2019.07.08
まずは“傾向”をつかもう「動画広告」の基礎知識 フォーマットや主要メディアの特徴を押さえよう
マーケティング目的の達成に向けて適切に活用できるよう動画広告に関する基礎知識を身につけましょう。デジタル広告の戦略設計や運用をはじめとして企業のコンテンツマーケティングを一気通貫で支援するサムライト(株)に話をうかがい、動画広告の種類や選び方をまとめました。
[1]動画広告の変遷や潮流をつかんでおく
主要プラットフォームに広告メニューが揃い出した
最初に、これまでの動画広告の潮流をざっと確認しておきましょう。動画広告は、2020年には3,000億円近くの規模になるとも予想される、年々右肩上がりの市場です(サイバーエージェントオンラインビデオ総研ならびにデジタルインファクト調べ)。2016年や2017年ごろからデジタル界隈で言われはじめた「動画元年」当時と今を比較して、もっとも大きく異なるのは、今はYouTubeのほかFacebook、Instagram、Twitter、LINEなど主要の各プラットフォームで動画広告に関するメニューが確立されてきている点です。いまや視聴環境、制作環境がともに整備されてきて、動画広告を通じて企業が施策を本格的に拡げることが一般的になっています。
動画=若年層が強いという印象を持つ人たちもいますが、実態は年齢層を問わず幅広く見られています。昨今、ユーザーとの接点に動画広告を念頭に置いたプランニングは、今後のデジタル戦略では必須です。テレビ以外の動画に触れる機会が根本的に増えて、「テレビは見ないが、ネット動画は見ている」といったことも、ごくごく日常化しつつあるからです。かつては動画広告への取り組み自体に先進性があって、広告主と制作側が一緒に新たな事例をつくろう、という時代だったのが、動画という手段が一般化し、フェーズがさらに進み、数字や結果が当然のようにシビアに求められています。
長らく、動画広告といえばYouTubeの動画再生前後か再生中に流れる「TrueView」動画広告が主流でしたが、現在では数多くの広告メニューが生まれ、普及しはじめています。また、縦型や360度、1つの枠に複数の動画を並べられるカルーセルといった新たな仕様の動画広告メニューも出てくるようになりました。
ここ数年だけでも、AbemaTVが開局したり、Instagramストーリーズによる広告メニューが提供されたり、動画共有アプリのTikTokが広告メニューを始めるなど、新たな局面を迎えています。
メリットとデメリットを踏まえて目的達成のための1手段と捉えよ
動画広告のメリットは何でしょうか? それは動画そのもののメリットとも通じるところがあります。1つは豊かな情報量です。時間軸(尺)を持ち、動きや音声を伴って訴求できるため、テキストや静止画よりも情報伝達力が格段に高く、感情が動くことによってシェアされたり記憶にも残りやすくなります。動きによってユーザーの目を引きやすいという強みも挙げられます。動画がどこまで視聴されているか、といったデータに基づいてPDCAを回すことも可能です。
もちろんデメリットもあります。テキストや静止画に比べると、制作費が上乗せされてきますし、運用コストも動画の方が高くなる傾向があります。目が引きやすいからこそ、ユーザーに過度な接触へとつながり、嫌悪感を持たれてしまう危険性も考慮する必要があります。
私たちのもとにも、「動画が流行っているので、動画広告をやっておきたい」といった“とりあえず”というご相談が定期的に寄せられます。動画広告への関心の高さを裏づける反応ですが、一方で動画広告だけでなく他の手段にも共通して言えるのは、決して万能策ではないということです。動画広告を狙いどおりに機能させたいのであれば、必ず目的を定めること。目的の達成のためには動画広告が最適な手段であるかどうかを、マーケティングの観点で判断する必要があります。
できることなら、オウンドメディアやアーンドメディアも含めた全体的な戦略設計を立てて、他のデジタル広告(バナー広告やリスティング広告など)とともに動画広告を最適に使い分け、成果を導くことが求められます。
[2]動画広告フォーマットの種類を把握しておこう
インストリーム広告は視聴者にダイレクトに訴求できる
動画広告を活用するには、種類別の理解をしておく必要があります。各種フォーマットの特徴を把握しておけば、目的に応じてフォーマットを的確に選択し、各フォーマットの強みを活かしたクリエイティブを企画しやすくなります。
動画広告のフォーマットは、次の2種類に大別できます。「インストリーム広告」と「アウトストリーム広告」です。まずインストリーム広告について説明すると、動画コンテンツの中に挿入される動画広告のことをインストリーム広告と呼びます。代表格がYouTubeの「TrueViewインストリーム広告」で、YouTubeユーザーにはお馴染みの存在です。
インストリーム広告は、ユーザーがもともと意思を持って視聴しようとしている動画の中に流れるという特徴から、視認性が高く、音声も基本的にオンの状態で再生されます。スキップ機能が付いている場合もありますが、一定の訴求力は担保されると言えるでしょう。スキップ機能がある場合は、スキップ可能になる5秒(YouTubeの場合)までに視聴者の興味をいかに引き、視聴を継続してもらえるかが勝負です。
またインストリーム広告は、挿入場所によって3種類に分けられます。動画の再生前に配信される「プレロール広告」、再生途中に挿入される「ミッドロール広告」、動画終了後に流れる「ポストロール広告」です。TrueViewインストリーム広告は、動画の前に(だけ)配信されると思う人が多いかもしれませんが、途中や最後にも配信されています。
インストリーム広告はTrueView広告以外にも、ここ数年でFacebookやTwitterといったSNSでも動画コンテンツの前や途中に配信されるインストリーム広告が少しずつ増えています。
1つ注意したい点があります。本来は動画コンテンツと動画広告に関連はありませんが、悪質な動画コンテンツに広告が配信された場合、ブランドイメージを損なう可能性があります。そのような事態を防ぐ方法もあるので、運用会社などに相談してみるとよいでしょう。
さまざまな場所で配信するアウトストリーム広告
もう1つのアウトストリーム広告は、インストリーム以外の動画広告という覚え方で問題ありません。かつて動画広告の配信場所は、YouTubeのような動画視聴を目的とする場しかありませんでした。その後、技術の進化に伴い、オンラインメディアのさまざまな広告枠が動画に対応するようになり、アウトストリーム広告が急激に増えました。つまり、動画視聴ユーザー以外へも動画広告によるアプローチが可能になったのです。
アウトストリーム広告も複数の種類があり、中でも最低限押さえておきたい3種類をご紹介します。SNSやニュースアプリなどのフィード上に配信される「インフィード広告」、従来の静止画バナー広告枠に動画を配信できる「インバナー広告」、記事コンテンツの途中に挿入される「インリード広告」の3つです。
インフィード広告は、ユーザーがスクロールしている最中の数秒で興味が引けるか、です。冒頭で、ミュート(無音)の状態でも伝わるコンテンツ(わかりやすい動き、字幕あり)が求められます。FacebookだけでなくInstagramやTwitter、LINEで展開されているので、クリエイティブを各SNSのカルチャーにあわせる工夫も必要です。
インバナー広告も基本的には無音で自動再生されます。最近はインタラクティブ機能を持つインバナー広告も登場しています。
インリード広告は、まだ一部のメディアでしか採用されておらず、目にする機会は少ないですが、例えば、車に関する記事の中に自動車メーカーの動画広告を配信する、といった形でターゲティングできる点がユニークです。