2019.10.31
生活者の「なぜ」と向き合う重要性 もっと定性調査を取り入れよう
顧客の行動と行動の間にある背景を知るためには、自社で取得できる定量データだけでは限界があります。顧客を知るためには、デプスインタビューなどの定性調査も大切です。その重要性について、博報堂アイ・スタジオのUXチームに話を聞きました。
行動の背景や理由に迫る定性調査にも時間をかけてほしい
Googleアナリティクスなどの分析ツールにより、いまや自社に関わるデータは、デジタル上だけでも取得しやすい時代です。定量データの分析は大事だからこそ、定量データで取得できないこと、定量データだけではわからないことを追求していくことも、生活者理解には不可欠です。その観点から、私たちは定性調査にも重きを置いて、デプスインタビュー(対象者との1対1の面談)などをまとまったボリュームで行うことで、あらかじめ立てた仮説を検証しますし、調査後の分析にも力をかけます。
つまり、定性調査も充実させて、生活者のコンテキスト(文脈)とニーズの理解を深め、生活者に求められる最適解を導きやすくしています。デジタル体験と考えるなら、画面やスクリーンをつくること、と置き換えている人たちはいますし、体験の一部ですが、すべてではありません。データが連携できていないオフラインの行動や、行動の裏側のコンテキストも加味するべきなのです。
定量データは行動の結果を示すデータですが、データ自体が行動の理由を明らかにするわけではありません。生活者の体験に即した成果物を、と考えた際に、理由を探るアプローチとしてデプスインタビューなどの定性調査にも改めて着目してほしいです(01)。
「なぜ?」を突き詰めないと次の一手が打てなくなる
自社のWebサイトにおける行動データによって、離脱が際立つページがわかったとします。自社サイトで取得できる行動データによって見えてくることは、離脱したという「事実」です。離脱が多いことはわかるけれど、その事実以上のことはわからないので、離脱している理由を突き詰める必要があります。行動データだけを見ていても理由は見えづらい。なぜなら、理由はポジティブにもネガティブにも考えられることが少なくないからです。
該当するページが見づらくて離脱したかもしれませんが、それ以外にも理由は考えられます。見やすくていくつか気になる箇所を見ていた挙句、探しているものが見つかったから離脱したのかもしれませんし、一通り見終わったからたまたま離脱したのかもしれません。何となく遷移してきて、頃合いよく離脱しただけかもしれません。際立つ離脱となると、たまたまなどの要因が多数重なることはないかもしれませんが、解釈によって、どうにでも考えられてしまいます。行動データの読み解きだけでは限界があって、わからないことはたくさん残ったままということです。
例えば、コンテンツAを訪問したユーザーはコンバージョンレートが高い、とデータで確認できたとします。高い事実はわかるけれど、データだけではユーザーに響いている理由はわかりません。理由を突き詰めないままでいくと、徐々にA経由のコンバージョンレートが低くなってきたとき、Aの展開案をつくっても結局低いまま、ということがあります。実はAの中に内包している要素Xが効いていたためにレートが高かったとしたら、Aの展開案にXの良さがなくなっていれば、Xを受け継がない別物になった展開案にいい反応は示されないでしょう(02)。ウケていたのはAではなくXだった、という理由が見えてくるのは、地道な定性調査で見えてくるわけです。
行動の「理由」が見えてくると、初めて確度のある、根拠のある施策の展開案(次の一手)が出てきやすくなります。