2019.07.09
「5G」環境での動画合戦を勝ち切るヒント 超・動画時代の波におぼれるな!!
2020年、商用サービスが本格的に開始する「5G(第5世代移動体通信システム)」。5G環境で動画はどう変わるのか? 動画マーケティングの視点から「5G時代の動画」を解説!
「5G」でできることって、どんなこと?
5Gの大前提は「超高速/多接続/低遅延」の実現。現在の移動通信システムより100倍速い「超高速」は、例えば2時間の映画を3秒でダウンロードが可能になるほどのスピード感。加えて「低遅延」によりタイムラグがほぼ解消。これによりリアルタイムでの通信や安全性が求められる自動運転や、遠隔地でロボット操作などが可能に。さらに多数の機器を同時に接続するなど、5Gは今後迎えるIoT時代の基盤となるものである。
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情報量が増えることでいい変化もある反面、「動画時代」の落とし穴も…
5G時代の大前提は、これまでとは情報量やスピードが大きく異なるということ。同時通信しながらできることが増え、可能性が全般的に広がります。その中で、コンテンツとしての動画はどうなるのか?というと、通信やダウンロードの制限、タイムラグがほぼなくなります。制約があった4G時代から、制約が極めて少ない5G時代になります。「制約が一切ない時代」のマーケティングコミュニケーションでは、ありとあらゆるモノが動画化するという考え方に移行する。これが、一番大きな変化だといえます。
一方で、動画配信側のリテラシーが、これまで以上に求められます。例えばスマートフォンに慣れている人は、文章を斜め読みして取捨選択しながら短時間で情報収集ができます。しかし動画は、情報量がリッチに伝わる反面、30秒、60秒と全部見終わらないと、動画を視聴するのに投資した時間が有益だったのか評価できない。そう考えると動画は、実はリスクがすごく高いコンテンツ。動画があふれることが予想される5G時代だからこそ、どこのコンテンツが自分にとって有益かが、配信側のブランドやプラットフォームの選択に大きな影響を与えます。「情報がリッチな動画が好まれるに違いない」と盲目的に動画を量産すると、思わぬ動画の罠にはまりかねません。テキストや画像の方がわかりやすい情報はどれか、動画で伝えるべきことはなにかを適切に振り分けながらコンテンツ制作ができるリテラシーを身につけることが急務です。
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0.1秒単位でスクロールされるスマートフォン。テレビCMや映像と同じつくり方はNO!
これまで動画・映像というのは、お茶の間のテレビから流れてくるものでした。基本的にみんな、視聴が目的でした。では、5G時代における動画はどこで消費されていくのか? それは完全にスマートフォン上になります。私はよく「親指 IS KING」といいますが、とにかくユーザーがスクロールする親指が、すべての情報の選択権を握る時代です。0.1秒単位で動いている指を止めさせ、5秒、10秒と見続けてもらう必要がある。だからこそ、「本当にそれ見るの?」「ユーザーって本当にそんなことをするの?」と、ユーザーのことを深く考えないと、なんでもかんでも動画にしたところで結局誰も見ないものになると思います。またSNSなどのプラットフォーム上であれば、0.1秒単位でスクロールされるスピード感の中で見られる動画を、今までのように膨大なコストと人員を投じ、“素晴らしい映像”をつくるのと同じ考え方ではままならない時代です。時間も費用も労力も最適化していかなければ、5G時代における大量の動画コンテンツの制作、需給のバランスを保つことは難しいでしょう。
また、近未来を描いた映画『マイノリティ・リポート』のように、統計的にかつ瞬時に人の行動を解析する未来が5Gをきっかけにやってくるのではないかと思います。過去に何に興味を持ち、どの店にどのくらいの頻度で行ったなどのデータを一瞬で解析して、目の前にリアルタイムで情報をアウトプットして広告効果を最大化する。まさにデジタルマーケティングの究極の未来です。
その未来の中には、相当な比率で動画が活用されてくると思います。そういったことも踏まえて、真っ先に変化が求められるのは動画制作業界です。
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FAQや取扱説明などは、動画化にぴったり! ユーザー視点で動画化の判断を
5Gが浸透するとユーザーはどう変化するのか? というと、あまり変わらないのではないかと思います。動画を見るための場所へわざわざアクセスする機会が増えるというよりも、ユーザーが可処分時間の多くを費やしているTwitterやInstagram、Facebookの中に流れてくるコンテンツの動画比重が増えるというイメージです。そういう意味では、動画はごく自然にユーザーの生活の中に入ってくるようになります。
その前提があるうえで、色々なところに動画化に関する有効な情報が隠れているとお伝えします。動画広告という関心・注目を得るための領域はもちろん、買った人が使い方を知りたいとか課題を解決したいとか、ユーザーのニーズに関わる様々場面に動画への有用な情報がたくさん眠っています。採用、商品認知、興味喚起、欲求喚起などさまざまある中でも、これから動画化が急速に進むだろうと予測する分野は取扱説明とFAQです。例えばユーザーがコールセンターに電話をして、「この商品の使い方がわからない」といったときには、オペレーターが対応してくれます。延々と10分間、口頭で説明されたけど、結局よくわからなかった…みたいな場面も、15秒の動画を見るとあっという間に「なるほど!」とわかる。また、IRは動画化とテキスト情報の共存が考えられる領域のひとつです。より多くの投資家に出資してもらうために、ブランドコンセプトをわかりやすく伝えるムービーがあると、投資意欲も事業理解も進むはずです。ササっと資料をみて投資判断をしてほしいのなら、テキストの資料を整理してわかりやすく伝えるべきです。「ユーザーだったら?」の視点で物事をみて、動画・テキスト・画像からどのフォーマットを使うか判断できる力が必要です。
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動画制作にかかるコストは“投資”。効果測定の罠に注意して
動画が大量につくられる5G時代。企業側が変化を強いられることのひとつに、効果測定に対する考え方があるといえます。
動画によって、コミュニケーションの密度を高めることで、単年度では効果検証が極めて難しい領域であっても中長期的には大きな効果を出せるようになると思います。それはHow to、FAQ、認知や意識変容効果の向上、あらゆる領域でいえることです。
例えば、ご長寿番組を長年支援している、1社スポンサーの企業CMがあるとします。突然番組のスポンサーを降りても、ずっと見てきた視聴者たちはその企業に対するイメージが瞬時になくなることはありません。しばらく見ていなくても、そのCMは頭に刷り込まれている。これを「ブランドの資産」といいます。
リスティング広告や検索連動型広告は効果測定が容易であるものの、イメージなどを蓄積する効果が見込めず、クリックした瞬間に制作費が消費されてしまういわゆるフローコスト。費用に対する効率性が重視されます。一方で、頭に刷り込まれるCMの制作費は投資だといえます。イメージがストックされていて、いざ何かを購入しようというときに、むくむくと思い出す。企業がCM制作をやめても効果が持続します。ではFAQ動画などは、どちらにあてはまるのか。製品ページなどに載せて「このブランドいいな」「いつか買うんだったらこれを」という気持ちにさせるという意味では、中長期的な効果を重視したい投資的なものです。「動画をつくったら、いくら売り上げが上がるのか?」と考えがちですが、動画制作は投資。単年度ではなく、複数年度で効果をはかるものだという意識も、5G時代の動画マーケティングにおいては大切になります。