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▲2六歩△8四歩▲7六歩の謎~羽生全局集2より~

2015.01.19 | 米澤孝至

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先日、10数年ぶりにバックギャモンした編集部の米澤です。

大人になってやってみるとまた違った楽しさが。
 
今日は「羽生善治全局集 ~名人獲得まで~」より、第52期名人戦第2局をご紹介します。
 
対局開始前後の話が面白いです。
まずは対局前の心境がこちら。
 
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 類型の多い戦型は指さないと宣言した以上、レパートリーがたくさんいる。第1局の▲5六歩もその一つだが、今度は後手番である。当然のことだが、後手番で自分から動くとすれば、かなり作戦は限定されてくる。
 第2局にはある作戦を考え、その戦型を中心にして研究していた。
 
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第1局は意表の5筋位取り中飛車を採用した羽生四冠。
第2局ではなんと2手目△3二金戦法を投入しようと考えていました。
当時はプロ間でもそれなりに指されていたようです。
 
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 参考図は今年1月、谷川王将の挑戦を受けて戦った第63期棋聖戦第4局の投了図だ。
 ▲5三銀と打たれた後手陣は見事につぶれている。ここまでの手数がわずかに49手! この情けない将棋の出だしが▲7六歩に△3二金だった。
(中略)
 この名人戦第2局の舞台は、その棋聖戦第4局と同じ、愛知県西浦温泉の銀波荘である。
 江戸の敵を長崎でというわけではないが、ここは2手目△3二金をもう一度試す絶好のチャンスだと思った。
 
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ところが実際に対局が始まると、準備万端整えてきたのに、米長名人の初手は▲2六歩。
仕方ないので△8四歩としたら、3手目は▲7六歩。
 
この▲7六歩に対する羽生四冠の述懐が面白いです。
 
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 ▲7六歩を見た瞬間の気持ちは「見破られたか」だった。作戦を一から立て直す余裕はなく、先手の指し手に追随するしかなくなった。
 
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初手の▲2六歩ではなく、3手目▲7六歩を見たときに「2手目△3二金作戦を見破られた」と感じる理由、分かりますか?
書籍では順に説明してあるのですぐ分かるのですが、いきなり言われるとびっくりしますよね。
振り飛車党の方は特にややこしく感じる駆け引きかもしれませんが、ぜひ考えてみてください。
 
 
羽生全局集の1冊目と比べ、2冊目となる本書は自戦記や解説が充実しており、こうした羽生先生の考えも随所に見られます。
お楽しみに。