2019.10.29
生活者目線で探したい最適なタッチポイント 体験が重要視される背景を理解しよう
博報堂DYグループでは、「消費者」ではなく「生活者」という視点で捉え、生活者のさまざまなタッチポイントのあり方を模索しています。そこで、生活者と成果物やサービスとの考え方について、博報堂アイ・スタジオのUXデザインチームに話を聞きました。
1. 時代や技術の進化で変わる生活者のあり方
重視すべきはあるべき姿に迫ること
博報堂DYグループでは、「生活者」という言葉をよく使います。例えば、消費者や顧客、ユーザーといった、商品やサービスに対してのニュアンスだけでなく、生活全般に対する一人の人間、主体として捉えるために、意識的に生活者という呼び方をしています。ここでは私たちも「生活者」という言葉を用いながら、生活者を巡るタッチポイントのあり方を考えたいと思います。
昨今よく耳にする言葉の1つが「CX」、つまり顧客体験です。このCXは、マーケティング文脈で語られることが多い言葉だと思っています。特にナーチャリング(育成)を意識するとき、例えば見込み顧客へのアプローチについて、さまざまな取得データから反応の高いアクションを割り出して、より反応がある点に施策を集中させる。これはこれで大事で、やるべきことです。
一方で、私たちUXデザインチームは、似て非なる領域に着目しています。CXでは、定量データを通じて確率の高いコンテンツを割り出して、アド(広告)や記事に寄せていくというやり方がありますが、UXデザインは「そもそもコンテンツだけでなく、情報提供の方法そのものを考え直す」という業務です。一般的に前者が事実に基づくデータ分析が中心で、後者はデータでは割り出せない領域を扱うので、定性調査を通じて「最適な情報接触の方法とは?」を考え、生活者が「なぜ動くのか」「何をどうしたいときに買おうとするのか」などを地道に探りながら、行動の理由の源に迫る作業を行います。
生活者の立場となって、生活者がより「体験」したくなることを提供したいと考えるなら、定量データでできることとともに定性データでないと踏み込めないことの両面にリーチしてほしいと考えています。
ここからは、定量データの大切さを踏まえながら、定量データを重視するあまり意識がなかなか向かない定性データの大切さについて一緒に考えていきましょう。
デジタルの浸透と技術の進化が個人情報の扱い方を変えた
生活者を巡る状況について、大枠を整理しなおしてみます。ほとんどデジタルが生活に関係がない時代から、徐々に企業がWebサイトを用意しておきたい(用意できていればいい)という、1990年代後半~2000年代初期あたりの黎明期の時代へと移り、見た目をよくしたい、さらに踏み込んで使いやすさといったUIからUXへとデジタル体験の関心も変わりました。
今では、見た目が良くて使いやすいのは当然で、強く成果が求められる時代です。時代とともに、生活者のデジタル利用の頻度が格段に高まったことと関連しますし、デジタルでの検索や事前の調査の回数が増えて日常化した分、相対的にリアル店舗へ行く回数が減る、といった生活者の習慣の変化を挙げることができます。
デジタルを巡る生活者の今の状況は、個人が企業サイトに会員登録するハードルがとても下がっている、ともいえます。インターネット上では自分で情報を探し出せる状況が整っていて、生活者は自分にあわせた情報を見ること、パーソナライズされた情報の取得が当たり前になってきています。YouTubeやInstagramなど各種SNSや共有サービスも、情報収集の場として利用されていますし、各種SNSのソーシャルログインによって自分のアカウント情報を提供することも当たり前となっています。
もちろん、生活者はデジタルだけでなくリアルでも行動します。生活者に迫るためには、デジタルやリアルを巡る時代状況や技術の進化も踏まえて、日常的な生活者の体験や行動が変わっていることに意識を向ける必要があります。