2020.05.07
ユーザーリサーチの心得 目的なくして調査の意味はない!
このパートでは、企業(本誌の読者)が実際にリサーチを行うためのコツを伝えていきます。成功する調査を実現させるために必要な心得や考え方を、「リサーチの目的」「調査の方法」「設問の作成」「調査結果の活用」と、段階を追って解説していきます。
1.リサーチ前に課題を見極めよう
例えば、自分たちの会社で扱っている商品分野に対して、人々がそのカテゴリの商品をどれくらいの頻度で買うのか、どんな基準で商品を選ぶのか、どのようなメディアに触れて新商品を知るのかなど、ユーザーの消費・購買動向を知りたくなることがあると思います。しかし、特定分野のリサーチ結果が運良く手に入ることは稀。欲しいデータは、自社でリサーチする必要が出てきます。ここでは、何らかのリサーチをしたいと考えている皆さんに向けて、まずはどのようにリサーチをすれば良いのかといった情報や、上手なリサーチを行うコツをご紹介していきます。
「リサーチを行う上で最初に考えておくべきは、自分たちの抱えている課題を整理することです」
そう教えてくれたのは、株式会社ネオマーケティングの杉山太一さんと加藤賢大さん。同社は、消費者一人ひとりの分析から導く価値創造を重視し、インターネットリサーチをはじめ、グループインタビューや訪問調査などさまざまなソリューションを提供しているマーケティング支援会社です。
課題というのは、例えば、既存商品の売り上げが伸び悩んでいるので改善したい、広告や販促物の表現を練り直したい、新しい市場を開拓したいなど、リサーチの背景といえるものです。課題をハッキリさせることで、その課題を解決するために有効なリサーチ手法や設問が見えてくるといいます。
「リサーチをせずにビジネスの施策を行っても、それは勘に頼ったものになりがちです。リサーチをせずにビジネスを考えることは、いわば『地図を持たずに海に出ていくようなもの』といえるのではないでしょうか」
あるアパレルのショップで売り上げが減った原因をリサーチしたところ、そもそも狙ったターゲットが最初から来店していなかったことが判明した…というケースもあったそうです。そのケースでは、リサーチ結果を元に広告チャネルの見直しやメッセージの練り直しなどを一から行なったそうですが、思い込みでビジネス施策を行うことのリスクを示す、1つの好例だといえるのではないでしょうか。
2.調査の方法を考えよう
リサーチを行う上で考えられる手法は、いくつかあります。自社でSNSやWebメディアを持っている場合は、そこからアンケートに誘導するのも一つの方法ですし、自分たちで街頭アンケートを行ったり、イベント会場などで対面アンケートを行うといった方法も考えられます。また、調査会社に依頼する場合でも、インターネットを利用したネットリサーチや、ターゲットを特定の会場に集めて回答してもらう会場調査、郵送による調査、少人数でのグループインタビューなど、いろいろな方法があります。
それぞれにメリットとデメリットがありますが、まず考えるべきは、自社の力だけで調査するか、調査会社を利用するかではないでしょうか。確かに、自社メディアを活用して自分たちで設問を用意すれば、調査コストを抑えられるメリットがあります。しかしその場合は、まず十分な回答数が集まるかどうかが課題になるでしょう。
また、自社メディアでアンケートに答えてくれる人というのは、商品やブランドに対して好意を抱いている人が大半であり、ブランドの悪い点などの意見を抽出するのが難しいという側面があります。加えて、そのブランドから離れてしまった人の声を聞けないというのもデメリットです。
一方、調査会社の調査であれば、こうした自社メディアの限界もクリアできます。自社ブランドのファンだけでなく、競合ブランドのファンの声も聞けるのは大きなメリットになるでしょう。
なお、リサーチの手法には大きく分けて「定量調査」と「定性調査」という2つの手法があります。定量調査とは、インターネットリサーチなどで回答結果を「量」として捉える調査のこと。スピーディに実施できる点やユーザー動向を「量」として分析できるのがメリットですが、用意した設問以外のことは聞けないのがデメリットです。
一方の定性調査は、インタビュー調査などを通じてユーザーの意見を深掘りできる調査手法です。例えば既存商品の売れ行き改善が目的の場合、なぜ伸び悩んでいるのかは定量調査ではなかなか見えてきません。定量調査と定性調査の両方を組み合わせて調査することで、より改善に役立つ調査結果が得られるようになります。