
「海外のスタイリストさんやきれいな写真を撮っている人のInstagramをフォローしていたり、雑誌の物撮りページなどを見るのが好きなので、影響を受けているのかもしれません。商品の着用写真やコーディネート写真が一番反応がありますが、異素材をミックスするなどしてカジュアルになりすぎないように気をつけています。実は、撮影は全部iPhoneなんです」(古家)
Instagramを前提としたネットショップ
ネットショップは、一番上に大きく表示される写真が順次切り替わり、その下にお知らせや新入荷アイテムなどの写真が並ぶ(02)。「kids」「books」などのカテゴリー、あるいはブランド名から商品を検索していくことができる。
「基本的には利用しているネットショップ運営サービスのデフォルトのデザインなのですが、Instagramの写真が正方形なので、同じものが使えるように画像枠はすべて正方形にしました。ネットショップ用に写真を撮りなおしたり加工しなおしたりするのは効率が悪いですし、形が揃っている方が見た目にもきれいですよね」(古家)
「サイトに余計なものがない方が、アイテムの世界観が伝わりやすいと思います」(鈴木)
オリジナルとセレクト商品が混在していても統一された世界観があり、「mataoらしさ」という雰囲気を感じることができる。
「オリジナルブランドは、フランスやアメリカの輸入糸を使用して1点1点手で編んだ帽子などで、肌触りが良く発色が綺麗で独特な色使いをしている点が特徴です。ご出産祝いやギフトに大変喜ばれています」(鈴木)
「セレクト商品は、オリジナルのmataoの商品に合うテイストのもので、ヨーロッパの洗練されたウェアや洋書絵本、食器、知育玩具など、子どもたちが楽しく充実した時間を過ごし、成長できるものを取り揃えています。雲や星、月などモチーフを絞ることで、複数のブランドを扱っていても世界観が共通するようにしています」(古家)
セレクト商品の作家探しにも、Instagramが有効だという。
「Instagramで新しいブランドを発見して、直接コンタクトを取ったこともあります。仕事はほとんど、iPhoneで行っています(笑)」(古家)
ネットショップにおける接客と信頼
ショップ運営において、商品の魅力とともに接客が重要になるのは、リアル店舗でもネットショップでも変わらない。その方法の一つとして、mataoではInstagramでのコメントや質問にマメに返信をするようにしている。
「ネットショップって、店主の顔も見えないし決まった場所で営業もしていないので、得体が知れないじゃないですか。コメントで質問をしてもらったことにちゃんと答えていくことで、安心感や親近感を持ってもらえるようです。そういう意味では、Instagramでは対面販売に近い接客ができますね。売ったら売りっぱなしじゃなくて、お手元に届いたお客様の写真や感想を見ることができますし」(古家)
「Instagramにアップされているお子様の顔を見ながら制作できますし、気に入って着用している写真を拝見できたときはとても嬉しいです」(鈴木)
mataoの客層は小さな子どもを持つ20代後半~30代のママが中心。リピーターが多いとのことだが、こうした真摯な接客が寄与した面もあるだろう。
「送付時は丁寧にラッピングし、コーディネートのアドバイスやインテリア雑貨のレイアウトの説明文などのお手紙を添えています。ネットショップは直接接客ができないので、お手紙を書くことで少しでもmataoを近くに感じてもらえたら」(古家)
ところで、Instagramは日英バイリンガルで投稿しているが、海外で販売することについてはどのように考えているのだろうか。
「海外の方のフォロワーも多く、海外発送はできないのかという問い合わせもあります。もうちょっと子育てに手がかからなくなってきたら、海外通販にも挑戦してみたいですね」(古家)
国内外場所を問わずショップのファンになってもらえることも、ネットショップやInstagram活用の大きな利点と言えるだろう。
matao設立のきっかけになった1着
古家さんに松旺くんが生まれたときに、鈴木さんが出産祝いで贈った手編みのニット。帽子とセットでプレゼントされた。上品だが発色の良い色で、写真からも肌ざわりの良さそうな質感が伝わってくる。
「これがすごくかわいくて、絶対に世に広めた方がいいと思いました」(古家)
「古家にそう言ってもらい、mataoを始めることにしました。子どもが大きくなっても、とっておきたい洋服を作っていきたいと思っています」(鈴木)
Instagramにも着用モデルとして登場する松旺くん